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2013年1月25日 (金)

モラル・ハラスメントという陰湿ないじめ(3)

家庭内モラハラ
 職場でのモラハラは配置転換を求める、解決のために第三者を交えて話しあいを行う、法律に訴える、職を変えるということでの解決もありえるが、モラハラから抜け出せずにより深刻な事態になるのは家庭内のモラハラではないかと思う。多くの場合、夫による妻へのモラハラだ(もちろん逆の場合もあるが、圧倒的に夫から妻へのモラハラが多い)。以下は香山氏によるモラハラ夫の特徴。

・結婚前にはとくに問題は感じられなかった。
・結婚したとたん、家の中すべてのことの主導権を当然のように握り始めた。
・自分がどうしたいかをはっきり言わず、すべては妻が察しなければならない。
・妻からの働きかけはほとんど無視。
・自分の意に反したことを妻が行ったりやったりすると激しく怒り、人格を傷つける発言をしたり、いやがらせをしたりする。ときには暴力にまで発展することがある。
・妻を食事や子育ての道具あるいは自分の所有物のように扱い、その気持ちや考えはいっさい考慮していない。
・他人の苦しみや痛みには鈍感だが、こと自分自身のこととなると「たいへんだ」と大げさに強調する。
・妻の行動に無関心のようでいて、自由にはさせない。
・家庭の外では「よい人」「立派な人」で通っている。
・自分の非が明らかな場合もいっさい認めようとしない。
・外に対してやたらと見栄を張り、人と比べる気持ちも強い。
・経済的な状況と関係なく、金銭にこだわる。

 これらの全てに該当しなくても、部分的に該当するような男性が身の回りにいる人も多いのではなかろうか。モラハラ夫は妻を自分の所有物のように扱い、自分に従うように仕向ける自己中のかたまりなのだが、妻はなかなか自分が被害者であることに気づかない。というのも、暴力を振るわないことが多いし、とりわけ専業主婦の場合は生活費を稼いでもらっているという負い目も感じてしまい、夫に従うのが良き妻だと思いがちだということがある。しかし、それだけではない。モラハラでは妻が夫にマインドコントロールされてしまうという側面がある。

 夫は妻に規則を与え、規則に従えば賞賛するが、従わなければ罰するということを繰り返していく。そして、この規則は次第にハードルが高くなっていく。このような「躾け」的方法でモラハラ夫は妻をマインドコントロールし、疑問も感じずに自分に従うように仕向けていくのだ。モラハラ夫は別に心理操作のプロではないのだが、こうしたコントロールの仕方は身につけている。妻は夫にマインドコントロールされてしまうと、夫が加害者であることすら気づかず、夫の機嫌が悪いのは自分に問題があるのではないかと自分を責めてしまうことも多い。しかし、いくら夫を怒らせないようにと気遣っても、夫の態度は変わらない。夫の理不尽な要求や拘束に苦痛が増大して身も心もボロボロに疲れ果て、夫に恐怖を感じるようになってうつ病にまで発展するのだ。

 モラハラ夫の方といえば、自分で妻を傷つけておきながらすべてを妻の責任にしてしまう。こうした変質性は自己愛によるとされ、精神医学では自己愛性人格障害と言われている。加害者である夫こそ変質者で病的なのだが、夫自身は自分の行動が正常としか思っておらず、したがって精神科を訪れて治療を受けることはない。治療の対象にもならなければ治療の効果も期待できないということになる。とりわけ強烈な自己愛のゆがみに基づいたモラハラの場合は、まず治ることはないという。つまり、その場合は加害者から離れるしか解決法はない。こうしたことがモラハラ被害を深刻なものにしている。

 ちなみに、以下の9つの診断基準のうち5つ以上にあてはまると自己愛性人格障害という診断になるそうだ。

①自己の重要性に関する誇大な感覚(〈例〉業績は才能を誇張する、十分な業績がないにもかかわらず優れていると認められることを期待する)。
②限りない成功、権力、才気、美しさ、あるいは理想的な愛の空想にとらわれている。
③自分が特別であり、独特であり、他の特別なまたは地位の高い人たちに(または施設で)しか理解されない、または関係があるべきだ、と信じている。
④過剰な賞賛を求める。
⑤特権意識つまり、特別有利な取り計らい、または自分の期待に自動的に従うことを理由なく期待する。
⑥対人関係で相手を不当に利用する、つまり、自分自身の目的を達成するために他人を利用する。
⑦共感の欠如―他人の気持ちおよび欲求を認識しようとしない、またはそれに気づこうとしない。
⑧しばしば他人に嫉妬する、または他人が自分に嫉妬していると思い込む。
⑨尊大で傲慢な行動 または態度。

 私もこれに当てはまる人物を知っているが、まさにモラハラ、パワハラ、セクハラなどの常習犯である。

 ただし、香山氏によると欧米のモラハラと日本のモラハラはやや質が異なるという。欧米のモラハラが「肥大しゆがんだ自己愛」が直接の原因になっているのに対し、日本のモラハラの中には「コミュニケーション下手」や「対人関係下手」があり、それが積み重なっていくうちに自己愛的な言動になってしまうという事例もあるというのだ。要するに他者への配慮ができないことで、自己愛的になってしまうという主張だ。このような二次性自己愛性人格障害による加害者の場合は、教育やコミュニケーションのトレーニングで改善することも十分あるのではないかとしている。

 なお、本書では家庭内モラハラ(加害者が夫の場合)のチェックリストとして以下の項目を掲げている。先に掲げたモラハラ夫や自己愛性人格障害の特徴と合わせ、夫がモラハラの要素を持っているかどうか、妻がモラハラ被害者であるかどうかを知る目安になるだろう。

・妻が話しかけたり質問したりしても、無視する。
・何もしていないのに舌打ちをしたりため息をついたりすることがある。
・妻が真剣に話しても、「さっぱりわからない」「くだらない」の一言で片づける。
・家庭内で立てた予定を忘れたり、勝手に変更したりする。
・たまに家族サービスをしたときは、過剰に感謝しないと不機嫌になる。
・妻の友人や親族、妻がしている仕事や趣味をけなす。 ・自分の友人や親族の前で、妻をバカにする。
・何かといえば「稼いでいるのはオレだ」「誰のおかげで食えているんだ」と言う。
・食事が気に入らないと食べずに席を立つ。
・妻に渡した生活費の使い道をやたらと細かく知ろうとする。
・ほかの人たちからは「いいご主人」と高い評価を得ている。

 夫によるモラハラ被害については、経験のない人にはまったく理解できないかもしれない。被害者自身がインターネットで体験を語るなどしている事例も複数あるので、そのようなサイトを読むのが分かりやすいだろう。実例を知ることで、いかに人権を無視した異常な強制、支配が行われているかが実感できると思う。女性に限らず、男性の方も、もし自分が配偶者から同じことをされたら・・・と想像して読んでいただきたい。

 以下、いくつかを紹介しておく。

モラルハラスメントの呪縛からの解放を目指して 
モラルハラスメント・ブログ 
モラルハラスメント被害者同盟 
モラルハラスメント

 
モラル・ハラスメントという陰湿ないじめ(1) 
モラル・ハラスメントという陰湿ないじめ(2)
モラル・ハラスメントという陰湿ないじめ(4)

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