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2011年2月20日 (日)

基本高水とは何か?ダム反対とはどういうことか?

 ダム問題を追及しているジャーナリストのまさのあつこさんの以下のブログ記事をご一読いただきたい。

中身以前 

 利根川の基本高水が過大であったという指摘を受けて、国交省は日本学術会議に利根川の基本高水流量の学術的評価を依頼している。どうやら基本高水流量なるものについて研究者のお墨付きを得ようという策略らしい。誰も知らないところで議論されていて、二回目からは発言者も非公開だという。もしお墨付きが得られなくても、結論を託しているわけではないので、「意見は聞いた」ということですり替えができる。パブリックコメントをして「皆さんの意見を聞きました」といって、事業を推進するやり方とたいして変わらない。

 しかも、河川局は自分たちがはじき出した基本高水流量について「資料が確認できないのでお答えできない」といい、さらに「資料はあるが、プロセスが説明できない」と言っているそうだ。

 これは何を意味するのだろうか。「都合が悪いから出せない」ということに他ならないだろう。私は、まさのさんのこの記事を読んで大規模林道(緑資源幹線林道)の費用対効果のことを思い出した。林野庁の出した費用対効果の数値は、巨額の工事費をかけてもそれ以上の効果がある、つまり費用対効果の数値が1.0以上になるように辻褄合わせをしたとしか考えられないものだった。そして林野庁は、その数値をはじき出したプロセスに関わる資料は「廃棄した」といって逃げたのである。

 河川局が、基本高水をはじき出すための資料もプロセスも開示できないということは、「都合が悪いから出せない」ということに違いない。つまり、利権にまみれ、ダム建設や河川改修という大型土木工事をしたい人たちが、意図的に数字操作をしてつくり出したものだという証だ。

 絶対的に正しい基本高水流量などというのは存在しない。流域の森林もずっと一定の状態ではないし、保水量も降雨量も時代とともに変化する。雨の降り方のパターンを意図的に操作することで、高水流量の数値はいくらでも変えられるのだ。ダムが造りたければ、基本高水流量の数値を操作すればいいのだ。そうやってひねり出された数値だから「プロセスが説明できない」のだ。そんな高水流量を、日本学術会議のメンバーの方たちはどうやって検証するのだろう? どうやって「正しい高水流量」なるものを出すのだろう? そもそも基本高水流量の正しさの検証をすることに、どれほどの意味があるのだろうか。日本学術会議の人たちも、高水流量の罠に巻き込まれてしまった感がある。

 さて、「厚幌ダムで見えた治水方針の誤り」 にも書いたように、北海道の厚幌ダムは地域代表者会議なるもので推進の方向が打ち出された。ここでは、この根拠不明な高水流量によって「ダムによる治水」と「ダム以外の治水(代替案)」が検討されている。以下が、検討資料だ。

治水対策案の評価

 ここで検討されている代替案なるものも、根拠不明で過大としか考えられない高水流量をもとにひねり出されたものだ。代替案にした場合、ダムと比較して工事費は高く、工期も長くなるというのだが、代替案それ自体も大げさなものであり正当性を欠く。道民はどちらの案も根拠不明の過大な高水流量に基づいていることに気付かなければならない。

 もしダムを建設したなら、それで治水対策は終わるのだろうか? そんなことはないだろう。ダムの上流ではある程度の治水効果があるとしても、下流の治水には役立たない。十勝川の事例でも明らかなように、結局はまた根拠不明の計画高水を持ち出し「治水」を謳って河川改修という名の自然破壊を続けることになるだろう。

 高水流量の嘘はすでに暴かれている。ならば、ダムに反対する人たちは、ダム問題の本質に立ち返る必要があるのではなかろうか。

 ダムは河川を分断させ、河川の生態系を著しく破壊する。魚類の往来を妨げ、流量を変化させて河川特有の生物を危機に追いやっている。土砂の流下を妨げて堆砂問題を引き起こし、堆砂を流した黒部川では漁業被害を招いた。ダムは下流の河床低下や河岸崩壊を引き起こす。海岸線の侵食にも加担して海浜の生態系も破壊する。河川改修の名のもとに行われる河道掘削は魚類の産卵床を破壊するし、河道の直線化や河畔林の伐採は下流部の内水氾濫と流木被害を増大させる。堤防で川を取り囲んでしまうと、氾濫したときに水を引きにくくさせる(この点において霞堤は優れている)。欧米ではこうした治水の誤りをとっくに認めて方向転換している。

 そればかりではない。たとえば八ッ場ダムの上流にある品木ダムの湖畔では猛毒のヒ素を含む中和生成物が山となって不法投棄されているし、品木ダムにも沈殿している。上流の火山が噴火して大規模な火砕流や泥流が発生したなら、あるいは大地震が起こったなら、品木ダムや八ッ場ダムなどひとたまりもなく決壊するだろう。下流域への洪水被害のみならず、ヒ素が東京湾にまで流れ下って取り返しのつかない大災害を発生さえる可能性もあるのだ。そうでなくても、東電の送水管から酸性水がダムに放水されたなら(この酸性水を入れなければ八ッ場ダムには水が溜まらない)、ダムのコンクリートは劣化して崩壊の危機にさらされる。これについては高杉晋吾氏の著書「谷間の虚構」について紹介した以下の記事を読んでいただきたい。

八ッ場ダムの真相に迫る「谷間の虚構」(その1) 

八ッ場ダムの真相に迫る「谷間の虚構」(その2)

八ッ場ダムの真相に迫る「谷間の虚構」(その3)

 自然破壊と災害を生じさせるダムはもういらない。活火山があちこちにあり、地震の多い日本はダム災害の危険性が高いのだ。

 高水流量の嘘を暴かれた国交省は、日本学術会議まで使い「高水流量」の正当化に必死になっている。だからこそ、「正しい高水流量」なる罠に巻き込まれてはならない。国の示す代替案も安易に認めたり評価すべきではない。

【追記】この記事を書いたあと、日本学術会議について以下の記事を書いたので参照していただきたい。
基本高水の検討を依頼された日本学術会議の正体

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