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2011年12月 8日 (木)

幻冬舎ルネッサンスのコメントを掲載した朝日新聞の自費出版記事

 11月21日、「共同出版・自費出版の被害をなくす会」に朝日新聞の記者から自費出版に関する連載記事を書きたいのでアドバイスをしてほしいとメールがあった。私的メールではないので、その依頼メールの主要部分を以下に転載する。

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 このたび、弊紙の生活欄でシニア向けの自費出版案内を連載することになりました。トラブル事例なども多く報告されているようですので、過去記事をあさっていたら、貴会のことを知りました。今回の連載でも、読者に出版社の選び方や注意点をぜひ紹介したいと考えています。そこで貴会にぜひ、アドバイスを頂きたくメールいたしました。

斎藤 健一郎 SAITO Ken-ichiro
朝日新聞文化くらし報道部

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 この依頼を受けて、私は以下のメールを送信し、電話で説明する旨を伝えた。

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斎藤健一郎様

メール拝受いたしました。
自費出版に関する連載を掲載されるとのこと。問題点を的確に捉えた記事を掲載されることを望みます。

出版社の選び方や注意点については「被害をなくす会」のサイトに掲載している通りです。
http://nakusukai.exblog.jp/7873601/ 

ちょっと分かりにくいかもしれませんが、ひとつの注意点は契約書が「本の制作・販売サービス(役務の提供)」の契約なのか、それとも出版社の出版事業に著者が出資する契約なのかということです。後者は問題が多く、トラブルも多発しています。どちらかを知るためには、契約書で本の所有権が出版社にあるのか著者にあるのか、著者には印税を支払うのか、売上金を支払うのかをきちんと確認しなければなりません。

もうひとつは、「販売に期待するな」ということです。アマチュアの本はほとんど売れませんので、販売に期待するのは禁物です。例外はありますが、基本的に「ほとんど売れない」と考え、販売しない私家本として必要な数だけつくるほうが無難です。悪質な出版社は作品をほめておだて、販売を期待させて勧誘します。1000部ほどつくっても大半を断裁することになりかねません。

また、会社の規模や知名度で選ぶことも慎重にすべきです。幻冬舎の系列会社(経営陣は幻冬舎とほとんど同じ)である幻冬舎ルネッサンスなどもトラブルとなっています。私家版であれば地方の小規模の自費出版社や印刷会社で十分です。

著者は目的意識をしっかりもち、情報収集をすることが肝要です。

ほかにも細かいことではいくつかの注意点があります。

電話はできれば以下の携帯にお願いします。
○○○-○○○○-○○○○

松田まゆみ

**********

 私は実際に掲載された記事は見ていなかったのだが、その連載記事に幻冬舎ルネッサンスのコメントが掲載されているという情報が寄せられて仰天した。

 上記のメールや「共同出版・自費出版の被害をなくす会」のサイトに書いているように、私が出版社を選ぶ際にもっとも注意喚起することの一つは契約形態であり、もう一つは自費出版本は大多数がほとんど売れないということだ。トラブルに関しては「被害をなくす会」のサイトでも文芸社や幻冬舎ルネッサンスの事例を取り上げている。

 また、電話取材の中で、私は新風舎(倒産)や文芸社、碧天舎(倒産)などが共同・協力出版商法を派手に宣伝し、トラブルが多発するようになった経緯も説明している。幻冬舎ルネッサンスが同様の商法を行っていることも。

 だから、この記事を書いた記者は幻冬舎ルネッサンスの契約形態の問題点やトラブルの事実も知っていたのである。それにも関わらず(書いた記者が違うとはいえ)、同じ連載記事の中で、幻冬舎ルネッサンスに取材してコメントをとっているのだ。

 普通、記事を読んだ人は、コメントをとった会社が悪質商法を行っているなどとは思いもしないだろう。同じ連載で、出版社の選び方や注意点を扱っているのだから、記事に出てくる出版社は問題がないと思うのが普通の感覚だ。

 NHKなども体質はまったく変わらない。自費出版に関する番組制作で取材があり、何回かメールや電話でアドバイスしたことがある。私はいつも同じように問題点を指摘しているのだが、肝心なポイントはまず報じない。そして、社名こそ出さないが悪質商法を行っている出版社を取材して流すのだ。許しがたいのは、それらの出版社が悪質商法を行っていることを知っているのに、その商法の問題点を具体的に指摘しないことだ。

 その背景には、同業者の批判はしないという暗黙の了解があるからだろう。出版社もメディアの一員だし、新聞社の多くは出版部門をもち自費出版も手掛けている。しかも、新聞社は出版社の広告を出している。出版社批判はタブーということなのだろう。裁判やら刑事事件にでもならない限り、マスコミは自費出版社の批判記事を書かない。

 私のコメントが掲載されたのは連載の3回目だ。そのコメントは「良心的な出版社ほどリスクも説明する。大きい出版社だから安心というわけではない。納得いくまでいくつもの出版社にあたってみることが大事です」というものだ。上記のメールに書いたような、私がもっとも問題としている点には一切触れていない。意図的に排除したとしか思えない。

 最後に、2回目の記事に掲載された幻冬舎ルネッサンス小玉圭太社長のコメントの矛盾点を指摘しておこう。小玉さんは「何かを表現することは、自分の欠落を見つめ直し、自己救済すること。書かざるを得ない何かを持っているからこそ本を出す意味がある。印税でもうけようと思わないこと」と言ったそうだ。

 幻冬舎ルネッサンスの出版契約は商業出版で一般的に用いられている「出版権設定契約」のひな型をベースにしたものだ。つまり、本を売って利益を得ることを前提とした契約なのだ。流通を前提とした契約を提案しておきながら「印税でもうけようと思わないこと」というのは矛盾する。印税収入を当てにするなというのは、それほど売れないことが分かっているからだ。わざわざこんなことを言うのは、あとで著者から「高額な費用を払ったのに思ったほど印税が入らない」と文句を言われたくないからだろう。それならはじめから売れないことをしっかりと説明して私家版を勧めるべきだが、新聞記事によると9割を書店流通させているらしい。なぜ9割もの人に販売前提の契約を勧め、大量の本をつくらせるのか? 新聞記者は取材でこういう矛盾を見抜かなければならない。

 こういう会社のコメントを採用したからこそ、契約形態の問題点や自費出版本が売れないという私の指摘を取り上げられないのだろう。これでは何のために取材に答えたのか分からない。新聞社の都合のいいように利用されたといっても過言ではない。朝日新聞のしたたかさに、久しぶりに血圧が上がったようだ。

 朝日新聞の記事などよりずっと参考になるのは、ご自身で情報収集し後悔のない自費出版をされた「フクちゃん」の「自費出版顚末記」だ。自費出版を考えている方は、こちらを読まれることを推奨したい。

自費出版顛末記

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コメント

 夕日新聞にはちゃんとした人もいっぱいいるけど、とんでもないのもいっぱいいるんでね。
 今度のこととは関係ないけど、むかし、浦和の記者クラブにいたころ、東強、世も売り、枚に火とわっちでお茶飲んでたら、見慣れぬ大男が入ってきたので、世も売りが「参詣さんですか?」って聞いたら、それが夕日で、瞬間的に激怒して「おれのつらが参詣づらなんか!」としつこくぐちゃぐちゃやっていてあきれかえったことを思い出しました。有名な体育家の孫だったけど。クンちゃん

松田さん、さすがの理路整然としたご指摘です! 一つだけお名前を訂正してください。本文中に出てくる談話を話したのは、幻冬舎ルネッサンス社長の小玉圭太さんです。(中澤さんはその手前のコメント)

しかし、この朝日の記事は悪質で、結局は自分とこの子会社アピールであるうえに、問題だらけの幻冬舎の談話を載せるなどは言語道断です。

はっきりと、朝日新聞の記者にはクレームを申し伝えないわけにはいきませんね。

また、朝日新聞の今回の記事に対する注意の呼びかけも、ブログ記事でしておいたほうがいいかも。

私も自分のブログに注意喚起書きます。また、明日、さっそく朝日新聞に抗議の電話をかけておきます。

思えば、

「広告塔に仕立て上げるためと思われる、天野節子さんの自費出版小説のドラマ化」

も、朝日系列のテレビ朝日でしたね。

もしかしたら、幻冬舎経営陣は、朝日のお偉いさんと大学の同期とか、そんなつながりでもあるのかもしれませんね。

天野さんは悪くないのでしょうけれども、あそこまで広告塔にされたからには、やはりご本人にも責任はないとは言えないでしょうねぇ。

クン様

もちろん優秀な新聞記者の方もたくさんいるんでしょうけれど、調子のいい人やいい加減な人もたくさんいるんでしょうね。

烏賀陽弘道さんの「『朝日』ともあろうものが」という本を思いだしました。あの会社の体質がよくわかる本です。

酒井日香様

間違いの指摘ありがとうございました。訂正しました。

天野節子さんの小説のドラマ化もテレビ朝日だったんですか。そういえば、文芸社の著者の本のテレビドラマというのもテレビ朝日でしたね。なるほど・・・。

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