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2014年2月

2014年2月22日 (土)

不安と向き合う

 先日、「何が起きても平常心でいられる技術」(ジョ ナサン・アルパート、アリサ・ボーマン著、アチーブメント出版)という本を読んだ。著者のジョナサン・アルパートは米国の心理療法士でコラムニストだが、 彼のカウンセリングの効果は高く評価され、クライアントのほとんどが数ヶ月もしないうちに彼のもとを卒業していくという。その彼が不安のコントロール術を 解き明かしたのが本書で、帯には「たった4週間で『イライラ』『ハラハラ』『ドキドキ』と無縁になる!」と謳われている。

 つまりは、不安への対処の技術を説明した本だ。考えてみれば、私たちの生活は不安に満ちている。とりわけ多くの情報が嫌でも入ってくる現代社会におい て、私たちは常に不安にさらされている。鬱病や自殺者が多いことからも、それは容易に分かる。しかし、不安に対して適切な対処ができる人とできない人はど こが違うのだろうか? 本書はその点を分かりやすく解き明かしている。

 著者は、不安に対する従来の対処法(つまりは不安への不適切な対処)として、以下の13項目を挙げている。

1トラブルを周りのせいにする。
2セラピーに頼る。
3魔法の薬を欲しがる。
4ひたすら祈る。
5不安を避ける。
6問題点ばかりに着目する。
7最悪の事態を予測する。
8すべての主導権を握ろうとする。
9過去の失敗に固執する。
10変化を恐れる。
11考えすぎる。
12“いい人”であろうとする。
13一般常識に囚われすぎる。

 「トラブルを周りのせいにする」という人は、確かに時折見受けられる。悪いことを何でも他人のせいにして不平不満ばかりを言っていても、何も解決はしな い。「セラピーに頼る」というのも同様で、セラピスト(カウンセラー)に愚痴をこぼしたり依存しても、問題を解決してくれるわけではない。愚痴を聞いても らえれば確かに少しは気持ちが楽になるが、それは一時的なものにすぎない。自分が問題(不安)に向き合って解決しようとしなければ、根本的な解決策にはな らないのだ。カウンセラーはあくまでもクライアントが変わるように働きかける存在であり、不安を取り去ってくれる魔法の薬ではない。

 言うまでもなく、ただ事態が改善することを待っていたり、祈るだけでは何の解決にもならない。カルト宗教などにはまってしまう人は、不安への対処がうま くできないタイプなのかもしれない。また不安を避けて先延ばししてしまえばしまうほど、さらなる不安に陥って悪循環になってしまう。

 「最悪の事態を予測する」というのは、ポジティブな思考ができず何でもネガティブに捉えてしまうからだ。自分のネガティブな考え方が本当に正しいのか見直し、物事をポジティブに捉えるようにすることで解決ができる。

 「すべての主導権を握ろうとする」というのは、ちょっとピンとこない人がいるかもしれない。しかし、不安には自分でコントロールできるものとできないも のがある。自分でコントロールできる範疇で対処しなければならないということだ。自分でコントロールできないことがあると被害妄想に陥ってしまうが、不安 にうまく対処できる人というのはコントロールできることは何かを見極めているという。そういえば、何をするにも自分で主導権を握らないと気が済まない人が いる。このような人は他人のやり方(つまり自分にとっては未知なやり方)に不安なのだろう。しかし、他人のやり方にいちいち口を出していたのでは、対人関 係がうまくいかないし、他人をコントロールして自分の言いなりにすること自体が誤りだ。

 日本人に多いのは「いい人であろうとする」ではなかろうか。協調性を重視し、周りと違うだけで批判されたり悪口を言われたりいじめられるような社会にお いては、とかく「いい人」を演じてしまいがちだ。これも不安を回避するための行動なのだが、本心からの行動でなければ結局は無理が生じてしまう。

 「一般常識に囚われすぎる」というのは、いわゆる「思い込み」のことを指している。○○歳までに結婚しなければならないとか、有名大学に入らなければな らないとか、定職に就かなければならない、周りに合わせなければならない・・・などなど。皆と同じようにしなければならないと思い込むのは「社会的洗脳」 だと著者は言う。

 著者が指摘していることの多くは、認知行動療法などの精神療法で偏った考え方を変えることと共通している。とりわけ新しいことを言っているわけではない のだが、本書の特徴はまず自分の目標を明確にし、5つのステップに分けたエクササイズで不安の対処法を身につけていくという手法だろう。とかく不安に振り 回されてストレスをためてしまう人というのは、自分自身のしっかりとした目標がなく、自分に自信がないと言えそうだ。自分はどういう人生を送りたいのかと いうことを明確にしたうえで、不安を避けるのではなく向き合うことで克服するということに尽きる。ここに提示されたエクササイズをきちんとクリアできれ ば、効果は期待できそうだ。日本では認知行動療法は医療行為ではなく保険も適用されないので高額な費用がかかるが、自分でできるならそれに越したことはな い。

 本書で印象に残ったのは、「興奮と不安は同じ感覚である」という指摘。両者の違いは、興奮では身体も心も準備万端で、やる気を起こさせる良いものである のに対し、不安は怖くて手に負えないという思いを抱かせる嫌なもの、という点。だから、不安で嫌でたまらないことでも、視点を変えてワクワクするものだと 思うように気持ちを転換すると落ち着いてくるそうだ。

 世の中には怖いもの知らず、不安知らずではないかと感じてしまう人もいるが、このような人は好奇心旺盛で失敗を恐れないのだろう。うまくいかないことを すぐに他人のせいにしたり、不平不満ばかり言っている人、他人から批判されるのが怖くて「いい人」を演じてしまうような人は一読してみるといいだろう。

 蛇足だが、放射能に関しても同じで、不安だからといって情報を遮断し「見ざる、言わざる、聞かざる」になったり、放射能は危険ではないという人の話だけ を信じるのは適切な対処法ではない。不平不満を言っていても、あるいは健康被害を並べ立てて不安を煽っても問題解決にはならない。さらなる被ばくを避ける ために行動を起こす(避難や保養をする、なるべく被ばくを避ける生活をする、加害者に補償を要求する、健康管理をしっかりするなど)しかないのではなかろ うか。

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