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2013年1月24日 (木)

モラル・ハラスメントという陰湿ないじめ(2)

職場でのモラハラ

 香山氏はモラハラを生じる場所によって「職場でのモラハラ」と「家庭でのモラハラ」に大きく分けて説明している。

 職場でのハラスメントといえば上下関係を利用したパワハラがある。具体的には上司が部下に対し「ひとりではできそうにない作業を要求する」「ちょっとしたミスでも容赦ない叱責」「時間外労働の強制」「運動会の練習や宴会への参加の強制」などを行う。しかし、上下関係を利用しないモラル・ハラスメントもある。つまり、解雇や左遷、降格などをちらつかせないし、権力を利用して部下を操ろうとはしないが、言葉や態度によって継続的で心理的な嫌がらせを行うものだ。この場合は上司のみならず、部下や同僚も加害者となる。「言葉や態度による暴力」「上司・先輩が正しいと思う意見の押しつけ」「八つ当たり」「無視、冷遇」などはパワハラとモラハラに共通する。

 こうして並べてみると、程度の差こそあれ、どこの職場にもモラハラを行う人はいるのではなかろうか。私にも経験がある。自分の意見を強く主張して部下を従わせようとする上司。部下が自分の要求どおりに行動しなければ不機嫌になって叱責する。自分の実績を自慢しいつも傲慢な態度をとっているが、自分より立場が上の者に対しては途端にご機嫌取りをする。また、自分の利益のために人を利用することばかり考えている。おだてていれば機嫌がいいが、ちょっとでも批判的なことを言われたら徹底的に攻撃する・・・。仕事に意欲と希望をもって就職しても、結局、このような上司に嫌気がさして能力のある職員もどんどん辞めていくことになる。残った職員は、この上司の言いなりになる人ばかり。今から思えば、あれはモラハラだったのだ。

 こういう上司がいるかいないかで職場に対する好感度や精神的安定度はまったく違ってくる。モラハラ上司がいたら、常に上司を怒らせないように神経を使わなければならず、それだけで疲れてしまう。たまにこのような上司が出張や休暇でいないと、職場の雰囲気はたちまち明るく楽しくなる。

 香山氏は、責任感があって、勤務考課が公正で、仕事のできる上司がいて、愉快な仲間がいれば、どんな単純作業であっても仕事は楽しいが、逆に無責任で不公平で仕事のできない上司と、感じの悪い同僚に囲まれていれば、どんなにクリエイティヴな仕事をしていても楽しくないという内田樹氏の文章を本書で引用しているのだが、これは複数の仕事を経験した人は誰もが感じていることではなかろうか。

 「嫌がらせ」や「いじめ」がなく、皆が和気あいあいとしている職場であればストレスを感じることなく楽しく仕事ができるという指摘は、まさにその通りだろう。そこに自己愛型上司が一人いるだけで楽しい気分はふっとび、ストレスが襲いかかってくるのだ。人は強制や人格攻撃によって深く傷つけられるのである。

 香山氏は、パワハラではないモラハラをする自己愛型上司の特徴について、イルゴイエンヌ医師の以下の指摘を紹介している。

・自分自身は質的に他者より優れていると感じている。
・他者を貶めることで、この優越性を維持し補強する。
・自分自身は特別な存在と考えているので、他者の権利や欲求に関心ない。
・他者をうまく利用すること、周りがどれだけ自分に貢献してくれるのかだけを基準に考えている。
・部下にハイレベルな達成を要求するが、その達成に必要な支援などはほとんどしない。 ・自分の行為が問題であるとは認識しない。また、よしんば認識したとしても、その行為が他人に対してどんなに有害なインパクトを与えるのかについては、ほとんど関心を示さない。
・同僚や部下には威張り散らすのに、上司の前では急にこびへつらう。
・しかし、上司が去った後はけなす。自分の味方になってくれる上司だけを偶像化する。
・ほんの少数の部下だけを信頼し、忠誠心を持ち続けてもらうために彼らのニーズを満たし、その代わりに完全なる貢献を要求する。

 モラハラ上司にとっては部下を支配して自分に従わせることこそ大事であり、部下の立場や意見などはまったくといっていいほど考慮しない。しかし、このような上司に対して部下が意見を言って対立することは困難であり、結局、被害者は我慢を重ねてストレスをため込むことになる。こうした「いじめ」を継続して受けると、それだけで職場に行くのも嫌になり、人によってはうつ状態になる。

 うつ病になって休職したり退職する人は多いが、その原因は仕事の失敗や苛酷さ、あるいは責任感などからくるストレスだけではなく、上司や同僚による精神的いじめに起因している場合がそれなりにあるのではなかろうか。日本では、まだまだモラハラによる被害が認識されておらず理解されないことも多い。

 職場でのモラハラ被害を解決するためには、被害者がモラハラを受けていることを認識し、職場(組合や人事課など)に助力を求めたり、休職したり、法律に訴えるなどの行動をとるしかない。

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