川原茂雄教諭の原発本出版の許可願を道教委が不許可にしていた
1月31日の北海道新聞朝刊社会面に驚くべき記事が掲載されていた。道教委が高校教諭の原発本の出版の許可願に対して不許可の決定をしたという記事だ。
記事のタイトルは「『政治的争点 出版報酬ふさわしくない』教師の原発本 不許可 専門家『表現の自由抑圧』」というものだ。記事の概要は以下。
市民向けの「原発出前授業」を続けている道立札幌琴似工業高校の川原茂雄教諭が、出前授業の内容をまとめた本が昨年12月に出版された。地方公務員が営利活動をするためには任命権者の許可が必要なため、川原さんは昨年10月に道教委に許可願を提出したが、道教委は12月6日に不許可の通知をした。川原さんは全ての印税を福島県の子どもたちを支援する市民団体へ寄付する予定であることを事前に伝えていたが、不許可になったため出版社から印税を直接団体に送る手続きをとって出版した。
道教委の不許可の理由は「原発関連の本を出版し報酬を得ることは、営利活動について定めた道人事委員会規則で禁じる『職員の身分上ふさわしくない性質』に当たると判断した」、「原発問題は政治的争点で、出版は衆院選にも重なるデリケートな時期だったため」とのこと。
川原さんはご自身のブログで出版した本を紹介している。
私の「本」が出来上がりました! (脱原発先生かわはらしげおのブログ)
この問題は朝日新聞にも掲載されたようで、川原さんご自身が朝日新聞と北海道新聞の記事をブログに掲載して意見を述べている。
川原さんはブログで「この三年間、教員から本の出版等で出された申請は私の本以外は、すべて許可されているのです。やはり問題は印税収入ではなく、原発の本だからということなのでしょう。」と書いているように、不許可の理由は「原発に関する本」ということしか考えられない。
道教委は「原発問題は政治的争点で、出版は衆院選にも重なるデリケートな時期だったため」と説明しているが、原発に限らず、農業(TPP)や改憲、地球温暖化問題だって政治的争点になっている。ならば、公立学校の教員は農業に関する本も、憲法に関する本も、地球温暖化に関する本も書けないということになる。「政治的争点になっているか否か」などということが許可の判断基準になるなどというのはあまりに暴論だし、社会的に通用しないだろう。
結局、川原さんが脱原発の立場で「出前授業」を行っていることに目を付け、恣意的に不許可にしたということではなかろうか。半ば嫌がらせだ。教育委員会が検閲とも言えるような判断を行うとは、この国の表現の自由もかなり危ういと言わねばならない。
福島の原発事故が起こって以来、各地で行われている脱原発のデモや集会、抗議行動で不当な逮捕が相次いでいる。原発に反対する人々を力で封じ込めようというのがこの国の実態なのだが、そうした行為が教育委員会まで及んでいるということだ。体制側の人物が、あの手この手で思想・良心の自由、表現の自由を規制しようとしている。
教育機関こそ、世界最悪の原発事故を起こしたことの反省に立ち、原発の危険性について、放射能の影響について、使用済み核燃料の問題について子どもたちに事実に基づいた情報や知識を与えるべきだが、逆に封殺するようなことをやっている。今回の不許可はきわめて由々しきことだ。原子力ムラの影響力がじわじわと広がっているようだ。
おそらく、これからさまざまな形で脱原発に関わる言論の自由、表現の自由がますます規制され拘束されていくことになるだろう。だからこそ、このような問題について一人ひとりがはっきりと抗議の意思表示をしていかねばならないと思う。
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