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2012年1月19日 (木)

避難するリスクと留まるリスク

 福島の原発事故で日本中が汚染されてしまった。とはいっても、私の住む北海道の汚染は今のところそれほど酷くはない。そういう場所に住みながら、今回の事故の危機的状況について語ると「安全なところから無責任だ」とか、「危険だと言いながら避難しろと言わないのは無責任」という批判も聞こえてきそうだ。

 しかし、被ばくのリスクは住んでいる場所によって違うし、年齢によっても違う。汚染されていない食べ物や水が手に入りやすいかどうかということによっても異なってくるし、アレルギーや持病をもっているか否かによっても違う。被ばくに対する認識や考え方も人それぞれだ。だから他人が「避難しなさい」などと口出しすることではないと思う。たとえ無責任だといわれても、私は他人に「避難しなさい」などとは言えない。

 また、「不安にさせる」「不安を煽る」と言われても、事実は事実として知らなければならないと思う。もし自分の住む地域がそれなりに汚染されたのなら、私は何よりも事実が知りたいと思う。事実を知らなければ的確な判断ができないし、そこに留まる覚悟をするにも、あるいは避難するにも事実を受け止めなければならないからだ。

 体内に入ってしまった放射性物質の排出に効果があるとされているものがいくつかあるが、そういったものを利用するかどうかも基本的には一人一人が情報収集して決めていくことだ。必ず効果があるとは言えないし、摂取の仕方によっては副作用もあり得る。不安につけこんだ詐欺的商法もあるかも知れない。摂取するリスクとしないリスクを考えて個人個人で判断するしかない。

 しかし私が何より心配なのは、今でも汚染された地域に多くの子どもたちや若い人たちが住み続けていることだ。被ばくによる甲状腺ガンや白血病などは数年経たないと発症しない。さらに、福島はもとより関東地方ですら被ばくが原因ではないかと疑われる鼻血、下痢、咳、あざ、等々の症状が多数報告されているし、突然死の情報もある。もちろんそれらの症状と放射能の因果関係は証明できないが、普通のこととも思えない。少なくとも、これらの症状がチェルノブイリの原発事故のあとに見られた症状と重なるということは知っておくべきだ。

チェルノブイリ症候群(チェルノブイリへのかけはし)

 被ばくしたからといって必ず病気になるというわけではない。しかし病気になってしまえば取り返しがつかないことになりかねない。また被ばくによる免疫力の低下によって亡くなる可能性もある。そういうリスクをどう考えるかなのだ。何よりも被ばくの影響を早期にそして大きく受けるのは子どもたちや胎児だ。だからこそ、あとで後悔しないためにも避難について一人一人がよく考えてほしいと思わずにいられない。

 とはいっても、移住するとなれば仕事や家を手放さなければならない人が大半だろうから、簡単に決断できないこともよく分かる。住宅ローンを抱えている人はなおさらだと思う。本来なら東京電力や国が全面的に補償しなければならないことだが、国は国民の命のことなど考えていない。

 数日前、SPEEDIの情報が事故の直後に米軍に提供されていたことが明らかになった。日本政府は国民より米軍を優先したのだ。しかもチェルノブイリ事故では廃村にされたような汚染地帯に避難した住民を戻そうとしているのがこの国だ。政府の言うことを信じていたら殺されかねない。だから、避難をするかどうかも自分で情報収集し、避難するリスクと避難しないリスクを天秤にかけて決めていくしかない。厳しいかもしれないがそれが現実だと思う。

 以下の「猫山家」は、ご自身で情報収集し、ホットスポットである柏市から静岡への移住を決断された。その経緯が資料とともに詳細に説明されている。

猫山家の例。柏市からの移住。放射能からの退避。

 簡単に移住できるほどの財産がある人ならともかく、一般の人の場合はこれくらい綿密なリスク評価をしなければなかなか決められないことなのだろう。

 猫山氏が最後に書いているように、各家庭にはそれぞれ事情があり移住するかどうかの判断も家庭によって異なる。しかし、汚染された地域に住み判断に迷っている方にとって、この猫山家の記録は大変役立つと思う。猫山氏のようにリスクを書き出して細かく検討することで、家族間の意見の違いも理解しあえるかもしれない。

 いずれにしても、これからの時代はすべて(避難のことに限らず)自分で情報収集し、自分の頭で考え判断していかなければならない。安易に人を信じるのではなく、信じられる情報か否かを一つひとつ自分で見極めなければならないのだ。作家の辺見庸氏は「個」のあり方を強調するが、今ほど個人の意識と意志が問われているときもないだろう。それが原発事故の教訓だと私は思う。

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