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2010年11月22日 (月)

企業とは何か-四茂野氏のホロウェイ論を読んで(3)

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強制と自主性-四茂野氏のホロウェイ論を読んで(1) 
組織について考える-四茂野氏のホロウェイ論を読んで(2)

 しばらく間があいてしまいましたが、ホロウェイ論について久しぶりに書きたいと思います。四茂野修氏のホロウェイ論「その6 政権を取れば社会が変わるか」では、大企業が経済活動の中心を担っている社会構造では政権は企業を無視できないことを示し、「国家(政治)を通じて社会を変革するという方法に問題があるという」というホロウェイの指摘を紹介しています。社会構造が資本主義を基盤にし、それを維持することが前提である以上、政府は資本の利益という枠組みから逃れることができません。たとえ革命家が国家権力を握って国家を手中に収めても、民衆を監視して押さえつける抑圧政治と統制経済によって自己崩壊し、資本主義が復活してきたことを歴史は物語っているといいます。

 「その7 自由な社会という幻想」では、「私たちが人生のうちでもっとも充実した時期を会社に雇われ、他人から命令された仕事をして窮屈な思いをして生きなければならないのか」という問いを投げかけています。

 子どもの頃、私はよくこう思ったものです。「なんで、毎日毎日学校に行って、さほど面白いとも思えない授業を我慢して聞かなければならないのか。なんで学校にこんなに長期間にわたって拘束されなければならないのか。それほど知識の豊かな人でなくとも、きちんと働いて生きているではないか」と。そして学校を卒業してからは、「これからは週に1、2日の休日以外は自由な時間が持てなくなるのか」と思うと無性に憂鬱になり、「人生とは何なのか」と考えざるをえませんでした。学校が学びを強制する場であり、職場が「させる力」によって労働者を支配している以上、そこに個人の意思や自主性の入り込む隙間はほとんどありません。人間の心の充足感や安心感は、決して「させる力」から生み出されるものではありません。社会の中の「させる力」が強ければ強いほど、幸福感からは遠のいていきます。

 ヨーロッパの学校では子どもたちに「考える力」をつけることが重視されています。また、労働者は長いバカンスによって十分な休息と自由時間を楽しむことのできる社会です。日本よりはるかに「する力」を重視した社会を構築しているのです。「させる力」を振り回して何とか統制を図ろうという日本のような社会では、個人の尊厳は損なわれストレスが充満するというものです。自殺者の増加もこのような社会と無関係ではないはずです。こういうシステムから明るい未来は見えてきません。

 実は、工場のモデルになっているのが囚人を監視する監獄だったという話を読んで、とても納得しました。これでは、労働者を監視して働かせる企業が労働者にとって快適であるはずがありません。私たちの生活にすっかり浸透してしまった資本主義は、労働者の身体と時間を利用して、余剰利潤を生みだすシステムにほかならないのです。つまり「搾取」です。こういうシステムから人々は真の幸福感を得ることができるのでしょうか? 

 ところで、ホロウェイは、資本主義の主体は資本家ではなく「価値」だと言います。そして「資本家が資本家でありうるのは、資本の忠実な召使であるかぎりにおいてのことなのです。所有権そのものの意義は後景に退いてしまいます。そうなれば、資本はそれ自体で動くダイナミズムをえて、社会の指導層は、単に資本のもっとも忠実な召使、もっとも卑屈な廷臣になるしかありません。それは、資本家だけではなくて、政治家にも、役人にも、大学教授などにも、同じようにあてはまることです」

 ここまで読んで、言わんとしていることの輪郭が明瞭になってきました。人は何に価値を見出すのか、そして何に幸福感を見出すのか。そのことこそ大事なのではないか、と。

 昨年の政権交代のときには鳩山政権に大きな期待が注がれましたが、それも早々に行き詰まり、菅政権は「いったい自公政権とどこが違うのか?」と思うことばかり。四茂野氏やホロウェイの指摘はやはり的を射ているのです。

 利潤を追求し続ける資本主義を基盤にしたシステムでは、人類は幸福な社会を構築することはできそうにありません。政府が大企業を中心とした社会構造を維持しようとし、また人々の価値観が大企業中心の社会構造を是認したものである以上、政権交代によって社会の変革をするのは困難だということでしょう。私たちに求められているのは、企業中心の社会の変革と同時に価値観の変革と言えそうです。

(つづく)

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