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2011年1月25日 (火)

経済成長の限界

 前回の記事「ニセ科学と陰謀論」でも取り上げた「日本の科学者」2月号は、巻頭言でも大変興味深いことが書かれていたので紹介したい。

 今回の巻頭言は、早大名誉教授である北村実氏の「持続可能な経済か、それとも縮減か?」だ。以下がその要約。

 M・ワカナゲルらによると、地球の資源供給と汚染物吸収に必要な土地面積の指数(エコロジカル・フットプリント)が、1980年代に入る直前より1.0を上回るようになり、1999年には1.2強になったという。20年間で地球の扶養力を20%も上回っていることになる。さらに、デニス・メドウズらもワカナゲルらの結論を追認し、人類の決意次第ではまだ間に合うとの警告を発したそうだ。経済成長の限界である。

 こうした状況に対し、環境経済学者のハーマン・デイリーは、「成長なき経済」を提唱した。経済の量的拡大(増大)は不可能だが、質的改善としての発展は可能だというものだ。一方、経済哲学者のセルジュ・ラトウシュは、「経済の規模を徐々に縮小させ、本当に必要な消費にとどめることが真の豊かさにつながる」とし、発展を否定した退行主義だという批判を浴びた。私は持続可能な経済の現実的可能性を追求する、デイリーを評価したい。

 人類はもはや地球の扶養力を超えて食糧や燃料などの資源を食いつぶしており、人間の排出する温室効果ガスや有害物質は、地球の浄化作用を超えている。世界的に生じている異常気象などが、それを証明しつつある。このままの状態を続けていたなら、人類は破局への道を歩むしかないだろう。破局を免れるには、もはや経済成長を続けるという選択肢はない。とにかく早急な対策が必要だ。

 われわれは、デイリーのいうように経済の質的改善としての発展を維持しつつ量的拡大を止める路線をとるべきなのか、あるいはラトウシュのいうように経済を縮小させるべきなのだろうか?

 私は二者択一で考えることではないように思う。まず先進国は量的な経済成長を止める。戦争のような無駄な争いや消費、環境破壊は一刻も早くやめねばならないだろう。それと同時に徐々に人口を減らして経済活動全体を縮小させるような政策も必要だと思う。食糧の確保にしても、燃料の確保にしても、今の人口は地球が無理なく賄える規模を超えている。

 事態の深刻度から考えるなら、今は経済の質的改善に大きな力を注いている場合ではないのではなかろうか。少なくとも、十分な利便性を享受し贅沢な暮しをしている先進国の一部の人たちは、生活の質の低下もやむを得ないと思う。そして、ラトウシュの提唱する「本当に必要な消費にとどめる」という精神は、やはり生物の本質なのではないかとも思う。人間ほどお金と物に固執する生物はいない。その欲が膨れ上がれば、かならずしっぺ返しを受ける。だから、質素な生活をすることが退行だとは思わない。しかし、人の好奇心はつきないし、人類の暴走を止めるためにも科学の発展は必要だろう。

 それにしても、たった20年の間に私たち人類は地球の扶養力を20%も上回る活動をしていたというのが事実なら衝撃だ。今はさらに深刻な状態になっているはずだ。エコロジカル・フットプリントが1.0に近かった1980年という時代を振り返ってみたなら、日本の国民の大半は、中流意識のもとにそれほど貧困とはいえない生活を送っていたのではなかろうか。たとえ古くて狭い借家住まいであっても、住む場所を失うようなことはほとんどなかった。ところが、今は失業などによって路頭に迷う人が後を絶たず、1980年頃より苦しい生活を強いられている人だって少なくないだろう。

 多くの人が携帯電話だのパソコンだのといった便利な機器を持つようになったが、庶民の生活が経済成長に比例して豊かになったとは思えない。むしろ貧困層が増え、自殺者が増え、心を病む人が増え、無縁社会が広がった。いくら経済成長したところで、労働者は搾取されつづけ、環境は破壊され、人類は危機に立たされているのだ。経済成長によって誰が潤ったのか、得られた富はどこへ行ったのか・・・。大量のゴミを発生させた大量生産、大量消費とは何だったのか・・・。私たちひとりひとりが本当に必要な消費にとどめていたなら、こんな大変な状況にまでならなかっただろう。

 こんな危機が迫っているのに、政府はまだ事の重大性を理解していないようだ。地球や人類の将来より、自分の目先の利益の方が大事な人が多いらしい。

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