木の幹に棲むムレサラグモ
8月下旬にムレサラグモ(Drapetisca socialis)を探しに行ったときには1頭も見つけられなかったのだが、9月11日にもう一度探しに行った。数十本のシラカンバなどの幹を見て回り、1頭だけ見つけることができた。
ムレサラグモの成体が現れるのは夏の終わりから秋にかけて。そして、生息している場所は木の幹である。特に、カンバ類やトドマツなど、樹皮がなめらかな樹種を好むようだ。モノトーンの斑紋は隠蔽色となっており、樹皮に紛れて目立たない。また斑紋は個体変異がある。
ムレサラグモの学名のsocialisは、「仲間の」「社会の」という意味である。このクモを観察していれば分かるが、しばしば1本の木の幹に何頭も見られることがある。和名のムレサラグモの「ムレ」は「群」のことだ。
クモは基本的に単独生活者だし、サラグモの仲間は大半が皿状の網を張る。ところがムレサラグモはしばしば群がっているし、皿状の網を張らない。かなり変わり者のサラグモだ。
幹にいるムレサラグモはどう見ても徘徊性(網を張るクモを造網性、張らないクモを徘徊性という)のクモにしか見えない。しかし、よくよく見るとクモのいる場所には細かく糸が張られていて網を持っていることが分かる。下の写真ではクモの左側に網が見えるのだが、分かるだろうか?
それにしても、この季節にたった1頭しか見つからないというのはどうしたことなのだろう? たまたま今年は個体数が少ないだけならいいのだが、ちょっと気になってしまう。
同じように幹を生活の場としているサラグモにキノボリキヌキリグモ(キハダキヌキリグモ)がある。キノボリキヌキリグモは長野県の高地の森林で数頭見たことがあるが、湿度の高い自然林の苔むした樹皮に生息していた。原生林の減少とともに数が減っているクモだろう。日本での記録は少なく、希少なクモだ。
キノボリキヌキリグモの写真は以下を参照いただきたい。
キノボリキヌキリグモ(キハダキヌキリグモ) (三重クモ談話会ホームページ)
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