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2015年3月25日 (水)

フェロニッケルスラグは有害なのか無害なのか?

 日向製錬所とサンアイが黒木睦子さんを訴えた裁判の大きな争点のひとつは、造成に用いられたフェロニッケルスラグ(原告はグリーンサンドという製品であると主張しているが成分的には同じものと考えられる)が産廃か否か、有害か否かということだ。

 これに関わって、被告の黒木さんは2012年7月30日に第一工区の沈殿池の水を採取して宮崎県環境科学協会に分析を依頼した。また、これまでの情報から黒木さんは県工業技術センターに依頼してグリーンサンド(製品の規格を満たしたグリーンサンドか、そうではないフェロニッケルスラグなのかは不明)の検査も独自に行っている。以下参照。

 【ケイ・ファイル】第2回口頭弁論で被告から出された「経過説明書」とその後について(市民メディアみやざきCMM)

 黒木さんの水質検査では有害と出た。そして、グリーンサンドの検査では有害物質は検出されていないと報じられている。  一方、日向市は2012年10月10日に同じ第一工区の沈殿池の水と土壌の検査を行っており、この検査では基準値を超える有害物質は検出されていない。

 日向市 土壌調査結果報告書(IWJ)

 これらの結果から、原告らは、「被告が提出した「計量証明書」の結果には、鉛、総水銀、カドミウム、砒素など、グリーンサンドに全く含まれていない成分が検出され、フッ素やホウ素などごく微量にしか含まれない成分が大量に検出されている。全く別の場所で採取されたものを宮崎県環境科学協会に持ち込んだ可能性が高い」と主張していると報じられている。以下参照。

 訴状閲覧3月3日 (市民メディアみやざきCMM)

 私は、黒木さんが第一工区の沈殿池とはまったく別の場所で水を採取したとはとても思えない。あれほどの有害物質が含まれた水を、一市民がいったいどこでどうやって手にいれるかも不思議だし、そんなことをする動機や理由が分からないからだ。

 黒木さんの行った水質検査からのみ有害物質が検出されたのはなぜなのか?

 私は、はじめはスラグを浸透した雨水が有害物質を溶出させ、それが沈殿池に流れ込んだためなのだろうと思った。そして、日向市が検査を行う前に誰かが沈殿池の水を入れ替えた可能性があるとも考えた。しかし、その後、よしおかさんから福岡県民新聞の記述について教えてもらい、その考えが間違いであったと気づいた。

 今回、その理由をよしおかさんがブログで詳しく説明している。

 とある裁判で原告と被告の分析結果が異なる理由について考えてみた(がんばらない、でもあきらめない)

 よしおかさんが書いているように、実際の計量証明書などを確認していないこともあり、これはあくまでも仮説である。しかし、十分に説得力のある仮説であると私は理解している。よしおかさんの仮説のポイントは以下になる。

1 黒木さんの水質検査では「排水」の検査方法が用いられた。このために泥(スラグ微粉末も含む)が混じった水を振り混ぜて均一にしたものを検査している。したがって、スラグの微粉末の影響で有害物質が検出された。この検査方法の場合は、一律排水基準が適用される(ただし、黒木さんがもらった検査結果には一律排水基準が記載されておらず、宮崎県環境科学協会はなぜか黒木さんに口頭で土壌環境基準を教えたので黒木さんはその数値をブログに記載した)。

2 日向市の検査は土壌環境調査であり、この場合は土壌環境基準が用いられる。この検査方法ではろ過した水を検査することになる。また土壌含有量調査溶出試験では、試料にほぼ中性(pH7)の水を加えて撹拌したあと泥と水に分け、水に溶けだした有害物質の量を分析する。このため残った泥は検査されない。黒木さんが独自に行ったグリーンサンドの検査も、恐らく土壌環境調査であろう。また、日向製錬所産廃問題ネットワークの行った検査も同じ方法ではないかと推測される。

 つまり、黒木さんの水質検査とそれ以外の検査では検査方法自体が違うのだ。そして、黒木さんの検査ではスラグの微粉末の入った水をろ過することなく検査したため、微粉末が影響して有害という結果になったと思われる。

 これが事実であるなら、スラグの微粉末は有害だと導き出せる。工事の期間中はスラグの微粉末が飛散したために咳の原因となったのだろう。

 また、フェロニッケルスラグの場合、pH7前後の中性の水で定められた検査方法を行う限りにおいては、有害物質は溶出されないものと判断される。

 ただし、土壌の溶出試験自体にも問題があると指摘されており、環境基準値を超える有害物質が検出されなかったからといって、問題がないとは言い切れない。つまり、酸性雨などでは有害物質が溶出する可能性はあるだろう。従って、将来的には酸性雨によって有害物質が溶けだして地下水が汚染される可能性は否定できない。これについてはよしおかさんも紹介している以下のサイトに詳しい。

 土壌汚染対策法のデタラメな分析方法(独立系メディアE-wave Tokyo)

 黒木さんは、日向市が水質検査をする前に沈殿池に行ったところ、水が透明になっていて底の土が見え、臭いもなくなっていたと、こちらの記事に書いている。このために水を入れ替えたと思ったそうだ。しかし、よしおかさんは沈殿池の水は入れ替えられていないだろうとの考えのようだ。これに関しては、私は何とも言えない。入れ替えたという可能性は完全には否定できないと思うが、立証は無理だろう。大雨によって沈殿池に大量の水が流入し、水に混じっていたスラグ粉じんが水流で撹拌されて排水口から出てしまい沈殿池の水がきれいになった、という可能性もあると思う。あるいは、単にスラグが池の底に沈殿して水が透明になっただけかもしれない。いずれにしても真相は分からない。

 よしおかさんの仮説はこれまでの検査結果についてとても明快に説明できるし、誰も捏造などしていないことになる。また、覆土されてスラグの微粉末が沈殿池に流入することがなくなってから水を採取して検査しても有害物質は検出されないことが理解できる。もっとも大量のスラグを酸性雨が透過して有害物質を溶出させ、それが沈殿池に流れ込むようなことがあれば、沈殿池の水から有害という検査結果が得られるかもしれない。しかしコンクリートで固めた沈殿池であればスラグを浸透した水が流れ込む可能性は低いように思う。

 この問題を追っている市民メディアみやざきCMMは黒木さんの提出した水質検査結果を閲覧しているようだから、是非、検査方法について確認してこの仮説について検証してほしいと思う。そういう検証こそ、市民メディアの役割だと私は思う。

 なお、以前書いた「黒木睦子さんの主張を裏付ける情報が出てきた」という記事は引用元の記事が削除されたことと、今回の記事と矛盾することから非公開とした。

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平成24年(2012年)8月10日付

公益財団法人宮崎県環境科学協会が計量証明書を発行

計量証明書の番号:No水質 2012-01529

試料名:宮崎県日向市大字富高字山下2003番地

カドミウム  0.0096 mg/l
総水銀    0.0073mg/l
セレン    0.030mg/l
鉛      2.1mg/l
六価クロム  0.02mg/l
ヒ素     0.52mg/l
フッ素    20mg/l
ホウ素    0.23mg/l
シアン    0.1mg/l未満

水素イオン濃度  6.9(27℃)

公益財団法人宮崎県環境科学協会の担当者k氏が、黒木さんに計量証明証の内容を説明した。

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