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2013年5月30日 (木)

夫婦別姓を認めないのは不平等を認めること

 夫婦別姓を認めない民法の規定を改正しないのは憲法違反であるとして、男女5人が国に損害賠償を求めた裁判の判決が29日に東京地裁であり、原告の訴えが退けられた。

夫婦別姓国賠訴訟:原告敗訴 憲法違反認めず(毎日新聞)

夫婦別姓 政治の責任で道を開け(信濃毎日新聞社説)

 このような判決が出る可能性が高いことはなんとなく想像はついたが、それにしてもこの国の平等の意識は相当低いと言わざるを得ない。

 この裁判の争点は、民法750条の「夫婦は夫か妻の姓を名乗る」という規定が憲法に違反するかどうかということなのだが、裁判長は「夫婦の双方が結婚前の姓を名乗る権利が憲法上保障されているとはいえない」と判断した。

 また、判決では憲法の規定について「平等の原則を立法上の指針として示したもので、個々の国民に夫婦別姓を保障したものではない」と指摘したそうだ。

 なんとも不可解な判断ではなかろうか。憲法が「平等の原則を立法上の指針として示した」ものであれば、「夫婦は夫か妻の姓を名乗る」ことが平等かどうかを検討しなければならないだろう。

 「夫婦は夫か妻の姓を名乗る」ということは、どちらかが姓を変えなければならないことを意味する。多くの人は、子どもの頃から慣れ親しんでいる自分の姓を変えることに抵抗があるのではなかろうか? しかし、婚姻により仕方なくどちらかの姓を選択せざるを得ないのだ。それが嫌なら事実婚にするしかないが、それはそれでさまざまな弊害がある。そもそも、婚姻を理由にどちらかの姓にしなければならないという規定そのものが不平等を生んでいるとしか思えない。

 日本では、現実には大多数が男性の姓を選ばざるを得ない状況にある。なぜなら、今の社会そのものが男女平等ではないからだ。日本では、いまだに女性は「嫁」として夫の家に嫁ぐという意識が根強く、大半の男性は婚姻によって自分が姓を変えるとは考えていないだろう。たとえば結婚に際し、対等を重視してじゃんけんやクジで姓を決めるなどというカップルはほとんどいない。

 日本では、共働きであろうがあるまいが、家事や育児の労働は女性の負担が圧倒的に大きい。賃金も男性と女性では大きく異なるし、女性が出産・育児などで退職したら、正規雇用に戻るのは難しい。結局、男性が家計を支えることになる。ひと昔前に比べたら女性の社会進出は進んだが、それでもまだまだ男尊女卑の社会だ。このような背景が婚姻の際に夫の姓を選択させる一因にもなっているのではなかろうか。

 結婚前の姓で名が知られている人、たとえば作家や芸術家、研究者などにとって、姓を変えるというのは実に不都合だ。これは男性も女性も同じだ。婚姻によって姓を変えなければならないとなると、どうしても通称として旧姓を使い続けることになる。しかし、銀行口座の名義や運転免許証などでは通称は使えない。実に不便なことになる。ここにも不平等が生じる。

 もう一つ言っておかなければならないことがある。本来、結婚や離婚、再婚などというのは極めてプライベートなことであり、公にしなければならないことではない。ところが、これらのことで姓を変えねばならないとなると、プライバシーが守られないことになる。「夫婦は夫か妻の姓を名乗る」という規定では、姓を変える側のプライバシーが尊重されないことになる。平等ではないのだ。

 同窓会などに出席しても、女性の大半は名前で既婚か未婚かが分かってしまう。しかも、大半の女性がかつて呼びなれた姓とまったく違う姓になっているのだから、なんと不平等なことかと思ってしまう。

 夫婦がどちらかの姓を選ばなければならないという決まりには、実にさまざまな不平等や不都合がつきまとっているのだ。憲法で平等を規定している以上、姓の選択も平等でならなければならないと思うのだが、裁判ではそうならない。実に不思議な国だ。

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