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2012年9月 1日 (土)

ナキウサギが準絶滅危惧種に

 先日、環境省のレッドリストの見直しが行われ、ニホンカワウソが絶滅危惧ⅠA類から絶滅へと変更されたことがニュースになった。そういえば、最近ではカワウソのことはすっかり話題にならなくなっていたが、最後の記録から30年以上も経過しているという。

 絶滅というのは進化の歴史の中でずっと繰り返されてきたことだ。とはいっても、近年は人為的な要因で絶滅種が急増している。いとも簡単に生物を絶滅に追い込んでしまうヒトという生物の責任は重い。

 ところで、今回の見直しに関してマスコミはニホンカワウソの絶滅のことばかり取り上げていたのだが、それだけが変更点ではない。エゾナキウサギが準絶滅危惧種へとランクアップされたのである。

 環境省のホームページに、注目される種のカテゴリー(ランク)とその変更理由が説明されている。

別添資料6 

 哺乳類ではニホンカワウソとミヤココキクガシラコウモリが絶滅種とされたほか、エゾナキウサギのランクが上げられ、馬毛島のニホンジカが「絶滅のおそれのある地域個体群」に指定された。ほかにはゼニガタアザラシ、トドのランクが下げられ、九州地方のツキノワグマが絶滅とみなされて「絶滅のおそれのある地域個体群」から削除された。

 複数の哺乳類が絶滅と判断されたことはたしかに今回の見直しの注目点ではある。しかし、それと同時にエゾナキウサギがランクアップされたことも、北海道にとっては注目すべきニュースだ。ところが北海道新聞をはじめとした北海道のマスコミは、ナキウサギについては取り上げなかったようなのだ。

 その理由は恐らく環境省のプレスリリースに関係していると思われる。8月28日に発表された「報道発表資料」の、「3 注目される種のカテゴリー(ランク)とその変更理由(別添資料6より抜粋)」では「哺乳類」はニホンカワウソと九州地方のツキノワグマの絶滅しか取り上げていないのだ。

 環境省はなぜランクが上がったナキウサギのことを、「注目される種」としてプレスリリースで取り上げなかったのだろうか?

 これまでナキウサギは、「夕張・芦別のエゾナキウサギ」が「絶滅のおそれのある地域個体群」に指定されていただけで、種としてはレッドリストに入っていなかった。しかし、アセス調査などでは以前からナキウサギは希少種として特別扱いされていた。ナキウサギは実質的には絶滅危惧種と同様に認知され扱われているのである。

 また、ナキウサギは本来ならとっくに天然記念物になっていてもおかしくない存在なのだが、なぜか天然記念物になっていない。このために「ナキウサギふぁんくらぶ」が天然記念物指定を求めて署名活動を続けている。

 こうしたことからも今までレッドリストに取り上げられていなかったこと自体が不可解であり、軽視されていたとしか思えない。そして、今回ようやく環境省が準絶滅危惧種として認めたのだ。

 ナキウサギは高山帯の生物という印象が強いが、しかし実際には低山にもそれなりに分布しており、そのような生息地が開発行為や森林伐採などによって影響を受けているのである。士幌高原道路、日高横断道路、そして大規模林道もナキウサギの生息地を破壊する道路計画だった。情けないことに、こういう大規模開発にナキウサギが絡んでいると、自然保護に消極的な環境省は絶滅危惧種に指定したくないという心理が働くのだろう。しかしこれらの道路はいずれも中止になり、足かせがなくなったのである。今回ようやく環境省がナキウサギを準絶滅危惧種に指定したのは、こうした背景も関係しているのではなかろうか。

 ところで、国営美蔓地区かんがい排水事業でもナキウサギの生息地の破壊が問題になっている。加森観光が強引にスキー場開発をしようとしているサホロ岳北斜面は、大雪山系の生息地と日高山脈の生息地をつなぐ重要なナキウサギ生息地なのである。ナキウサギの生息地破壊は今も続いている。

 こうした問題が浮上しているにも関わらず、北海道のマスコミはナキウサギの準絶滅危惧種指定をなんら報じなかったのだ。環境省は今ごろになってようやくレッドリストに入れたことが恥ずかしいのか、プレスリリースにも入れなかった。そしてプレスリリースばかりに頼って深く取材しようとしないマスコミは、ナキウサギのランクアップにも気がつかなかったのだろう。なんともお粗末な話しである。

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コメント

はじめまして。
朝日新聞デジタル(紙の朝刊にも)にエゾナキウサギの記事が出ていたので検索したら『鬼蜘蛛おばさんの疑問箱』に辿りつきました。

ナキウサギも準絶滅危惧種に指定されていたのを初めて知り驚きました。
ニホンカワウソといい九州のツキノワグマといい寂しい限りです。

マスコミの中の方たちがどこからどのように情報を収集してきているのかは分かりませんが、たぶん激務により一つの記事に裂く時間が限られていて、簡略化された情報になりがちになってしまうのではないかと思います。
マスコミにはそういう方向に進んでいって欲しくはありません。

松田さんのように、ニュースで注目されるようなことよりもさらに深いことを知っていて、それをブログという形式でまとめておられる方がいらっしゃるということは素晴らしいことだと思います。
これからも積極的に情報を発信していっていただきたいです。

インターネットの普及により、政府や企業が発信する1次ソースに誰もがアクセスできるようになってきました。
ですが、こいった情報に自ら積極的にアクセスして情報収集するような方は、一般の人の中にはまだ少ないように思います。
自分も積極的に1次ソースにアクセスしない人の一人だと思っていて、これからは疑問に思ったことは1次ソースを探してみようという思いになりました。
(デジタル媒体にソースが載ってないのも、なんだか変な感じはします。まだまだ紙媒体の延長にいるのかもしれませんね。)

あと個人的な意見ですが、官公庁や政府の出す情報は一般人には探しづらい上に難解だというイメージもあります。
そういったものを、簡単に分かり易く要旨だけでもまとめたものは隠れたニーズがあるような気がします。
一般的な知識など幅広い能力を求められるような企業よりも、個人の方が深く掘り下げて突っ込んだ内容でより分かりやすく伝えることができる部分もあるのかなと思いました。

では。

通りすがり様

ナキウサギも高山のものは比較的安定しているのですが、低山の生息地は破壊されやすいのです。もっと前から種としてレッドリストに登載されるべきだったと思うのですが、ようやく指定されました。

レッドリストに載ったこと自体は残念なことなのですが、載るべきものが載っていなかったということも問題だったのです。

レッドリストの改訂などのニュースは、お役所が記者クラブに知らせます(プレスリリース)。記者クラブ担当のマスコミ記者は、その要約された報道発表資料をもとに記事を書くというシステムになっています。ですので、どうしても各社で似たような記事になる傾向があります。一般の人は環境省その他のHPなど頻繁にチェックしていないので、マスコミ報道によって知るわけです。それで、一次情報に当たるともっと詳しいことが分かります。

記者クラブ担当の記者にとっては、情報は「待っていればもたらされる」ので、自分で深く取材するという姿勢がなくなってくるのでしょう。記者クラブ担当に限らず、最近のマスコミは独自取材が少なくなりましたね。

フリーのジャーナリストは記者クラブの廃止を求める人が多いのですが、日本独自の記者クラブは権力者とマスコミの癒着をも生む悪しきシステムです。

今はフリーのライターや一般の方が、インターネットのニュースサイトやブログなどで掘り下げたすぐれた情報を出している場合が多いですね。

絶滅危惧種分布図とかないですか?

日本の動物の分布図は以下で公開されています。

http://www.biodic.go.jp/kiso/atlas/

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