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2010年8月18日 (水)

森林生態系保護地域についての意見はどう反映されるのか

 北海道森林管理局が「森林生態系保護地域等の設定案に関する意見募集」を7月30日から行っていました。生物多様性保全の観点から、大雪山と日高の森林生態系保護地域を拡大するという案についての意見募集です。これについては、以下の記事でも触れています。

まやかしの国有林保護地域の拡大案

 今日は意見募集の締め切りの日ということで、以下の意見を送信しました。今回寄せられた意見は、9月に公表されるそうです。そして、同じく9月に「第3回大雪山・日高山脈生態系保護地域等設置委員会」が開催されるとのこと。

 果たして、今回出された意見はどの程度反映されるのでしょうか。そして、委員会の委員の方たちは、どんな意見を出されるのでしょうか。

 行政がこのような意見募集をした場合、若干の修正はするものの、基本的なところは変更しないというのが常です。でも、以下に書いたように、この保護地域の設定案というのは基本的なところで矛盾のあるものなのです。それを無視して若干の修正で確定させてしまうのであれば「聞きおくだけ」ということになります。そして、今回の保護地域の拡大案というのは、森林保全に取り組んでいるというポーズを示しただけということになるでしょう。

 出された意見に対し、どのような修正をするのか、あるいはしないのか・・・見守りたいと思います。

               **********

森林生態系保護地域等の設定案への意見

 設定方針の1では「検討の基礎として、既存の森林現況や希少種等の生息・生育情報のみではなく、森林生態系の再評価を試み、希少種等の生息・生育が期待される潜在性(ポテンシャル)が高いと評価される区域を抽出」としています。しかし、「森林生態系保護地域において保存を図るべき生物等に関する事項」で取り上げているのは当該地で生息が確認されている種であり、保護すべき種のことではありません。希少種や絶滅危惧種など保護の対象とすべき生物の種名を決めて検討しなければ意味がありません。

 たとえば鳥類であれば、キンメフクロウ、シマフクロウ、ミユビゲラ、クマゲラ、クマタカなどが絶滅危惧種や保護を要する種として挙げられます。しかし、キンメフクロウやミユビゲラの生息地である北方針葉樹林の大半が対象外です。また、シマフクロウが繁殖するためには樹洞のできる広葉樹の大径木の存在が必要ですが、そのような樹木のある森林はほとんど含まれていません。クマタカの生息する森林帯もほとんど対象になっていません。

 ナキウサギも保護を図るべき希少な動物ですが、ナキウサギの生息地となっている然別湖周辺の森林は保護地域になっていません。大雪山の周辺には低標高の山地にもナキウサギ生息地が点在していますが、そのようなところは伐採などによってしばしば破壊されてきました。低標高地のナキウサギ生息地についてまったく配慮されていないゾーニングです。

 鳥類やほ乳類に限らず、その他の動物群や植物も含め、保護の対象とする希少種等の種名を明確にし、種ごとに生息・生育が期待される潜在性の高い区域を示して検討する必要があります。

 今回の指定地域の大半は、森林限界より上のハイマツ帯や樹木のない高山帯と、ダケカンバ帯です。高山帯は伐採の対象となる樹木がありませんし、その多くが国立公園の特別保護地区などに指定されており、森林の保護区として設定するまでもないところです。また、その下部のダケカンバ帯もこれまでほとんど伐採が行われてこなかったところです。すなわち、もともと伐採対象になっていないところ、あるいは急峻な伐採困難地を中心として設定されています。大雪山国立公園を特徴づける森林はエゾマツやアカエゾマツ、トドマツなどから構成される針葉樹林です。さらにその下部には針広混交林が広がっています。これらの森林を広く保護地域の対象にしないのであれば、森林生態系の保護にはなりません。

 「針葉樹林や広葉樹林等多様な森林生態系を包括的に保護できるように設定」と書かれていますが、針葉樹林や広葉樹林はほとんど含まれておらず、文章による説明と指定区域の実態が一致していません。このような矛盾した設定案は、基本的なところから見直す必要があります。

 保存地区は「伐採が行われた記録のない原生的な森林に設定する」、また保全利用地区は「保存地区と同質の天然林を対象に、また保存地区を取り囲むよう設定する」とのことですが、大雪山国立公園の森林の大半は過度の伐採により原生的な森林が失われてしまいました。それに伴って生物多様性も失われてしまいました。失われた生物多様性を回復させるために今後取り組まねばならないのは、過去の乱伐を反省し、かつての原生的な針葉樹林や針交混交林を甦らせることです。今回の拡大案は、そのような視点がまったくありません。

 本来、国立公園や国定公園では生態系の保全が最優先されるべきであり、伐採をすること自体が不適切です。国立公園や国定公園での伐採の是非から見直すことが必要です。

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