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2012年4月 2日 (月)

協力出版は詐欺商法か? 文芸社刑事告発回想記 その4

理由がわからない不起訴の判断

 さて、告発してから何の音沙汰もないまま月日が過ぎていったのだが、告発のことも忘れかけた一年後に東京地検から一通の封書が届いた。7月11日付けの不起訴通知だった。

 私の頭の中に不信感が渦巻いた。検察はいったいどこまでまじめに捜査したのだろうか? まじめに捜査していれば、文芸社の請求費用の水増しくらい洗いだすことは難しくない。いったいどういう理由で不起訴なのか?

 不起訴通知とともに以下の書面が同封されていた。

 貴殿から告訴・告発した件につきましては、同封の「処分通知書」の記載のとおり処分しました。
 この処分の理由については、東京地方検察庁検察官あてに請求していただければ、速やかに書面にて告知します。なお、過誤の防止のため、貴殿からのこの請求も、書面によっていただきようお願いしています。
 また、この処分に不服がある場合は、東京地方裁判所(東京地方検察庁ではありません。)ないの検察審査会に対し、処分の当否について審査の申立てをすることができることとなっています。なお、これについても書面で行うこととされており、この書面では、審査の申立てをする理由を明らかにしてください。
 これらの請求については、いつまでにしなければならないという期限はありませんが、処分後余り長い期間が経過してしまいますと、記録が保存期間経過により廃棄処分されたり、また当該事件について公訴時効が完成して起訴が不可能となってしまいますので、その点留意してください。

 とりあえず、書面で理由を請求すると、不起訴処分理由告知書なるものが送られてきた。そこに書かれた理由とは「嫌疑なし」の一言である。こんなものが理由として通用するとは恐れ入る。文芸社の請求金額に利益が含まれていることは、渡邊さんの裁判の中で文芸社の小野寺潤氏も証言しているのだ。「嫌疑なし」とはいったいどんな捜査をしたのだろう? 頭に来た私は、担当検事に対して質問書を送付したのだが、もちろん回答はなかった。回答義務がないといえばそれまでだが、こんな理由で納得する者などいないだろう。

 検察審査会への申立もダメ元でいちおうやった。2005年(平成17年)8月25日付けで審査を申し立て、10月21日付けで不起訴処分は相当であるとの議決結果が届いた。検察審査会が検察の判断を覆すのは並大抵のことではないのではじめから当てにしていなかったから、これも致し方ない。

検察の判断は正しいのか?

 でも検察の判断はほんとうに正しいのだろうか? つまり、文芸社はほんとうに水増し請求をしていないのだろうか? 文芸社はちゃんと費用負担をしており、本が売れなければ利益が出ていないのだろうか?

 かつて渡邊勝利さんは私に、「文芸社の請求金額が実費だなんてことはありえない」と断言していた。業界関係者にとっては請求費用が実費ではなく、本が一冊も売れなくても利益が出る金額であることなど明白なのだ。東京地検がまともに捜査していたならこんなことを立証するくらい朝飯前ではなかったのか? だから私は、東京地検はまともに捜査しなかったのではないかと疑った。しかし、クンちゃんによるとそうでもなさそうだ。そんなことも調べられない捜査機関は無能だとしか思えないのだが、それとも文芸社側がうまくすり抜けたのか・・・。

 何年か前、北海道の上ノ国町の国有林で大々的な違法伐採があった。この森林窃盗をめぐり、市川守弘弁護士は函館地裁に森林法違反で刑事告発をした。はじめのうちは地検の反応は良かったという。ところが、結果は嫌疑不十分で不起訴になってしまった。森林管理署は伐根の調査も行っており証拠も十分だったのだから、まったくおかしな判断だ。どこかから圧力がかかったか、あるいは裏取引でもあったとしか思えない。この件に関しては以下を参照していただきたい。

上ノ国違法伐採告発の不自然な不起訴

 検察が不当請求を立証できなかったのはなんといっても残念だ。しかし、不起訴になってほっとしたという側面もある。もし立件されて詐欺罪になっていたら、恐らく文芸社は今存在していなかっただろう。そして「本もでなければお金も戻らない」という被害者をたくさん生みだしていたに違いない。それだけではない。社員は職を失い、下請けの会社も巻き添えを食っただろう。そう思うと非常に複雑な気持ちになる。

 さて、検察が不起訴にしたのだから文芸社は堂々と「わが社も費用負担をしている」「本が売れなければ利益は得られない」と断言し、「協力出版」を続けるのが筋だ。ところが、この告発のあと文芸社は協力出版という呼称を使うのをやめ自費出版と言うようになった。そして契約書の条項の費用の分担の部分を曖昧にしてしまった。著者の負担金の表記も「協力負担金」から「出版費用」になり、さらに「出版委託金」に変えた。委託契約ではないのに委託契約だと錯誤させる表現だ。こうしたことは共同出資ではなかったことを示唆している。

 その後、これまでの協力出版を「印税タイプ」とし、請負契約の販売型自費出版を新設して「売上還元タイプ」と命名した。当初、ホームページには「印税タイプ」と「売上還元タイプ」の違いを示す表を掲載し、「印税タイプ」はやはり共同出資を謳っていた。ところがこの表はその後削除された。共同出資ではないがために削除したのだろう。

 文芸社の刑事告発は不起訴に終わったが、しかしだからといって文芸社の商法が問題ないというわけではまったくない。私の目からみれば、今でも著者への請求金額は実費費用ではなく、不当請求としか考えられないものだ。出版社側にばかり有利で片務契約ともいえる契約だ。委託契約ではないのに、委託契約だと勘違いさせようとしている。原稿を褒めちぎることで著者を舞い上がらせる手法も相変わらずだ。大半の本がほとんど売れないことを知りながら、大量の本を作らせている。著者に知らせている販売数だって、実売数かどうか分からない。とてもまっとうな商法とは思えない。

 契約の際、著者に「売れることを期待しないでください」と説明すればいいというものではない。著者が金額に納得しているなら問題ないというものでもない。そういう著者の多くは請負契約だと勘違いしているのだ。売れないことが分かっているなら、販売前提の契約を勧めるべきではない。著者の大半は、書店に並べたり売れ残りを買い取る費用だって著者が出していることを知らないのではないか。印税だってそうだ。どうしても印税タイプを続けたいなら、文芸社も必ず費用負担するべきだ。この点で、「クンちゃん」の以下の主張には与しない。

・費用が高いのは、それを納得して支払う人については問題はない。一般にオーダーメイドは高い。ただし、契約の隅々まで、説明をつくして、すべて納得してもらう必要がある。
・著作が売れることは稀であることをきちんと説明する。 (
http://blog.goo.ne.jp/92freeedition44/e/5332f1892e27c8335b29706b52ec8386より引用)

 文芸社の社員は退職をする際に社内で知り得たことを口外しないよう誓約書を書かされると、だいぶ前にある元社員から聞いたことがある。だから内部告発者はほとんど現れないのだ。また、トラブルとなった著者には和解を提案し、合意書にはトラブルや和解の内容を口外しないという条項を盛り込むのである。だから、トラブルもほとんど発覚することがない。これによって悪質商法が続けられるのである。

 それでは文芸社のような悪質企業はどうしたらいいのだろう? ただ指を口にくわえて見ているしかないのだろうか? 私はそうは思わない。被害者は泣き寝入りをせずに声を上げつづけるべきだ。消費者センターや消費者庁に情報提供をするのもいいし、ブログに書くのもいい。違法行為があれば告訴だってできるだろう。

 また、内情を知る者による告発は大きな意味を持つ。誓約書を書いたといっても違法行為を告発するのは罪にならないのではなかろうか? こんな商法はおかしいと思い、良心の呵責に耐えかねて辞めた社員もたくさんいるだろう。是非沈黙を破ってほしい。この点では「クンちゃん」のような告発者を大いに支持するのである。

 最後に一言。これは文芸社に限ったことではない。同様の商法を行っている幻冬舎ルネッサンスなどにも当てはまることだ。こういうあこぎな商法は、いい加減に終止符を打つべきだ。

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