反省なき原発文化人たち
今日届いた週刊金曜日の表紙をみて思わずのけぞってしまった。表紙には「電力会社に群がる原発文化人の罪」として名前が列挙されている。
本文の記事は佐高信氏による「電力会社に群がった原発文化人25人への論告求刑」というものだ。表紙に名前を並べるくらいだから、よほど自信をもってこれらの人たちの名前を挙げたのだろう。と思ったら、やはり名前を挙げた人物にはアンケートを送ったとのこと。アンケートの内容は以下。
Q1.東京電力福島第一原子力発電所の大事故が発生した現在でも、原発は必要だと思いますか。 必要だと思う・必要だと思わない
Q2.項目1でお応えになった理由をお書きください。
ところが、無回答が13人。回答した人の中で、原発が「必要だと思わない」と明言した人はひとりもいない。事故の深刻さもわかっていなければ、まったく反省もしていないということだろう。だから、もう一度佐高氏が名指しした25人をここに掲げておきたい。
浅草キッド、アントニオ猪木、荻野アンナ、大前研一、大宅映子、岡江久美子、勝間和代、北野武、北野大、北村晴男、木場弘子、幸田真音、草野仁、堺屋太一、住田裕子、中畑清、弘兼憲史、藤沢久美、星野仙一、三宅久之、茂木健一郎、森山良子、養老孟司、吉村作治、渡瀬恒彦。
佐高氏は原発に反対してきた故高木仁三郎氏の逸話を紹介している。以下に引用する。
高木の『市民科学者として生きる』(岩波新書)に、ある原子力情報誌の編集長から、三億円を用意してもらったので、エネルギー政策の研究会を主宰してほしいと誘いがあったと書かれている。三億円について、高木は「現在だったら100億円くらいに相当しようか」と注釈をつけているが、猪木の一億円もいまでは何倍かする必要はあるだろう。
ちなみに、アントニオ猪木氏は、原発一時凍結派の候補から150万円で来て欲しいと頼まれてその候補の応援に行くつもりだったのが、推進派のバックにいた電事連から一億円を提示されてそちらに乗り換えたそうだ。やっぱりお金の世界は凄い。こういうお金の裏取引に乗るかどうかで、人間性が知れるというものだ。
さて、佐高氏の指摘した原発文化人については「原発安全神話の宣伝に貢献した原発タレント文化人」 にも書いたが、今回の週刊金曜日には「電力会社が利用した文化人ブラックリスト」としてより多くの文化人の名前を挙げ、どんなことで協力したのかまで簡単に紹介している。佐高氏が「創」5・6月号で挙げたC.W.ニコル氏については、「TEPCOのECO対談に登場」となっている。「電力会社は自身のイメージ向上を図ることで原発の危険性を中和してきた。電力会社がカネを文化人に出すのは利益追求のために利用できるからでしかない」という編集部による説明も掲載されている(18ページ)。
私はC.W.ニコル氏については前述の記事から名前を削除した。確かに電力会社側は利用するという意図のもとに対談を依頼したのだろう。しかし、電力会社の主催する対談に出たというだけで原発文化人と決めつけてしまうのは乱暴だと思う。これは御用学者の線引きが難しいのと同じだ。本人が原発を是認しておらず、対談でも支持する発言をしていない以上、原発文化人という烙印を押すのはやりすぎではなかろうか。
北海道電力は「ほくでんファミリーコンサート」という無料コンサートをしょっちゅう開催している。これなども音楽家を利用した宣伝だ。しかし、それに出演した人たちまで原発文化人として批判できるだろうか? 私は電力会社が、講演会やコンサートなどの費用まで電気代に上乗せさせていることのほうがよほど腹立たしく思う。市民は電力会社を選ぶことはできないし、電気代だって勝手に決められているのだ。電気代などは公共料金といってもよく、そもそも電力会社がイベントを企画したり宣伝にお金をかける必要などないはずだ。
前述の高木仁三郎氏の逸話ではないが、やましいことをしている企業ほど、有名人を広告塔として利用したり、批判する人たちを懐柔することに長けている。著名人は安易に企業からの企画に乗ってしまうべきではないだろう。ましてジャーナリストや評論家などが広告に出るなど論外だと思う。
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