放射線の情報隠蔽はいい加減にしてほしい
福島第一原子力発電所の事故では、海外のメディアは放射能の拡散予測を早くから公開してきた。ところが事故を起こした当事国の日本はどうだろう。
日本の場合、SPEEDI(スピーディ)というシステムがある。以下にSPEEDIについての説明があるのだが、「原子力施設で事故が発生し、放射性物質が放出された場合、周辺環境にどのように広がるかを地形や気象を考慮し、すばやく予測するコンピュータシステムです」となっている。
http://www.atom-fukushima.or.jp/qa/qa-174/anther.shtml
つまり、放射能が放出される可能性がある場合にそれを予測して対策をとるのが目的だ。このようなシステムを持っていたのに、その計測結果が公開されたのは何と事故から12日も経った23日だった。この日の発表によると、福島第一原発から30キロ圏外でも甲状腺の被ばく線量が100ミリシーベルトを超えるところもあったという。こんな後になってから公表したのでは、予測システムの意味がない。枝野長官は「人体に影響が出る可能性がある」としながら、「念のため、発電所の風下ではできるだけ窓を閉めて屋内にとどまることを勧める」と述べたという。この期に及んで、避難させずに屋内に留まれとはどういうことなのだろう。
上記のサイトからリンクしている環境防災Nネット(全国の放射線データを表示するページ)を見たら、なんと福島県のデータは「調整中」となっていて示されていない。「現在、宮城県モニタリング結果は測定実施場所が崩壊の危険性があるため測定不能、また、福島県モニタリング結果はモニタリングポスト周辺の空間線量が高いことから測定が困難になっています」という説明がある。もっとも肝心な地域のデータが公表されていないのだ。おかしいとしかいいようがない。
情報隠蔽については植草一秀氏も指摘している。
広河隆一さんらの報告でも、すでに汚染がかなり広まっているのは明らかだ。ところが、原子力資料情報室でレクチャーをされている崎山比早子さん(元放射線医学総合研究所主任研究官)の昨夜(3月24日)の話しによると、福島県ではいまだにヨウ素剤を配っていないという。ヨウ素剤は放射性ヨウ素による甲状腺がんを防止するための唯一の薬品で、放射線ヨウ素に被爆する前に飲まなければほとんど効果がない。原子力発電所のある自治体は備蓄しているはずなのだが、それが住民に配られていないという。フランスやドイツなどでは原子力発電所の近くの住民にヨウ素剤を配布しているというが、日本では必要なときに行政が配布しないのだ。テレビでは「ヨウ素剤は副作用があって危険」だという誤った説明をしている御用学者もいるそうだ。信じがたい事態だ。
汚染が確実に広まっており基準値を超えているところもあるのに、情報も公開しなければヨウ素剤も配布しない国というのは、一体なにを考えているのだろう。
広河隆一さんのブログを紹介しておく。23日の広河さんと広瀬隆さんの講演が見られる。広河さんは汚染の状況を報告しているし、広瀬さんは御用学者の実名も出して批判している。
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