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2013年5月31日 (金)

光市事件、実名本訴訟は言論封じ(SLAPP)訴訟

 光市母子殺害事件の死刑囚である福田孝行君の実名や顔写真を掲載した本、「福田君を殺して何になる」がプライバシー権や肖像権の侵害にあたるとして、著者の増田美智子さんと出版社(インシデンツ)の寺澤有さんが福田孝行君側から訴えられた訴訟の高裁判決が昨日あった。

光市事件の実名本訴訟、出版元が逆転勝訴 広島高裁(朝日新聞)

光母子殺害:実名本出版、元少年の承諾認定 広島高裁(毎日新聞)

 この裁判、ことのはじまりは福田君の弁護士が出版の直前になって本のゲラを見せるよう版元の寺澤さんに要求したことにある。寺澤さんが表現の自由を根拠にそれを拒否すると、弁護士側が少年法違反で法的手段をとると脅してきた。そして、本当に提訴したのだ。

 なぜ弁護団がゲラを見せるよう要求したのかは、「福田君を殺して何になる」を読めばピンとくる。この本の福田君に関する記述は、福田君に有利になることは書かれていても、不利になるようなことは書かれていない。ただし、弁護団についての批判が書かれている。というのも著者の増田美智子さんは広島まで何度も行って福田君に取材を重ね、福田君も増田さんの取材に終始協力していた。また増田さんは、弁護団にも取材を求めていた。しかし、弁護団は彼女の取材依頼にまともに応じようとしないばかりか彼女の福田君への取材すら妨害した。増田さんはそうした弁護団の対応についても本の中で詳しく記述している。

 つまり、福田君にとって有利になる本であるにも関わらず、弁護団にとっては不利になることが書かれた本だった。弁護団がゲラを見せてほしいと要求した理由は、批判が書かれているのではないかと察した弁護士が内容を事前にチェックしたかったからだと思われても仕方ない。しかし事前チェックを断られたたために、少年法違反やプライバシー侵害などを持ち出して提訴し、出版の差し止めを求めたのだ。

 しかし、増田さんは福田君に実名を出してよいかどうか尋ね承諾を得ており、1審では福田君が実名掲載に合意したことが認められている。本人が実名掲載に合意していたのにも関わらず少年法違反を持ち出したのは、福田君の意思ではなく弁護団によるこじつけとしか思えない。

 プライバシーや肖像権侵害が理由なので原告は福田君本人なのだが、ことの経緯からも裁判を主導したのは弁護団であることは明らかだ。福田君は弁護団に従わざるを得ない立場に置かれている。この裁判は福田君の裁判というより、福田君を利用した弁護団による裁判だと言っても過言ではないと思う。

 ニュース報道では判決部分ばかり報じて裁判の経緯に触れていないため全く分からないのだが、この裁判は弁護団による言論封じの恫喝訴訟(SLAPP)といえるものだ。

 弁護士は依頼人の利益のために弁護するのが仕事だが、いくら依頼人の利益になるからといって嘘の主張をしてはならないと思う。嘘をついてしまうとその嘘を正当化するためにさらに嘘をついたり矛盾した主張をしなければならなくなり論理が破綻してしまう。また、言論封じを目的とした恫喝訴訟はあるまじき行為であり、絶対にやってはならないことだ。

 まして法の専門家である弁護士が、福田君からの依頼というより自分たちの都合で嘘の主張をし、出版を止めることを目的にジャーナリストを提訴するなどというのは言語道断だ。安田好弘弁護士の業績は評価すべきものも多いが、このようなSLAPP訴訟を起こしたことについては落胆した。福田君の弁護団は今回の判決に対しコメントを出さなかったそうだが、もし上告するならせめてコメントくらい出すべきだろう。

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