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2012年11月 9日 (金)

内藤朝雄著「いじめ加害者を厳罰にせよ」の主張と問題(1)

内藤氏の主張

 内藤朝雄氏の「いじめ加害者を厳罰にせよ」(ベスト新書)が10月に発行された。本書は、大津市の中学生のいじめ自殺事件がマスコミで大きく取り上げたことをきっかけに、いじめ問題の第一人者ともいえる内藤氏が、いじめのメカニズムとその解決策を訴えたものだ。私自身は「いじめ加害者を厳罰にせよ」というタイトルに驚きを禁じ得ないが、このタイトルには一刻も早くいじめ被害者をなくしたいという内藤氏の思いが込められているのだろう。

 内容的には、内藤氏がこれまで主張してきたことを誰にでも分かるように解説した本といえる。しかし、内藤氏の主張を知らなかった人にとっては、「目からうろこ」といえるような主張かもしれない。なぜなら、内藤氏の主張はマスコミに登場する教育評論家や著名人などの持論とはかなりかけ離れたものであり、日本社会に浸透しているとは思えないからだ。それどころか、内藤氏はマスコミでばら撒かれる些末ないじめ対策はむしろ有害であると批判しているのである。

 私は内藤氏の論じるいじめのメカニズムは評価するのだが、刑事罰導入による解決策は賛同できないし、不十分あるいは不適切だと思う部分もある。そこで、この本を読んで気づいた感じたことについて、何回かに分けて書いてみたいと思う。

 内藤氏の主張について考えるために、まず本書での彼の主張の要旨を以下にまとめてみた。

【いじめに関する誤解】
・長期にわたっていじめの件数が増えていることを示す信頼できる統計はない。
・1979年、1986年にも残酷で陰湿ないじめ事件が報道されており、近年になって残酷化したとは言えない。
・いじめは子どもたちだけの問題ではなく、あらゆるところに存在する。
・イギリスやノルウェーでも残忍ないじめ事例がある。
・教育評論家や著名人などによる「いじめ論」は矛盾だらけである。

【いじめのメカニズム】
・市民社会では悪とされるいじめが、学校では「当たり前」「良いこと」になってしまう。これは「市民社会モード」と「学校モード」の違いからくる。
・学校という「強制収容所」でベタベタした集団生活を強要されることがいじめの温床となる。
・生徒の選択肢は、①仲良くしたくないクラスメイトやグループと友だちになることを拒否し、孤独で過ごす。②自分の自然な重いや感情は諦め、自分をいじめる加害者も含めがクラスメイトやグループと友だちになる。という二者択一しかない。
・「学校モード」では、みんなに同調せず「浮いている」(「ノリ」に従わない)者、いじめの「チクリ」をする者がもっとも嫌われいじめの対象とされる。
・いじめ加害者は「損か得か」という利害で行動する。 ・いじめには暴力系のいじめ(殴る、蹴る、衣服を脱がせる等)、とコミュニケーション操作系のいじめ(シカトする、悪口を言う、嘲笑する等)がある。
・長くつづくタイプのいじめは、加害者グループが被害者を囲い込み、表面上は友だちを装いながら家畜を飼育するかのように躾け玩具にする「友だち家畜」と言うべき「飼育タイプ」が主流である。

【いじめの隠蔽構造】
・学校や教育委員会がいじめを隠蔽するのは、利害関係でつながる「教育ムラ」のため。ムラの安泰のために隠蔽が行われる。
・保護者や地元民が被害者の親に嫌がらせをすることで教育ムラの隠蔽に加担することもある。
・有名人等の「心の問題」にフォーカスさせるコメントをマスコミが報じることが、状況を悪化させる。

【いじめ解決策】
・長中期的な教育制度の抜本的改革は短期間では実現できないので、まずは短期的な解決策を実施することが重要。
・短期的解決策は「学級制度の廃止」と「学校への法の導入(法に基づいた加害者の処罰)」である。 ・「学校制度の廃止」は「コミュニケーション操作系」のいじめに効果を発揮する。
・「暴力系のいじめ」に対しては、市民社会の法を学校内の暴力に持ち込み加害者を処罰することが有効である。

 これ以外に、少年法や厳罰に反対するいわゆる「人権派」に関しての意見、個人でのいじめへの対処法などにも触れられている。これについては後で言及したいが、ここでは割愛する。

 おそらく内藤氏の主張は、いじめの被害者にとって、非常にすんなりと受け入れられるものだろう。被害者は、加害者がなんら制裁を受けずに大きな顔をしてのさばり、被害者ばかりが苦しみに耐える状態に置かれていることに大きな矛盾や怒りを感じているからだ。

内藤朝雄著「いじめ加害者を厳罰にせよ」の主張と問題(2) 
内藤朝雄著「いじめ加害者を厳罰にせよ」の主張と問題(3) 
内藤朝雄著「いじめ加害者を厳罰にせよ」の主張と問題(4) 
内藤朝雄著「いじめ加害者を厳罰にせよ」の主張と問題(5)

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