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2012年10月15日 (月)

除染利権と責任逃れに支配された国

 福島第一原子力発電所の事故が起きて間もなくしてから、汚染地では学校の校庭などの土を削って除染をするという話しが出て、正直いってひどく驚いた。まずやらねばならないのは避難ではないのか・・・。しかも、事故は収束しておらず、さらなる汚染も懸念されるのに・・・と。

 日本は森林に覆われた山国だ。飛行機から日本を見下ろせば、国土の多くが山地で、平野や盆地に農耕地や市街地が広がっている他は川沿いなどにへばりつくように人が住んでいるのが一目瞭然だ。広大な山の除染などできるわけがない。山林が汚染されてしまった以上、いくら除染をしてもたえず放射性物質が移動してくるだろう。高汚染地域は線量が下がるまで放置するしかないとしか思えなかった。

 たとえ除染で線量が多少下がるとしても、削り取った大量の汚染土をどうするのかということもある。除染で何とかしようなどというのは、あまりに非現実的に思えた。こうしたことはチェルノブイリで実証済みのことではないのか・・・。

 ところが、原発事故から1年半以上たった今も、福島県では除染で何とか線量を下げ、住民をもどそうという方針だ。どう考えても正気とは思えない。

  「週刊金曜日」10月12日号(915号)では「誰のための除染なのか」という特集を組んでいる。星徹さんの「除染よりも移住費用を」という記事では、現地の人の声を取り上げていた。いくつかを引用してみよう。

「除染してもムラに戻るのは年配者だけで、子どもと親は戻らないだろう。それでは村として成り立たない。私の周りでは『カネをかけて除染しても無駄だ』と皆が言っている。もっと他のことにカネを使ってほしい」

「除染をするカネがあるのなら、別の地域に家を建てる資金を援助してほしい」

「仕事ができるようにしてもらいたい」

「うちの裏山は毎時九・五マイクロシーベルトもあるので、家の敷地周辺を除染しても、再汚染されるのでは、と心配している。子どものことを考えたら、とても戻れない。もっと線量の低い地域の親子でも、ほとんどが『戻らない』と言っている」

 飯館村で実施したアンケートでは、除染の効果について肯定的な人が11%であるのに対し、否定的な人は44%。帰村については、避難解除されれば戻りたいが12%、解除されてもすぐには戻らないがいずれは帰るが45.5%、帰るつもりはないが33.1%。

 高濃度に汚染されてしまった地域では、住民の多くは除染の効果にも否定的だし、小さな子どもをもつ若い人たちは帰村すら考えていない人が多いというのが現実のようだ。

 ところがそうした住民の気持ちとは裏腹に、国や自治体は何とか除染によって住民を戻すことに必死だ。住民の気持ちと国や自治体の方針が乖離している。

 何と言っても日本人はチェルノブイリの経験を知っている。インターネットの発達した現代では、チェルノブイリ原発事故による被ばくや健康被害について調べようと思ったらいくらでも情報が出てくるし、原子力ムラの関係者や御用学者の信頼は地に堕ちている。意識の高い人は自主的に避難して帰る気すらないのだ。

 「年20ミリシーベルト」という避難指示解除の国の基準は無茶苦茶だ。放射線管理区域の下限であっても年5.2ミリシーベルト(毎時0.6マイクロシーベルト)なのだ。こういうところでは、飲食もしてはならないことになっているのに、平然と人を住まわせていて避難させようとしない。ベラルーシでも大丈夫だと言われて住み続けていたら、健康被害が続出して廃村になったところもあったはずだ。このままでは日本でも同じことが起きるのではないかと気が気ではない。

 なぜこうまでして除染にこだわるのかといえば、ひとつは除染利権であり、もう一つは補償逃れだ。がれきの広域拡散も利権が関わっているが、除染も同じだ。公共事業の名のもとに大形土木事業にゼネコンが群がるというのがこの国に連綿と続いてきた構図だが、これほど酷い事故を起こしても相変わらず利権構造は変わらない。原発事故すら自己の利益に利用しようという狡猾な人たちを見ていると、なんという国なのかと開いた口が塞がらない。

 住むところを奪われ、生活手段を奪われ、精神的苦痛を受け、さらに健康被害を受けている人がいる。自殺した人も何人もいる。農業も漁業も観光業も大変な被害を受けた。家族がバラバラになり崩壊した家庭もあるだろう。程度の差こそあるが、日本全国の人たちが被害を受けているのだ。東電にはそれを全て補償する責任がある。それが原発の過酷事故の実態だ。本来なら東電はさっさと倒産していて当たり前だろう。

 ちなみに、週刊金曜日編集部によると、除染事業費1兆5800億円を福島県内外に避難している約16万人の避難者に移住費用として一律に配分した場合、一人当たり980万円を支給してもおつりがくるという。この除染事業費には中間貯蔵施設や最終処分場の事業費は含まれていない。効果も期待できない除染にお金をかけるより、移住費用の補償を希望する人が多いのではなかろうか。

 福島県の県民健康管理調査の検討委員会では、内部被ばくを過小評価するよう口裏合わせをしていたことがバレてしまった。御用学者たちも健康被害が顕在化することを恐れているのだ。

口裏を合わせる福島健康調査の闇(院長の独り言)

 高濃度汚染地の除染は幻想でしかない。この国にはびこる利権地獄を壊さなければ、人々の命が壊される。

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