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2013年12月 4日 (水)

騙されてはならない日本版NSCと秘密保護法の目的

 つい先日、家にあった安斎育郎氏の「だます心 だまされる心」という冊子(NHK人間講座テキスト 204年12~1月期)が目に止まってざっと読んだ(たしか以前にも読んでいたのだが・・・)。この冊子では、手品を趣味とする安斎育郎氏(専門は放射線防護学)が、トリック、世論を誘導する情報操作、詐欺商法などさまざまな「だまし」のテクニックやだまされる心理などを解き明かし、だまされないためのポイントについて提示している。安斉氏の提示は以下の3点にまとめられる。

①権威に跪いて判断の主体性を放棄するような生き方は危険。
②「客観的命題」に対しては「好き嫌い」で判断するのではなく、徹底的に合理的思考を貫く努力が大切である。
③そのために「健全な懐疑論者」であることが重要。

 ①の「主体性を放棄する」とは、カルト宗教の教祖の価値観に従ってしまうとか、弁護士といった職業で人を信じてしまうようなことだ。戦争の時代には、国家が特定の価値観を国民に押し付けようとする。②の「客観的命題」とは、その命題が正しいか正しくないかを事実や論理に照らして客観的に判断できる命題のことを指す。たとえば「3+5=8」とか、「『源氏物語』は紫式部が書いた」という歴史的事実など。客観的命題に対し、その命題が正しいか正しくないかがそれを主張する人の価値観に依存するような命題は「主観的命題」である。

 さて、私はこの冊子を読み終えて頭に浮かんだことがある。それは、先日の小泉元首相の「原発ゼロ」発言だ。原発ゼロ発言そのものは、ごくまっとうな主張だ。しかし、小泉氏はもちろん原発を推進してきた張本人である。彼の原発ゼロ発言は果たしてどこまで本気なのだろうか? そして、なぜ今になって記者会見まで開いたのか? 私の頭の中では、このことがずっと引っかかっていた。

 ところで、11月21日付の「新婦人しんぶん」に掲載された小森陽一さんの連載記事「憲法なんでもゼミナール」に以下のように書かれている。

「郵政民営化」劇場選挙で有権者を騙し、衆院で与党が三分の二以上となり、明文改憲が可能と判断した小泉惇一郎の自民党は、自衛隊を「自衛軍」にするという「自民党新憲法草案」を発表したのが、2005年10月下旬。同じ日から始まった「日米安全保障協議委員会」(2プラス2)で、米軍と自衛隊を一体化して、世界規模での軍事協力体制を推進する中間報告を出しました。
 ここで「国家戦略レベルの情報協力」と共有された秘密情報を保護する追加措置」が明記されました。

 つい先日、参院で「国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案が可決され、今は衆院を通過した特定秘密保護法が大問題になっているが、これら2つの法案は、小泉氏率いる2005年からの自民党の構想であり、米軍と自衛隊を一体化させて海外で武力行使することが目的だ。米国べったりの小泉氏こそ、多くの国民が大反発している世紀の悪法の礎を築き、それを安倍政権が引きついでいるのである。

 週刊金曜日の11月29日号(970号)には、「日本版NSCとは『戦争指導最高会議だ』」というタイトルで、佐藤優氏と福島みずほ氏の対談が掲載されている。ここで、佐藤氏は「特定秘密保護法案に世間の関心が集中していて、日本版NSCはあまり議論されていない。でも、私はNSCが本丸で特定秘密保護法は付属品だと思うんです」と述べている。先に挙げた小森さんの記事からも、そういう理解が正しいのだろう。

 秘密保護法は原発の情報を隠すことが目的だと言う人がいるが、本来の目的は明らかに日本版NSCと一体となって戦争をする国にすることだ。しかし、2011年に福島の原発事故が起きてしまった。何としても原発から手を引きたくない自民党にとって、この事故は大きな足かせとなってしまった。東電も国もこの事故は想定外の津波が電源喪失を招いたことが原因だと主張しているが、国民はそれでは納得していない。地震そのもので壊れたのではないかという原発設計者などの指摘を抹殺するのは困難だ。だからテロを理由に原発に関することを特定秘密としてしまえば、政府にとって実に都合がいい。国民の反対が根強いTPPも然りである。特定秘密保護法は戦争をするにも都合がいいし、原発やTPPの不都合な真実を隠すのにも都合がいい。

 小泉元首相が原発ゼロを本気で主張するのなら、やらねばならないことは原発事故の原因究明であり、再稼働阻止に向けた発言や行動だ。しかし特定秘密保護法で原発のことを秘密にしてしまえば、原発ゼロへの道はきわめて厳しくなる。ならば小泉氏は特定秘密保護法に異を唱えなければ筋が通らない。しかし彼にはそうした姿勢は見あたらない。

 原発に関する情報はテロを理由に特定秘密になると言われている。しかし、他国から恨まれるようなことをしたり、国民を弾圧したりするからテロが発生するのだ。戦争で他国を敵に回したり、特定秘密保護法で市民を縛ること自体がテロを生みだすのであり、テロを防ぎたいのなら戦争の放棄を貫き民主主義を守るべきだろう。しかも、原発の情報はすでにある程度は知れ渡ってしまっているし、今でも原発情報の一部は隠されている。

<特定秘密?>東京電力公開のキャスク写真にモザイクあり? (みんな楽しくHappyがいい)

 またなぜ原発が問題なのかといえば、放射性物質は人の健康や命を奪い環境を汚染するからだ。しかし、戦争とて人命を奪い、環境を汚染するのだ。戦争には反対を唱えず、原発は反対というのは筋が通らない。

 小泉氏が原発ゼロ発言で国民の注目を浴びれば、秘密保護法から国民の目を逸らすことにも繋がるだろう。しかも小泉氏が原発ゼロを唱えたところで、自民党の原発推進姿勢がそう簡単に変わるとはとても思えない。小泉氏の発言は軽々しく聞こえるし整合性がない。

 週刊金曜日の佐藤氏と福島氏の対談記事で、福島氏は安倍総理の頭の中にある今後の予定に言及し「まず今年中に日本版NSCと秘密保護法をワンパッケージで成立される。そして来年は安保法制懇で集団的自衛金の行使を抜本的に認める。その後の通常国会には国家安全保障基本法を政治提案立法で出して、交戦権の行使も集団的自衛権の行使も武力行使も認める・・・」と推測している。

 小森さんも「そして12月に『国家安全保障戦略』を閣議決定し、それと連動して、有識者会議から『集団的自衛権行使容認の報告書』を受け取り、これを『お墨付き』にして、NSCで海外での自衛隊の武力行使を容認してしまう、というねらいです」と書いている。安倍首相のスケジュールはほぼ決まっているのだろう。

 日本の憲法に照らし合わせれば、軍隊も持てないし集団的自衛権も行使できない。しかし、この二つの悪法を成立させることによって、憲法を変えなくても戦争をする国にしようとしているのだ。これはどう考えても詐欺に近いやり方ではないか。しかも、平和憲法を骨抜きにしてしまう重要な法案を、自民党は選挙の争点として出さなかった。これは隠蔽という騙しでもある。

 佐藤氏は「ワイマール憲法と矛盾する一般法をいくつも立て、相対としてナチス憲法とみなしたナチスの手口に学んでいるんじゃないでしょうか」と言い、小森氏も「海外で自衛隊に武器を使用させ、その結果死者が出れば、戦争ナショナリズムの高揚を一気にかきたてることができ、ナチスと同じ権力掌握が出来るわけです」と書いている。

 二人とも、ドイツ国民を巧みに騙したナチスを持ち出して、まさに国民が騙されようとしているのではないかと警告を発している。今こそ、政府の仕掛けた大きな騙しに国民が巻き込まれていると認識すべきではなかろうか。

 安斎育郎さんの騙されないための指摘を、私たち日本人はしっかりと自覚しなければならないのだと思う。主体性を持たずに声の大きな者に従ってはいないか? 安倍首相や小泉氏の発言に矛盾や隠蔽はないか? 二つの法案について合理的思考で考えているか? 健全な懐疑論者になっているか?

 「だます心 だまされる心」での安斎さんの主張は的確だと思う。ただし、安斎さんが言っていることが何でも正しいとは限らない。私は安斎さんについては以下の記事の最後に批判的なことを書いている。

尋常ならざる福島の甲状腺がん発症率をどう見るか

 前回の記事でもニセ科学批判をしている科学者のことを書いたが、少なくとも被ばくに関して彼らは似非科学を広めていると言えるだろう。菊池誠氏や野尻美保子氏の発言に何の疑問も持たず広めている人たちは「主体性」をなくしてはいないだろうか?

 権力者が騙しを働くときほど怖いものはない。一人ひとりが思い込みを排除し、感性、理解力、判断力を総動員して健全な懐疑論者にならなければ、簡単に騙しに取り込まれてしまうだろう。

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