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2011年10月15日 (土)

「えりもの森裁判で」不当判決を下したのは石橋俊一裁判長

 このところ原発問題に重点を置いてきたこともあり、「えりもの森裁判」の報告がおろそかになっていたのだが、昨日は提訴以来6年近くにわたって争ってきたこの裁判の判決が札幌地裁であった。石橋俊一裁判所に代わってからの裁判の様子から、法と事実に則った適正な判決が出るとは思えなかったし、主文を言い渡してあっという間に終わることはわかりきっていたが、一日かけて出かけていった。

 「えりもの森裁判」の概要については以下を参照していただきたい。

えりもの森裁判(市川・今橋法律事務所)
えりもの森皆伐事件住民訴訟
(NPJ弁護士の訟廷日誌)

 ごく簡単に説明すると、北海道は木材生産のための施業をしないと条例で定めていたのに、「受光伐」との名目で道有林の皆伐を行って生態系を破壊し森林の公益的機能が損なわれたこと、契約本数を大幅に上回る過剰な伐採をして損害を与えたこと、集材路の新設でナキウサギの生息地を破壊したことなどに対して損害賠償を求めた住民訴訟だ。

 判決の主文は以下だ。裁判長はこれを読みあげてさっさと退場した。

1 本件訴えのうち、相楽博志に対する賠償命令に関する部分をいずれも却下する。
2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は原告らの負担とする。

 これほど酷い判決もそうそうない。あとで判決文を見てさらに驚き呆れた。

 判決文は当事者目録を除くと30ページなのだが、「事実および理由」に25ページが割かれ、肝心要の「当裁判所の判断」はたったの5ページ弱だ。さらに事務手続きに関わることがそのうちの約3ページを占め、「損害について」は2ページにも満たない。これまで6年近くにわたり膨大な書面と証拠書類を突き付けてきた裁判の判断は、あまりにもお粗末なものだった。

 以下に「損害について」の部分を引用しよう。堅苦しい文章が苦手な方は飛ばして読んでいただきたい。

 原告らは、本件売買契約1、本件請負契約1及び本件請負契約2並びに本件各行為によって、道有林の森林の公益的機能が損なわれ、また、伐採された立木の価額分の損害が北海道に生じた旨主張する。
 しかしながら、北海道が道有林の公益的機能についてその在世案的価値を試算しているからといって、その試算に従って北海道の財務会計上の資産として計上されるというような筋合いのものではなく、その試算を基礎として、森林の伐採により民法上又は地方自治法上の住民訴訟の対象となるような「損害」が発生するなどとは考えられない。また、ある森林の公益的機能が損なわれ、それによって地方公共団体に財産的損害が生じているかどうかは、当該森林のみならず、近傍隣地の状況等を総合的かつ長期的にみて判断されるべきものと考えられる上、その判断は多分に評価的なものであるから、伐採された箇所があれば直ちに面積に応じた割合において損害が生じるということはできない。そして、本件において、上記核契約及び本件各行為によって、森林の公益的機能が損なわれ、北海道に財産的損害が現に生じているとまで認めるに足る証拠はない。
 次に、立木自体の交換価値に着目しても、原告らは、売払いの対象となった立木の売払価格が不当であるとの主張をするわけでもなく、また、そのような事実を認めることもできない。また、本件地拵えにより伐採された樹木についても、売払いの対象とすべきであった立木の具体的存在や、その売払いをすべき価額等を的確に認めることもできない。北海道の財産である道有林についての事務の受任者たるセンター長が、その管理の一環として、道有林を伐採した上で集材路を作設することや、伐採した立木を売却することなどによって、直ちに北海道に伐採木の価額に相当する財産的損害が生じたということはできないし、他に本件において北海道に財産的損害が生じていると認めるに足りる証拠はない。
 そうすると、本件売買契約1、本件請負契約1及び本件請負契約2並びに本件各行為によって、北海道に損害が生じたと認めることはできないから、その余の点について判断するまでもなく、原告らの請求は理由がない。

 この判決にはただただ唖然としてしまう。まず、前半部分は森林の公益的機能に対する損害を認めた中間判決を否定する内容だ。中間判決を前提として始められた裁判でありながら、それすら否定しているのだ。

 「本件地拵えにより伐採された樹木についても、売払いの対象とすべきであった立木の具体的存在や、その売払いをすべき価額等を的確に認めることもできない」という判断には驚愕してしまう。北海道は客観的事実として過剰伐採を認めているし、正規の販売では1本当たりの価格は出ているため、その本数に1本当たりの価格を掛けて損害額を算出していた。また、北海道は胸高直径6センチ以上の立木は財産的価値を認めているし、原告らは伐根をすべて写真にとって証拠資料として提出している。ところが過剰伐採の本数には一切触れずに、「立木の具体的存在がない」とか「売払いをすべき価額等を的確に認めることもできない」、とし「損害はない」と結論づける判断は意味不明というほかない。事実を見ようとする姿勢が全くない。また、越境伐採のことについても全く触れておらず判断を避けている。

 裁判では法と事実に基づいて判断されなければならない。事実に基づいて論理的に判断したなら、こんな結論が導かれることは到底考えられない。典型的な「はじめに結論ありき」の判決であり、その判決を引き出すために事実を無視して「当裁判所の判断」を書いたとしか思えない。

 今日の記事のタイトルに裁判長の名前まで入れたのは、こんな判決を平然と出す裁判長がいるということ、そして日本という国はこんな裁判がまかり通っているということを強調するためだ。このようにお上の方を向いた判決を出す裁判官のことをヒラメ裁判官という。事実と法に基づいて判断しない裁判がまかり通っているということは、司法の崩壊を意味している。何のために裁判があるのか分からない。

 全国で展開された原発裁判がことごとく敗訴しているのも、同じような構図があるからだ。原発裁判はこの国のヒラメ裁判官の多さを象徴している。今回のような判決を放置したなら、ほとんど死に体のこの国の司法はますます劣化するだけだ。ということで、即日控訴することを表明した。

 以下は昨日の記者会見で配布した原告らの見解だ。

**********

えりもの森裁判判決を受けて

                              原告 市川 守弘
                              原告 松田まゆみ
                              原告 市川 利美

1 北海道の道有林における大規模な伐採の違法性を認められなかったことは大変残念である。
 私たちは、北海道の黄長な生物多様性を保護するために、また道有林の森林管理を条例に基づいて適切に行うよう求めて、本件を提訴した。
 北海道には、えりものような自然に溢れた天然林は、非常に希少なものとなっている。しかし道有林を管理する北海道は、そこでの生物相の保護を全く考慮することなく、しかも天然林はその公益的機能を最優先とし、木材精算のための伐採は一切しないとの全国に先駆けての条例を制定しながら、本件では大規模な皆伐を行い、非常な安値で業者に立木を売却していた。これは裁判所の判断を別にして、許されることではない。
2 北海道は、本件提訴後、その森林管理を改め、日高地方では、ほとんど天然林を伐採しない計画に変更したことは評価できるし、この提訴の事実上の勝訴であると考えている。
 しかし、私たちは、さらに北海道の生物多様性を保全するために、森林に手を入れる際には環境アセスを行うこと、北海道が自ら定めた施業マニュアルに沿って、野生生物の保護を最優先課題として森林管理することを求め、いっそうの闘いを行っていくものである。
3 本判決は、裁判所が本件においてどこまで日本の将来を考えながら事実を判断し、法を適用したか、について多大の疑問が残る判決である。
 裁判所の判断は、裁判官自らが1人の国民であることを前提に、日本において自然の保護、生物多様性の保全が、どれほど重要なのかを理解した上で、法の解釈、事実の判断をしなければならない。このことは原発訴訟における過去の判決例と現実化した福島の事故を見て、裁判所自らが十二分に反省していることと理解していた。
 しかし、本件では、法(生物多様性条約や北海道森林づくる条例等)の解釈においても、多くの事実の認識においても、このような反省に+ことなく、司法の社会的、政治的責任を放棄したものとなっている。
 私たちは、このような裁判官の価値判断に対しても、今後は不断の批判、闘いを行っていく覚悟である。

**********

 この判決については今朝の北海道新聞にも掲載されたが、その記事と並んでいたのは「違法伐採が大幅増」という石狩川源流部の国有林違法伐採に関する記事。これも同じ市川弁護士らが関わる市民団体が追及し、林野庁が重い腰を挙げて自ら調査を行い違法伐採を認めた事件だ。これについては後日改めて記事にしたい。

 市民の調査・追及によって明らかにされてきた違法伐採が、ヒラメ裁判官の手にかかると違法ではなくなってしまう。なんと恐ろしい国なのだろうか。

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