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2012年8月 2日 (木)

消えゆく光景-空を覆うアキアカネ

 ここ数日、アキアカネがよく目につくようになった。アキアカネとは、いわゆる赤トンボのことだ。今の季節はまだ赤くはなっていないので赤トンボだと思っていない人がいるかもしれない。

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 アキアカネは、真夏の暑い時期に高原などに移動することが知られている。私が住んでいるところは十勝地方北部のやや標高の高いところで、真夏でも30度を超える日は非常に少ない(ゼロの年もある)。ここ数日、北海道は各地で30度を超える暑い日が続いている。暑さに弱いアキアカネは、暑い平地を逃れて大雪山系に避暑にやってきたのだろう。

 私には忘れられないアキアカネの思い出がある。それは長野県の霧ケ峰の光景だ。

 私が生まれたのは長野県の上諏訪だ。私の両親は「霧ケ峰は自分の庭」と言うくらい霧ケ峰によく出かけ、隅々まで知りつくしていた。そんなわけで、東京に引っ越した後も夏休みにはしばしば家族で霧ケ峰に行ったものだった。

 私がまだ小学生の頃はビーナスラインなどという自然破壊道路はできておらず、上諏訪から霧ケ峰に行く道はまだ砂利道だった。バスは土埃をあげながら角間新田の集落(山岳小説家の新田次郎の故郷である)を通り抜け、エンジンをふかせながらジグザグの山道をあえぎあえぎ登っていく。霧ケ峰に行くというのはバスに一時間ほど(子どもの頃にはそれ位の時間がかかったように思えた)揺られることであり、子どもの私には遠足気分だった。私はバスの車窓から見る風景が大好きだった。

 どんどん標高が上がるにつれて白樺が現れ、車窓から見える植物の種類は里とは違って高原らしさが漂ってくる。バスの終着である強清水(こわしみず)は、あちこちに高原の花が咲き、下界とは別世界だった。

 強清水からスキー場の斜面を登ったところに「忘れ路の丘」と呼ばれている丘がある。小ぢんまりとしたスキー場があり、昔からグライダーの練習場になっていた。丘の一帯は広大な草原が広がっており(といっても霧ケ峰はどこも広大な草原ばかりだったが)、「霧鐘塔」という鐘がぽつんとたっている。「霧ヶ峰」という名前がつくほど霧の多い高原のため、方向を知らせる目的で建てられたそうだ。今ではこの一帯は柵に囲まれた遊歩道しか歩くことができないが、かつては丘を自由に歩きまわることができた。

 強清水のバス停に降りた途端に迎えてくれるのがアキアカネだった。そして忘れ路の丘のアキアカネの大群は、それはそれは見事だった。とにかく青空をバックに無数のアキアカネが舞っている。大群というより、広々とした草原一面にアキアカネが乱舞しているといったほうがいいだろう。捕虫網を振り回さなくても網の中に勝手に入ってきたし、頭にも服にも止まった。そして帰りのバスの中にも必ず数匹のアキアカネが紛れ込んでいた。だから私にとっては「夏の忘れ路の丘=アキアカネの乱舞する丘」だった。

 アキアカネはどこにでも見られる普通種のトンボで、夏の高原では群れ飛ぶ姿が見られるが、あれほどの空を覆うようなアキアカネを私は知らない。

 霧ケ峰には今でもそれなりの数のアキアカネが避暑にくるのだろう。しかしその数はずっと減ってしまったのではなかろうか。昨今はアキアカネがすっかり減ってしまったと聞く。

 アキアカネは稲刈り後の水田に産卵し、卵で冬を越したあと春に水を張った田んぼで幼虫時代を過ごす。稲作と大きく関わっている種だけに、その減少には人為的な要素が大きく関わっているのだろう。アキアカネの減少については以下のような見解がある。

稲の苗箱処理剤が赤トンボを減らしていた(月刊現代農業)

神戸で激減!最普通種のアキアカネ(神戸のトンボ)

アキアカネの激減について(日本蜻蛉学会 和田茂樹さんより)(身近な水辺の自然探偵団2002)

 稲作の拡大とともに大群をつくるようになった生物とはいえ、あの夏の風物詩である高原の乱舞が過去のものとなってしまったのなら何とも寂しい。

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コメント

アキアカネの同定にも苦労しました。
未熟のとき,両者は黄褐色なので胸の黒条が写るように撮ろうと思います。
結局,顔や胸が赤くならない方がアキアカネの♂と分かりました。
腹端の様子で雄雌が分かると初めて知りました。

コシヒカリを誰でも作るようになり減少してきたことが分かりました。

itotonnbosanさん

コメントありがとうございました。

私も以前ちょっとだけトンボにはまったことがありますが、アキアカネの同定は確かに難しいですね。

トンボに限らず、身近な生物がどんどん姿を決してしまうのは寂しい限りです。

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