島村英紀さんの指摘する原子力産業と地球温暖化問題
前回の記事では地震学者の島村英紀氏の「人造地震(誘発地震)」について紹介したが、今回は地球温暖化問題について指摘しておきたい。ついては、以下の記事をお読みいただきたい。
島村英紀は東日本大震災(2011年3月)の前までに、原子力発電所についてこんな指摘をしていました。
島村氏は、石油業界や原子力産業、各国の政府などの思惑によってIPCCが利用されてきたという疑惑の数々を取り上げ、温暖化対策の名の元に原子力発電が推進されていると指摘している。推測や伝聞の情報もあるとは言え、原子力産業とそれを推進したい先進国の政府がIPCCに黒幕を送りこんで操ってきたという指摘はかなり真実味が高いと思う。原子力発電を何としても進めたい人たちにとって、人為的地球温暖化説は非常に好都合だし、これを利用しない手はない。
島村氏はこのような状況から「地球が人為的な原因によって温暖化するかどうか、という科学的な議論はある意味ではすでに終わってしまって、地球温暖化問題は科学の領域ではなくなってしまっているのである」と言っている。つまり、「地球温暖化の科学」は棚にあげられた状態で、原発推進に利用されているというわけだ。
人為的地球温暖化説が原子力発電推進者によるでっちあげだという話しは以前から一部の人たちの間でささやかれていた。こうした背景から、二酸化炭素温暖化説自体がデマだと考える人たちがいるのは分からなくはない。いわゆる陰謀論だ。福島の原発事故が起きてからはそういった声がさらに大きくなっているように感じる。
残念ながら私は島村氏の『「地球温暖化」ってなに?科学と政治の裏舞台』を読んでいないので正確なことは言えないが、彼の温暖化に関する意見は「前に述べたように人間の活動に伴って温室効果ガスの排出量が増えてきているのは確かなことだ。しかし一方で、それが将来の地球温暖化を引き起こす可能性についてはまだ科学的に完全には証明されたわけではない。可能性はかなり高いと言うべきだが科学的には異論がある」ということのようだ。つまり、温暖化説が極めて政治的に利用されていると言ってはいるが、だからといって温暖化がデマだという陰謀論を唱えているわけでは全くない。
なお参考までに島村氏の本の書評をひとつ紹介しておきたい。
ところで、二酸化炭素温暖化説が政治的に利用されていることは確かだとして、その説自体が科学的に正しいか否かというのはまったく別の問題だ。島村氏が言いたいのもまさにそのことなのだ。
ところがそこを理解しようとせずに、黒幕がいて政治的に利用されているから陰謀だとして、温暖化そのものすらデマと決めつけてしまうのはあまりに短絡的だし非科学的だ。ここは純粋な「温暖化の科学」の議論が必要なのだが、日本ではなんだか二酸化炭素温暖化説を支持する多くの気候学者と、それに懐疑的な物理学者などとの対立状態になっているような感がある。私自身は、温暖化の要因は二酸化炭素だけではないという主張は理解するものの、全体的には懐疑論や否定論を唱える人たちより気候学者の論理のほうが説得力があると思っている。そのことはこのブログでも何回か取り上げてきた(カテゴリーの「環境問題」を参照)。
それはともかくとして、島村氏の『「便利で快適な」生活か「ぜいたくで無駄な」生活か』は重要だ。
島村氏は、清涼飲料の自動販売機のことを一例として取り上げ、エネルギーや資源の無駄遣いについて論じているが、これには大いに賛同する。島村氏によれば、自動販売機だけのために使われている日本の電力は、原子力発電所2カ所の発電量よりも多いとのことだ。それが事実なら自動販売機をやめるだけでかなりの節電が可能だ。コンビニでもスーパーでも清涼飲料水を店内で販売しているのだから、自動販売機がなくてもなんら問題はない。自動販売機こそ資源の無駄遣いを助長しているのだ。似たような無駄はほかにも山ほどあるだろう。
先の震災で、東京ではかなりの節電が行われた。春の時点では、夏には電力が不足するとあれほど騒がれたが、今年の需要ピークは昨年よりだいぶ低く4922キロワットで済んだのだ。あの騒ぎは何だったのか? 結局、一部の原発推進派が原発の必要性をアピールするためだったとしか思えない。
節電効果 大口29%、家庭は6%減 東電が発表(朝日新聞)
ウランも化石燃料も限られた資源だ。そもそも地面に埋まっているものを人間が大量に掘りだして利用するということは自然のバランスを乱す行為であり、環境に悪影響を与えない訳がない。原発の燃料であるウランの採掘も、石油や石炭などの利用も共に大きな問題を抱えている。そして原発も化石燃料の利用も温暖化に加担しているのだ。だから将来的にはどちらにも依存しない世界を目指さねばならないし、とりわけ危険な原発はできる限り早く廃止しなければならない。
人類は自然に対して謙虚でない限り、結局は自滅するのだろう。原発事故にしても地球温暖化にしても、それをよく物語っている。
« 島村英紀氏が語る人造地震(誘発地震) | トップページ | メノコツチハンミョウという不思議な昆虫 »
「原子力発電」カテゴリの記事
- 原発事故から10年(2021.03.11)
- 被ばくによる健康被害を「風評」にしてしまう人たちを信じてよいのか(2019.04.19)
- 早野龍五氏「見解」の嘘で濃厚になった捏造疑惑(2019.02.11)
- 宮崎・早野論文の驚くべき不正と隠蔽(訂正と追記あり)(2019.02.02)
- 早野龍五氏の本音は原発推進(2019.01.21)
「CO2温暖化の主因?」論争ですが、驚いたのですが
最近の研究動向では逆転しそうな様子です。
今年になって「太陽活動は長期的には低下する」旨の発表が
海外や国内の研究所から発表されてます。
加えてビックリしたのが、暖化量を大きく左右する「雲」に
ついて「生成に宇宙線が関与している」論の検証実験が
Nature掲載されるなど主流?になりそうな勢いです。
一般に太陽活動が高いと宇宙線が減ります。
実はここ100年は太陽活動が概ね上り調子でした。
この仮説に従うとこうなります。
「太陽活発→地球上の雲が減り多くの熱量受ける→温暖化→
海洋中のCO2が気体になりCO2濃度増加」
これは最初ピンとこなかったんですが少々真実味を
帯びてきた感じです。
今後太陽が不活発、もし寒冷化になると、皮肉にも大気中に
出てきていたCO2が海に溶けて結果的にCO2濃度さえも減少と
いった報告があるかもしれません。どうなるんでしょう?!。。。
投稿: とおりすがりさん | 2011年10月 5日 (水) 17時06分