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2012年1月 7日 (土)

イソコモリグモの分布と大津波

 イソコモリグモは海岸の砂浜に巣穴を掘って生活している大型のコモリグモだ。日本では、北海道と本州に生息している。北海道では広く分布しているのだが、興味深いのは本州の分布だ。

 本州の場合、日本海側と太平洋側ではかなり分布の様相が異なっている。日本海側では富山県と兵庫県を除き、青森県から島根県まで生息が確認されている(とはいっても、自然海岸の消失によってかなりとぎれとぎれになっているのが実態だが)。それに対し、太平洋側では青森県から岩手県の北部に生息するほか、宮城県、福島県をとびこして茨城県に隔離分布しているのだ。

 砂浜のほとんどない三陸海岸に分布していないのはわかるが、なぜ砂浜のある宮城県や福島県には分布していないのか? 日本海側ではかなり西まで分布を広げているのに、なぜ太平洋側は茨城県が南限なのか?

 私は、その理由は津波にあるのではないかと考えている。東北地方がしばしば大津波に襲われたことはよく知られている。日本海側に比べ、太平洋側は圧倒的に大きな地震が多く、海岸はしばしば大津波に洗われてきたのだ。

 仙台の七北田川の河口に広がる蒲生干潟は渡り鳥の渡来地として知られ、かつて東京に住んでいた頃、何回か野鳥の観察にでかけたことがある。ここには「日和山」と呼ばれている標高数メートルほどの小高い丘があり、野鳥の観察にうってつけの場所だった。しかし、あの3.11の大津波でこの日和山は跡形もなく消失してしまったのだ。

蒲生干潟の現状~干潟生態系、徐々に復元~(JAWAN REPORT)

 日和山や松林を飲み込んでしまうほどの大津波が押し寄せたなら、イソコモリグモの生息地などひとたまりもないだろう。茨城県の生息地は、そうした津波被害からなんとか逃れて存続してきたものではなかろうか。

 岩手県北部の生息地も、先日グーグルアースで見たところ、かなり津波の被害を受けているようだった。ここのイソコモリグモは果たして生き延びることができただろうか?

 ここ3、4年ほど北海道の海岸を回ってイソコモリグモの生息調査を行ってきたが、北海道の海岸でもイソコモリグモが「いそうでいない」というところがある。たとえば道東の根室半島の太平洋側だ。生息していてもおかしくないとても雰囲気のいい砂浜がいくつかあるのだが、ここでは生息の確認ができなかった。

 それでふと思ったのが、津波の影響だ。北海道の沖にもプレートの境界がありしばしば大きな地震が起こっている。道東の海岸は過去に何回も大きな津波に襲われたはずだ。その津波によって生息地の砂浜がさらわれてしまったのではなかろうか? その後、また砂が堆積してイソコモリグモの生息適地が復活しても、移動能力の小さいイソコモリグモは簡単に分布を広げられないのだ。

 海浜特有の生物にとって、生息地をそっくりさらってしまう大津波は脅威に違いない。茨城県に隔離分布するイソコモリグモは度重なる大津波から逃れ、ひっそりと生き延びてきたと思えてならない。

 かつては大津波で生息地が消失することがあっても、長い時間をかけて近隣の生息地から移動してきた個体によって分布を広げることもあったのだろう。しかし、人間が自然の砂浜を破壊し、コンクリート護岸だらけにしてしまった今、イソコモリグモの生息地は大きく分断されてしまった。こうなってしまうと移動能力の小さい生きものは滅びていくしかないのだろう。クモにとって自然の脅威以上に恐ろしいのは人間なのだ。

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