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2015年2月 6日 (金)

黒木睦子さんの裁判、2回目の口頭弁論で分かったこと

 去る2月4日に、(株)日向製錬所と(有)サンアイが黒木睦子さんを訴えた裁判の二回目の口頭弁論があった。この裁判は日向製錬所とサンアイが時期を少しずらして別々に提訴したものだが、訴えの内容がほぼ同じということで併合された。二つの企業ははじめから併合を目論んで提訴したとしか思えない。

 一回目の口頭弁論で裁判長は黒木さんに訴状に対する認否の書面と、事実経緯を説明した書面の提出を求めていた。

 さて、第二回目の口頭弁論について傍聴者による報告が公開されている。一つは、「鰯」さんによるもので、もう一つは「市民メディアみやざきCMM」の市民記者である大谷憲史さんによるものだ。他にもあるかもしれないが、ここではこの二人の報告をもとに私の意見を述べておきたい。

2月4日宮崎地洋裁判所延岡支部1号法廷メモ(鰯の独白)

【ケイ・ファイル】第2回口頭弁論レポート(市民メディアみやざきCMM)

 この口頭弁論で、裁判長はこの裁判では名誉毀損が争点であることで間違いないかどうかを確認している。裁判所はこの事件が「人格権の侵害」であり、「法人の無形の損害」であると理解しているとのこと。

 さらに、黒木さんに対し、平成24年7月30日に行った水質調査結果を証拠として裁判所に提出するように求めた。

 この二つのことから分かるのは、裁判所は名誉毀損の裁判であるが、争点の一つは水質検査にあると理解しているということだ。つまり、黒木さんの行った「有害」と出た水質検査結果は、埋められたグリーンサンドが産廃(ゴミ)か否かを判断する有力な証拠になると認識しているのである。

 この裁判は名誉毀損の形をとっているが、グリーンサンドが有害(産廃)か否かを証明することが求められているということだ。名誉毀損を利用した典型的なスラップと言ってもいいだろう。

 大谷氏は「次回は、被告が提出した「経過説明書」への反論を原告側に投げましたので、そのことがメインになります」と書いているが、これは違うだろう。経過説明は裁判所が事実確認のために提出を求めたものと思われる。裁判では、答弁書に対して原告が反論をすることになる。すなわち、黒木さんの提出した「訴状に対する認否」に対し、原告が具体的に主張をする。そして、黒木さんは、次の準備書面で原告の主張に反論することになる。この黒木さんの反論こそ、この裁判の中でもっとも重要なものになるだろう。

 ところで名誉毀損裁判は勝訴がとても困難な裁判のひとつだ。名誉毀損の場合、免責要件というのがある。すなわち、1事実の公共性、2目的の公益性、3真実性・真実相当性だ。これらが証明されれば、不法行為は成立しないものとされる。ただし、これらは訴えられた被告が証明しなければならない。今回の問題は産廃問題でありひいては公害問題であるから、1と2はたぶんクリアできるだろう。問題は3「真実性・真実相当性」の証明である。

 つまり、黒木さんがブログやツイッターに書いたことが真実であるということを、黒木さん自身が証拠を提出して証明しなければならないのだ。たとえば、誰それがこう言った、ということをブログに書いたとする。それが真実であり「私は嘘を書いていません」と書面や口頭弁論で主張しても、裁判所は真実であることを証明したとは認めない。紙やメールに書いたことであればそれが証拠になるし、録音していればそれも証拠になる。しかし、そのような証拠がない場合は、真実であることを証明するのが極めて困難だ。今回の裁判でも、重要な取引関係の書面などは原告側が持っていて、黒木さんは持っていない。ここに名誉毀損裁判の難しさがある。

 しかし、今回の事件では黒木さんの水質検査の結果があるし、埋められたグリーンサンドが産廃であると証明できそうな証拠も皆無ではない。したがって「真実相当性」を証明するために全力を尽くすしかないだろう。

 ところで、大谷氏は、口頭弁論前に裁判所に出向き、黒木さんの提出した答弁書の閲覧をしている。閲覧は誰でもできるのでこの行為自体は問題ないが、この書面の内容について口頭弁論前にツイッターで呟き、ブロマガにも投稿している。

【ケイ・ファイル】答弁書の閲覧 

 裁判の書面は口頭弁論の場で「陳述した」と認められる。口頭弁論の前に書面の内容に関わることを公にしてしまうのは、軽率であり非常識と言うほかない。

 もう一つ、水質検査結果のことについても言及しておきたい。大谷氏も含め、黒木さんや支援者を批判する人たちは、黒木さんの行った水質検査の原本に異様なほどの拘りをもち、「原本が証拠として提出されていない」と批判している。

 原本というのは、検査会社から黒木さんが受け取った検査技師の朱印が押された報告である。重要な原本を裁判の証拠として提出してしまったら、手元に戻らなくなる。したがって、裁判ではコピーを提出すればいい。もし原告が原本が見たいということであれば、口頭弁論の日に持参して確認してもらえばいいのだ。裁判では契約書のような重要な証拠を提出することがあるが、もちろん原本そのものを証拠として出すようなことは普通はしない。もっとも彼らの言う「原本」とは、朱印のある原本というより単に検査会社の出した報告のことを指すらしい。であるなら、言葉の使い方を間違えている。

 この「原本」騒動で思い出したことがある。私が関わっている「えりもの森裁判」では、越境伐採の疑惑が持たれている。原告らは、被告である北海道が、定められた境界(林班界という)を超えて樹木の伐採をしたと指摘した。すると、被告は「境界を変更した」という主張をしたのだ。しかし、林班は森林簿の作成の基になるものであり、簡単に変更することは考えられない。そこで、口頭弁論のときに境界の書かれた林班図の原本を見せるように求めた。出てきた原本は、なんと白い修正液で林班界が書きなおされていたのである。越境伐採を隠すために故意に修正したとしか思えない。裁判ではこんな偽造と言えるようなことも平気で行われる。

 また、訴状に対する認否を行う答弁書では、具体的な反論をする必要はなく、証拠が提出される場合もあるが、準備書面で反論する際に証拠を提出するということでも構わない。証拠が出されていないと騒ぐ大谷氏たちの主張は異常としか思えない。

 また、大谷氏や黒木さん批判者による三浦万尚さん、東海アマさん(実名を晒している)へのネガキャンも尋常ではない。とりわけ日向製錬所産廃問題ネットワークの寄付に関して詐欺疑惑を指摘しているが、ネットワークが寄付金を詐取したという根拠は何も示しておらず憶測にすぎない。

 他者の批判をするのは自由だが、不確実な情報を元に、事実ではないことを事実であるかのように報じたら名誉毀損にあたるのではなかろうか。匿名であっても、訴えられる可能性がある。

「モノ言えない社会は息苦しい」名誉毀損で訴えられたネトウヨ大学生の告白(CMM NEWS)

 私はネットワークのメンバーではないし、組織の実態は分からない。しかし、彼らのネットワークに対するネガキャンや妨害は、私の目には常軌を逸しているとしか映らない。

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