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2012年9月20日 (木)

尿のセシウム量は安全とは言えずWBC検査は内部被曝隠し

 福島県では子どもたちの尿に含まれる放射性セシウムの検査が行われているが、マスコミ報道では心配のないレベルというコメントしか出されない。また、ホールボディカウンターによる検査でもセシウムが検出される人は極めて少ないようだ。

 マスコミ報道では、福島の原発事故による被ばくはたいしたことがないように感じられてしまう。しかし、本当にそうなのだろうかと私は常々疑問に思っていた。なぜなら昨年の甲状腺の検査でも35%もの子どもに嚢胞やしこりが確認されたし、今年は甲状腺がんの子どもも確認されたのだ。しかも、今年4万2000人を対象に行われた健康調査の結果では、43%の子どもに嚢胞やしこりが確認されている(以下の記事参照)。このペースはチェルノブイリとほとんど変わらないと思える。

「原発差止判決」を書いた元裁判官、再び官邸前へ! (JANJAN Blog)

 私の疑問を解いてくれたのが、矢ヶ崎克馬さんの以下の解説である。矢ヶ崎さんは、子どもの尿検査に関する報道(福島県内の2000人の乳幼児のうち141人から放射性セシウムが検出され、その平均は2.2Bq/kg、最高は17.5Bq)、そしてホールボディカウンターによる検査結果(福島県内の60000人の子どものホールボディカウンターによる調査でセシウム検出は0.1%)の報道をとりあげて具体的に考察している。ちょっと長いのだが非常に重要なことが書かれているので、是非読んでいただきたい。

尿中のセシウム、具体的な事実から科学すれば「安全・安心」とはいえない:矢ヶ崎克馬氏の警告(Peace Philosophy Center)

 矢ヶ崎氏の解説の重要な部分を以下にまとめてみた。

【カリウムとの比較について】
・カリウムの放射線は被ばくのバックグラウンドとしていつでもあり、これにセシウムの被ばくが重なることになる。セシウムの被ばく線量をカリウムの被ばく線量と比較すること自体が誤り。
・カリウムは単一の原子で存在し、1つのカリウム40の原子はベータ線あるいはガンマ線1本だけを出して崩壊する。しかし、セシウム137は多数の原子が放射線微粒子を形成する。またセシウム137の95%は1つの原子からベータ線とガンマ線の2本の放射線を出す。このために、セシウム微粒子の周辺細胞は短時間内に繰り返して被ばくする確率が高くなる。
・体内のカリウムは全量が排出されうる状態だが、セシウムは体液(血液やリンパ液)中ものだけが排泄の対象であり、臓器に取り込まれたものは簡単に排出されない。
・セシウム以外にもヨウ素、ストロンチウム、プルトニウム、ウラニウムなどの放射性原子が放出されていて無視できない。

【尿中のセシウムから体内のセシウム量を計算】
・尿検査のベクレル数から、尿1キログラムに含まれるセシウムの原子数が計算できる。セシウムの場合、ベータ線を出してバリウムに変わり、さらにバリウムはガンマ線を出して安定バリウムに代わるため、1Bq/kgという測定は内実は2Bq/kgである。
・尿中のセシウム137が1Bq/kgとし、二つのケースで体液中のセシウムの総量を試算した。ケース1は排出される尿の量が1日1リットルで、放射性物質は尿以外にないと仮定。ケース2は、排出される尿の量が1日1.5リットルで、放射性物質は尿、糞、汗から排出され、全体の70%が尿から排泄されると仮定。全身での被ばく線量は、おとなの場合、ケース1で115Bq/kg、ケース2で242Bq/kg。子どもの場合、ケース1で57.6Bq/kg、ケース2で121Bq/kgとなった。これらにベータ線も考慮してkgあたりのベクレル数にするとケース1で4Bq/kg、ケース2で8Bq/kg(おとなも子どもも)となり、危険汚染度の領域になる。
・臓器に蓄積されたセシウムを考慮すると、1Bq/リットルでも危険領域となる。

【ヨウ素131の危険】
・放射線量比から、ヨウ素131はセシウム137の100倍放出されたことになる。これから尿中にセシウム137が1Bq/リットル入っていた場合のヨウ素の体内量を計算すると、おとなでケース1の場合16mSv、ケース2で35mSvとなり、子どもでケース1の場合42mSv、ケース2で88mSvとなる。これは内部被曝だけの値なので、外部被曝も考慮しなければならない。ICRPでも100mSvは危険であるとしており、かなり厳しい状況である。
・尿中セシウムが17.5Bq/リットルの子どもの推定甲状腺被ばく量はケース1で0.7Sv、ケース2で1.5Svとなり、看過できる被ばく量ではない。

【ホールボディカウンターについて】
・ホールボディカウンターの検出限界は250~300Bqで、尿検査の50~60倍も高く、内部被曝の実態調査としての機能を果たせていない。
・このような検査結果は「内部被曝はなかった」という被ばく隠しになる。
・被ばくを反映できない測定限界がある場合は、「非検出」という結果を信用してはならない。

 矢ヶ崎氏の見解が正しければ、福島の状況はとても安全、安心といえるようなものではなく、かなり厳しいと認識しなければならないだろう。

 もう一つ、安全・安心を唱える人たちがよく例に出すのは、過去の大気圏内核実験においても多量の放射性物質が放出され日本も汚染されたが、これによって大きな影響は出ていないという主張だ。これについても矢ヶ崎氏は「内部被曝」(岩波ブックレット)の中で、以下のように述べている。

 その後も、核実験では膨大な量の放射性物質が地球上に撒かれ、各地で健康被害を生みだしていました。そのためこれを隠すことも核戦略の重要なポイントでした。影響はもちろん日本にも及んでいます。東北大学の瀬木三雄医師が、日本の小児がん死亡率を統計化し、アメリカのスターングラス教授がグラフ化したものがあるのですが(次ページの図5)、それをみると広島・長崎の原爆投下の五年後に死亡率が三倍になり、さらにソ連の初めての核実験や、アメリカの水爆実験など、大きな核爆発があった五年後ごとに数値が上がって、一九六八年には、なんと戦前の七倍にまでなっています。この数値は、一九六三年に大気中核実験が禁止されてから五年ほど経って下降に転じています。(48ページ)

 核実験や原爆の五年後に小児がんが明らかに増えているというのは、どう考えても被ばくの影響だろう。チェルノブイリの事故でも同じことが起きている。ゆえに福島の事故でも健康被害が懸念されるのである。

 ところがこうしたことをマスコミは全くといっていいほど報じない。それどころか、未だに「安全・安心」を振りまいているのが現実だ。

【9月21日追記】
福島県の子どもの3回目の甲状腺検査については以下に詳しく説明されている。

3.11以後、最悪の健康被害の発表「女子小学生の54.1%、女子中学生の55.3%に『のう胞』か『結節』発見」 (ふくしま集団疎開裁判)

小児がんの死亡率のグラフは以下に掲載されている。

広島・長崎・原水爆実験で、小児がんが7倍:その3倍のセシウム137が21・2に降った(まちづくり連れ連れ騒士)

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