函岳の自然
15日は道北の函岳に行ってきた。といっても、この山の頂上には北海道開発局旭川建設部道北レーダー雨雪量計局舎があり、山頂まで車で行ける。もちろん砂利道だが、道はよく整備されている。林道入口には加須美峠まで17km、函岳まで27kmとある。舗装道路なら27kmの道のりはたいしたことはないが、砂利道なのでかなり長い。
麓から中腹にかけては針広混交林なのだが、雪が多いためか針葉樹は少ない。おそらく過去の伐採でさらに減ってしまったのだろう。広葉樹の中にトドマツやエゾマツが点々とあるだけで、林床は丈の高いチシマザサが生い茂っている。チシマザサの高さからも、積雪が非常に多いことが分かる。
北海道の場合、低山帯は針広混交林で標高が上がるにつれて針葉樹が優先する森林となり、針葉樹林帯の上部にはダケカンバ帯があるのが一般的だ。しかし、このあたりは針葉樹林帯がないため、標高が増すに従い針広混交林からダケカンバ帯に移行していく。加須美峠に近づくと、ダケカンバが主体となり、風の強い斜面はハイマツやササとなっている。あまり風が強いとダケカンバは生育できないのだろう。函岳の頂上に近くなるとハイマツとササがモザイク状になっている。
ダケカンバの樹形が面白い。下は加須美峠から函岳にかけて見られるダケカンバ林の写真だ。枝が素直に斜め上に伸びられず、のたうちまわるように曲がりくねっているし、枝が折れている木も多い。風が強いことと雪の重みによる枝折れなのだろう。こんな樹形のダケカンバはあまり見たことがない。
加須美峠から函岳まではなだらかな稜線上に道がつけられているのだが、風当たりの強い稜線では、ダケカンバは矮性化している。
山頂の駐車場には立派な小屋「函岳ヒュッテ」が建っていて、トイレもある。
こちらが道北レーダー雨雪量計局舎。
山頂はレーダーのすぐ裏手だ。晴れていると利尻富士が見えるらしいのだが、この日は生憎の曇り空で遠方の景色は望めなかった。標高1129mのなだらかな地形の山だが、ほとんどが安山岩溶岩と同質火砕岩からなる山なのだそうだ。つまり、ほぼ全体が溶岩でできている山だ。
ハイマツの下にはコケモモやエゾイソツツジ、ゴゼンタチバナなどが見られる。
山頂近くの道路脇には外来種のカラマツも・・・。野鳥などが種子を運んで芽生えたのだろうか。
函岳はライダーに人気の場所で、彼らの間では美深から函岳に向かう林道は「道北スーパー林道」とか「函岳レーダー道路」などと呼ばれているらしい。とくに、加須美峠から先は稜線に道がついており、とても眺めがいいのだ。この日はライダーは少なかったが、バスとすれ違ったのには驚いた。
山の上の観測施設といえば、信州の乗鞍岳に建設されたコロナ観測所や霧ケ峰の車山気象レーダー観測所が頭に浮かぶ。どちらもその人工的な建造物が自然の景観を台無しにしているのは言うまでもない。山の上に大きな施設を造るためには道路を付けなければならないし、道路を通せば必ず自然破壊が生じる。乗鞍岳も車山も観測施設によってずいぶん傷つけられた。乗鞍岳に観光道路がつけられたのも、コロナ観測所への道があったからではなかろうか。あの観光道路で乗鞍岳の自然は大きく損なわれてしまったのだ。
観測施設とはいえ、どこまでこのような施設が必要なのかと、複雑な思いに駆られてしまう。
« クリス・バズビー氏による心臓病増加の警告 | トップページ | これが音更川の堤防洗掘現場だ! »
「自然・文化」カテゴリの記事
- 晩夏の浮島湿原(2018.08.22)
- 「お盆休み」をなくして融通性のある「夏休み」に(2018.08.13)
- 原野の水仙(2017.05.11)
- 石城謙吉さんの環境問題講演集「自然は誰のものか」(2017.01.29)
- 小学校の卒業式での袴姿に思う(2016.03.19)
コメント