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2012年10月23日 (火)

サホロスキー場の拡張反対を決議したナキウサギフォーラム

 このブログでもお知らせしたが、20日に「ナキウサギフォーラム 佐幌岳から考えるナキウサギの保護」が開催された。4人の発言者がそれぞれの視点から絶滅危惧やナキウサギの保護などについて話しをしたが、どれも興味深いものばかりだった。そこで、発表内容について簡単に紹介しておきたい。

絶滅危惧とは:岩佐光啓氏(帯広畜産大学教授)
 国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは絶滅危惧種が2万種を超えた。日本でも8月に発表された第4次改訂で哺乳類3種、鳥類1種、貝類1種、植物2種が新たに絶滅とされ、絶滅危惧種(絶滅危惧Ⅰ類とⅡ類)も前回の3155種から3574種へと増えた。

 トキの場合、乱獲・開発・餌の減少のほか鉱山の開発による金属汚染や農薬が絶滅の要因となっている。トキに寄生するトキウモウダニもトキの絶滅とともに絶滅。寄主の絶滅により寄生動物も絶滅にさらされる。

 エゾナキウサギは今回の改訂で「絶滅のおそれのある地域個体群」から「準絶滅危惧」に格上げされた。北海道に生息するエゾナキウサギは大陸に生息するキタナキウサギの亜種とされているが、ミトコンドリアDNAの分析によりDNAが5%違うことが分かってきた。昆虫の場合は遺伝子が2.3%変わるのに100万年かかると言われており、5%も違うと別種である可能性もある。

 存続が脅かされやすい種は、生息範囲が狭い、生息密度が低い、特殊な環境に生息する、繁殖能力が低い、移動能力が低い、小さな島の固有種。

 経済、生産性、効率一辺倒の人間活動によって、絶滅が加速されてきた。具体的には、開発、伐採、娯楽、スポーツなどによる生息環境の破壊、農薬・金属汚染、乱獲、外来種・家畜、政治、気候変動(地球温暖化)。

エゾナキウサギの保護:市川利美氏(ナキウサギふぁんくらぶ代表)
 ナキウサギの特徴として、低い繁殖率(初夏に2~4匹の仔を産む)、低い生存率(成獣は定住性があるが、子ウサギは夏の終わりに親の縄張りから移動しなければならない)、移動の能力の低さ(移動能力は高くなく、子ウサギの移動時期は暑い夏で、天敵もいる)たある。

 カリフォルニアのボディでは金を掘った後に積み上げられた石の山にナキウサギが生息しており、78の石の山(パッチ)でナキウサギの調査が行われた。それによると、パッチが小さいほど絶滅しやすく、パッチとパッチの距離が大きいほど絶滅しやすいことが分かった。

 北海道では大規模林道(2010年に中止になった)などの大形公共事業によってナキウサギの生息が脅かされてきた。新得町ではナキウサギの生息地となっている林道で世界ラリー選手権が行われたほか、美蔓地区国営かんがい排水事業の工事などがあり、サホロスキー場の北斜面開発がある。

佐幌岳のエゾナキウサギ生息地:川辺百樹氏(前北海道自然史研究会会長)
 ナキウサギの生息地となっている岩塊地の成因は、自破砕溶岩(溶岩ドームや溶岩流)、崖錐(岩が崩壊して堆積)、地滑りがある。

 北海道にはナキウサギが生息可能と思われる岩塊地が点々とあるが、生息しているのは北見山地、大雪山系、日高山脈、夕張に限られる。阿寒にも生息可能と思われる岩塊地があるが、阿寒と大雪山系との間は50キロメートルあり、これだけの距離があると移動(分散)はできないと考えられる。

 低標高地の生息地の場合、谷の崖錐下部に岩塊が堆積しているところが多いが、このような生息地は道路建設によって破壊されやすい。準絶滅危惧ではなく、絶滅危惧にしてもよいのでは。

 佐幌岳は花崗岩の山だが、花崗岩は大きく壊れる性質がある。「ひがし大雪博物館友の会」の調査で1987年、1991年、1993年に小規模な生息地を発見した経緯がある。2012年にはスキー場開発予定地に過去に見つけたものより規模の大きい生息地があることを確認し、生息痕跡も見つけた。加森観光は、過去の佐幌岳の生息情報を知っていたが、アセス報告書には書かずに隠蔽した。また、現在の生息痕跡は、ナキウサギのものと特定できないとして生息を認めていない。

 大雪山系と日高山脈の間は約50キロメートルあるが、佐幌岳はその中間に位置する。佐幌岳の生息地が破壊されると、両者間の個体群の遺伝子交流がなくなる可能性がある。

佐幌岳のスキー場拡張問題:芳賀耕一氏(サホロリゾート開発問題協議会)
 1991年頃にサホロリゾートを3倍規模に拡張する計画があり、住民意見を募集していたので意見を出したのがサホロリゾート問題と関わることになったきっかけになった。その後、公聴会や情報公開によってこの問題を知らせてきた。現地に調査に入ったら、アセス書には書かれていないクマゲラを見つけたこともある。こうした活動によって新得町の人たちの意識も変わってきた。

 破綻したサホロリゾートを加森観光が受け継いだ際、当時の町長は北斜面には手をつけないことを条件に町が10年間にわたって年5000万円を加森観光に援助すると約束した。しかし、町長が変わったら北斜面は手をつけないという約束は受け継がれなかった。

 スキー客の激減で加森観光は経費削減をしており、地元の商工業者にもメリットがなくなっている。スキー場の施設も老朽化している。経費削減のために平日はリフトをなるべく止めているが、その口実として「なだれの危険性がある」などといっている。

 加森観光は毎年赤字を出していて、経営的に厳しい状況。ベアマウンテンもゴルフ場も落ち込んでいる。町は加森観光が撤退するのではないかと危惧している。スキー場は国有林を借りているために閉鎖することができない。現在使っていないリフトが2本あるが、危険なまま放置されている。

 あくまでも個人的な推測だが、スキー場に適した北斜面にコースをつくることで、海外資本への転売を考えているのではなかろうか。情報公開で入手した資料などをHPで公開している。

 *     *     *

 ナキウサギは絶滅しやすい生物であること、ナキウサギの生息地が壊され続けてきたこと、佐幌岳のナキウサギ生息地が重要な位置を占めていることがよく理解できる内容だった。

 芳賀さんの話しの中にあった、前町長が年5000万円の援助にあたり北斜面に手をつけないという条件をつけていたことは初めて知った。町長の約束はたとえ町長が交代しても受け継がれるべきであろう。現町長は、約束を反故にしてしまったのである。佐幌岳北斜面のスキー場開発の情報が掲載されている芳賀さんのHPは以下。

 http://sahoro.com/ 

 問題なのは、加森観光は佐幌岳にナキウサギ生息地があることを知っていたということ。そして、知事もスキー場開発にあたってナキウサギの生息地を保全するよう付帯意見を出していたにも関わらず、情報を隠蔽するなどして強引にナキウサギ生息地を破壊するスキー場拡張工事をしようとしていることだ。国有林部分はまだ手をつけていないようだが、すでに民有地での伐採が始まっている。

 この集会では、以下の決議が採択された。生物多様性保全が叫ばれる昨今、加森観光の蛮行は看過できない。

**********

佐幌岳北斜面のスキー場開発の中止を求める決議

 エゾナキウサギは北海道の北見山地、大雪山系、日高山脈および夕張山地の岩塊地にのみに生息する希少な動物です。高山帯に限らず、森林帯に点在する岩塊地にも生息していますが、とりわけ低山の生息地は道路建設や伐採などにより破壊されてきました。生息地の消失は、ナキウサギ個体群の分断、縮小そして絶滅につながります。このため今年8月28日に公表された国のレッドリストの第四次改訂で準絶滅危惧に選定されました。
 佐幌岳の山頂近くのナキウサギの生息地は大雪山系と日高山脈のナキウサギ生息地を結ぶ重要な位置を占めています。このために北海道知事も佐幌岳のスキー場開発にあたってはナキウサギの保護に留意するよう求め、開発を行った西洋環境開発は北斜面のスキー場造成を断念しました。しかし、西洋環境開発から経営を受け継いだ加森観光は、ナキウサギ生息地を壊してスキー場を拡幅する計画を強行しようとしています。
 生物多様性の保全が求められる中で、このような破壊行為は許されるものではありません。スキー場造成の中止を強く求めます。

2012年10月20日
ナキウサギフォーラム参加者一同

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