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2011年1月 9日 (日)

アドバイザーの責任

 近年では開発行為などを行う際に、環境アセスメントが行われることが一般的になった。都道府県や政令指定都市などでは条例によって環境アセスメントを義務付けており、事業規模が大きければ事業者はアセスメントを行わなければならない。しかし、条例の定めに該当しないような小規模な事業でも、環境調査を行うことは多い。普通はいわゆるコンサルタント会社が請け負うのである。

 もっとも、日本の環境アセスメントというのは事業を行うことが前提であり、アセス調査によって事業が中止されることなどまずない。絶滅危惧種や希少種の生息が確認されても、事業による影響を極力少なくするというのが基本だ。

 ところで、自然保護の観点から事業にクレームをつけると、しばしば「有識者から意見を聞いた」という説明がある。いわゆるアドバイザーであり、動植物の専門家なる人物がその役を引き受けているらしい。

 たとえば、北海道電力が富村ダムの堆砂除去のために、湖畔に通じるトンネルを掘っている。この場所は十勝川上流部原生自然環境保全地域のすぐ近くであり、絶滅危惧種の猛禽類なども生息しているところだ。環境庁(当時)は富村ダムの建設にあたっては、自然破壊となる取り付け道路の開削は許可しなかった。だから、ダムの堤体に行くにもトンネルを通っていくようになっているし、ダム湖の湖岸にも道路はない。仕方がないので、堆砂除去のためにトンネルを掘るというのである。

 十勝自然保護協会はもちろん反対をした。希少な動植物の生息地であるばかりか、そもそも堆砂除去が必須とは思えないからだ。ところが、アドバイザーはあくまでも動植物への影響を極力回避する提案をすることでゴーサインを出してしまうのだ。たとえば、希少な植物は移植である。猛禽類は、工事や堆砂運搬にあたって繁殖期を避けるように指導したり、騒音や振動の少ない機械を使うよう求めるのである。こうした配慮をさせることが、アドバイザーの任務だ。

 「美蔓貯水池の欺瞞(16)シマフクロウ報道で北海道新聞にエール」にも書いた美蔓貯水池の工事もそうだ。電柱にシマフクロウ用と思われる止まり木をつけるよう指導したのはアドバイザーであろう。そうやってゴーサインを出しているのだ。

 しかし、考えてみてほしい。美蔓貯水池に関してはそもそもその必要性、あるいは費用対効果に大きな疑問がある。「とかち・市民『環境交流会』の発表を聞いて」に書いたように、水は足りているという農家もあるし、受益地の半分は牧草地なのだ。そして、酪農家が使いたいのは牛の飲み水や機械の洗浄、あるいは農薬の希釈のための水だという。これはかんがい用水ではない。こういう事業のために、絶滅危惧種や希少種の生息地で大掛かりな工事をするということの問題を考えなければならない。ところが、アドバイザーにはそういう視点はないらしい。彼らは、問題の本質に目をつぶり、事業者に環境への配慮をさせることしか目を向けようとしない。

 業界関係者から聞いたことなのだが、アドバイザーは公共事業の発注者からではなく、コンサルタント会社から依頼されているという。そして、コンサルタントの社員が車でアドバイザーを現地に案内し、「先生」とたてまつってお伺いをたてるのである。アドバイザーの謝礼は仕事のわりに驚くほど高額なのだそうだ。事業そのものを否定するようなアドバイスはできないだろうし、一度やったらそう簡単にやめられないだろう。逆に言うなら、無駄な公共事業に手を貸すようなことをしたくない人は、アドバイザーなど引き受けないはずだ。

 電柱にシマフクロウの止まり木をつけるようアドバイスしたということは、その地域にシマフクロウが生息しているか、あるいはその時点では生息が確認できていなくてもシマフクロウが来る可能性があると判断したということだ。このアドバイザーに、美蔓貯水池の必要性や費用対効果のことについて問うてみたいものだ。

 公の場では、「自然保護が大事だ」「ダムは反対だ」「生物多様性の保全をしなければならない」と言いながら、アドバイザーを引き受けている人物もいる。いかがわしい専門家には注意が必要だとつくづく思う。

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