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2011年2月11日 (金)

冤罪を救うアメリカの無実プロジェクトの活動

 昨日はNHKの「BS世界のドキュメンタリー」で、アメリカの「無実プロジェクト」の活動を取り上げていた。アメリカではなんと過去38年で二百数十人が冤罪だと分かり、そのうちの130人もが死刑囚だったという。こうした冤罪の被害者を救い出すために活動しているのが、ロースクールの教授や学生などでつくっている「無実プロジェクト」だ。

 ウィスコンシン大学の無実プロジェクトに送られてきた冤罪を訴える手紙は、なんと6000通もあるという。そのすべてが本当に冤罪であるかどうかは分からないにしても、驚くべき数字であり、問題の深さがわかる。ところが、こうした冤罪を訴える人たちのうち、殺人と強姦事件で遺伝子鑑定が可能なものしか冤罪を勝ち取れないという。一度、裁判で有罪とされてしまったら、冤罪を勝ち取るのはきわめて狭き門なのだ。

 番組では、強盗と殺人未遂で懲役80年の判決を受けたバンデンバーグさんが無実を訴え続け、無実プロジェクトの活動によって14年目に釈放されたという事例が紹介されていた。懲役80年だから、終身刑と同じだ。このような判決を受けた当初、バンデンバーグさんは心身に異常をきたしていたという。当然だろう。

 この事件の場合、被害者の証言をもとに描かれた似顔絵が、バンデンバーグさんの写真に似ていると被害者が証言したことが犯人とする決め手になった。しかし、被害者は事件当時泥酔しており、実際には犯人の顔をよく覚えていなかったことが無実プロジェクトの調査によって明らかにされた。

 その後、バンデンバーグさんはアリバイがあることも分かった。また、判決を下した陪審員の一人がインタビューに応じていたのだが、犯人とバンデンバーグさんは身長が異なっていて疑問に思ったが、被害者の証言を信じてしまったと語っていた。あいまいな記憶のままバンデンバーグさんを犯人だと証言した被害者は、インタビューを求めても「ノーコメント」といって応じなかった。検察の強引な取り調べと、陪審員という市民が冤罪を作り出しているのだ。

 紹介されていたもう一つの事例は、無実プロジェクトで最初に冤罪が証明されたオチョアさんだ。彼は取り調べで「自白すれば死刑にはならない」と脅され、嘘の自白をしてしまったのだ。服役中に無実プロジェクトに無実を訴え、DNA鑑定によって犯人とは別人であることが証明された。その後、オチョアさんは弁護士になり、冤罪をつくりだす捜査の問題点を訴えている。

 番組で紹介された冤罪被害者はごくわずかだが、今も無実の罪をきせられた冤罪被害者が多数服役しているのだ。それどころか、無実でありながら死刑が執行されてしまった人すらいる。こうした事実には背筋が凍りつくが、日本でも同じことが行われている。

 不十分な捜査や自白強要で冤罪が生み出される構図は、日本とて何も変わらない。袴田事件など、多くの人が冤罪を主張しているのに、いまだに無実が晴れていない。何十年も拘束され身も心もボロボロにされる。これほど凄まじい人権侵害もないだろう。今も多くの冤罪被害者が、外界と遮断された塀の中で拘束されているのが現実であり、私たちはそのことを忘れてはならない。

 NHKが海外の事例を取り上げるのはいいのだが、自国の同じ問題についてはどう考えているのだろうか。公共放送というのであれば、自国の問題も積極的に取り上げるべきだろう。そして、いつも思うのだが、このようなドキュメンタリーはたいてい夜の遅い時間だ。わざと遅い時間にして視聴率を下げているようにすら感じられる。

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