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2013年5月15日 (水)

チェルノブイリと福島の汚染比較地図についての補足

 昨日「チェルノブイリより深刻な日本の放射能汚染」という記事を書き、チェルノブイリと福島の汚染地図のことに言及したが、引用元の「地球の子ども新聞」をよく見ると、日本語版と英語版の比較地図があり、日本の地図の色分けが若干異なっている。英語版の方が日本の区分けが細かくなっているので、それについて再度ここで補足しておきたい。

 以下が英語版の地図。小さくて見にくいという方は、ブラウザの拡大率を上げてみていただきたい。

地球の子ども新聞132号:英語版 

 この地図では福島、チェルノブイリ共に「年間1ミリシーベルト」となる地域は赤紫、赤、茶色に塗られている地域になる。福島の場合、赤紫の面積はチェルノブイリより小さいいようだが、茶色(年間1~5ミリシーベルト)の面積はチェルノブイリより広いことが分かる。もし、日本が大陸であったなら、風下に当たる東側に相当の汚染が広がっていただろうから、「年間1ミリシーベルト」の範囲は実質的にはチェルノブイリの何倍にもなるのではなかろうか。

 チェルノブイリでは「年間1ミリシーベルト」のところを避難の権利ゾーンとして移住を希望する人たちを補償した。ただし、矢ヶ崎克馬氏の説明によると、実際には内部被ばくも勘案して「年間0.5ミリシーベルト」で運用したそうだ。とすると、ピンクで塗られている地域も対象になる。また、アレクセイ・ヤコブロフ氏によると、年間0.5ミリシーベルト以上の地域住民に対して被ばくの指標である染色体の分析診断を行っているという。

 日本の地図ではピンク色が3つの濃淡で区分けされている。年間0.5~1ミリシーベルトの地域は一番濃いピンクになるが、福島第一原発から半径300キロメートルを超える地域にまで広がっている。北海道と青森を除く東日本はほぼ濃いピンクだ。もし「避難の権利」区域をチェルノブイリと同じ運用にしたなら、濃いピンクの地域で移住を希望する人たちの移住を補償しなければならない。

日本だけの地図→ 地球の子ども新聞133号(解説版付き) 

 首都圏の人口だけでも3000万人を超える。日本でチェルノブイリと同じ基準で移住を補償することは物理的にも経済的にも不可能だろう。「年間1ミリシーベルト以上」の地域に限ったとしても、人口密度はチェルノブイリよりずっと高いので、避難を希望する住民全員に十分な補償をするのはきわめて困難ではなかろうか。矢ヶ崎氏によると「日本では実効線量がチェルノブイリよりずっと低くなる計算法を用いている」とのことだが、そうでもして誤魔化さなければならないのがこの国の現実なのだと思う。

 もちろん、濃いピンクの地域の中でも汚染に濃淡があるだろうし、初期被曝の程度は人によって大きく違うだろう。放射能の感受性は個人差もあるし、すべての人に健康被害が出るとか移住が必要だとは思わない。しかし、特に子どもがいる家庭はこの汚染地図を頭に入れて注意すべきだろう。早川由紀夫氏は「勉強しないと死ぬぞ」と言っていたが、まさにそれが現実なのだと思う。

 チェルノブイリでは事故から5年経って「年間1ミリシーベルト以上で避難の権利を認める」という決定がなされたが、もっと早くこの決定がなされていれば健康被害は軽減されただろう。このような前例があるにも関わらず、日本で同じことが繰り返されようとしている。しかも日本の場合、これから病気が多発したとしても、逃げられる場所は限られている。もし再び福島と同じような事故が西日本や北海道で起きれば、日本は壊滅するだろう。

 日本の場合、原発事故で広範囲に放射能汚染されたら汚染地の住民全員が避難できる場所が国内にないし、経済的にも補償が不可能ということだ。自力で脱出しない限り汚染地に放置されるほかない。そんな狭い国で原発を54基も運転していたのだから震撼とする。廃炉にするしか未来はない。

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