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2010年8月30日 (月)

トムラ三原則を反故にしてトンネル工事を強行した北海道電力

トムラ三原則の反故

 昨日は、十勝川の上流部にある富村ダムで行われている、堆砂処理用のトンネル掘削工事現場の視察に行きました。富村ダムは北海道電力の水力発電用のダムで、昭和53年から運転を開始しています。富村発電所は最大出力は4万キロワットと、貯水量の割に出力が大きい方です。

 このダムは平成20年現在で総貯水容量内の堆砂が57%、有効容量内の堆砂が41%に達したため、堆砂の除去が必要となったといいます。しかし、ダム湖周辺は急峻な地形で、トラックなどを出入りさせるための取り付け道路が造れませんし、自然環境の保全の観点から取り付け道路は造らないという約束のもとに環境庁(当時)が許可を出したという経緯があります。このために堤体を造る時にもトンネルを掘ったのです。下の写真は堤体に行くトンネルの入り口です。

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 地表を改変して取り付け道路を付けることができないため、隣の沢から貯水池までトンネルを掘って土砂を運び出すというわけです。8月からトンネル工事を始めるというので、自然保護団体が北海道電力に現地説明会を要請していました。その説明会が昨日だったのです。昨日は十勝自然保護協会のほか、北海道自然保護連合や平取ダムの反対にかかわっている方も参加しました。下の写真がトンネルの坑口と掘削機です。

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 実は、このダムを造る際に地区労と北電が「トムラ三原則」という取り決めをしました(これについては「北海道とかちトムラ三原則」参照)。トムラ三原則とは、1.事業計画の段階から、その必要性について、徹底した議論を積み重ねる 2.事業遂行に当たっては、「自然保護と開発の調和」をはかることとする 3.前2項の達成のためには、発想の段階から民主主義の基本に基づき協議を重ね、全ての段階(工事前、工事中、工事後)で対話を重ねる、という三つの約束です。

 今回の堆砂処理については、この三原則にのっとって、平成19年に北海道電力から十勝自然保護協会に対して説明がありました。そこで、十勝自然保護協会は十勝川源流部原生自然環境保全地域のすぐ近くに位置し、希少な動植物などが生息・生育するこの地域で、大掛かりな堆砂処理をすることは自然保護上問題が多いとして、堆砂の除去はしないよう求めてきました。このようなところでトンネル工事をすること自体が問題ですし、堆砂運搬のために国立公園の中を一日に200台ものダンプが往復することになるのです。数分おきダンプが通過することになります。警戒心の強い猛禽類に影響を与えないとは思えません。

 しかし、北海道電力はあくまでも堆砂処理をするといって、この8月に工事を強行しました。これは、「必要性について徹底した議論を積み重ねる」「民主主義の基本に基づき協議を重ね、全ての段階で対話を重ねる」というトムラ三原則を反故にしたということです。

 トムラ三原則の一番目の「必要性」について、徹底的な議論が重ねられたのかといえば、決してそうではありません。北電は堆砂処理の必要な理由として、「堆砂がダムの安定性に影響を与える」「洪水時にダム湖の末端部の水位が上昇し、周囲の森林に悪影響を及ぼすことが懸念される」と説明しています。しかし、ダムは非常に高い安全率(ダムにかかる荷重に対しダムの抵抗力が4倍以上)のもとに設計されているのです。たとえ堆砂面が満水位にまで達しても、それによって決壊するようなことはまずありません。北電のいう「安定性」の意味がまったく分かりません。

 また、洪水時に末端部の水位が上昇すると主張しますが、どれ位の上昇があり、それによってどんな被害が予想されるのでしょうか。これらについて納得できる説明がまったくありません。つまり堆砂除去の必要性は、いまでもよく分かりません。結局、安定した高出力の発電量を保ちたいがための堆砂処理としか思えないのです。今回、現場でトムラ三原則を持ち出して抗議すると「これまで説明してきた」の一点張り。「説明」と「議論」「対話」の違いが理解できていないようです。

秘密主義の北電

 私たちに消費者にとって気になることのひとつは工事費用です。ところがこれは「答えられない」とのこと。年ごとの具体的な堆砂量についても「答えられない」とのことでした。顧客である消費者に工事費用を説明できないのは、なぜなのでしょうか。

 北電は堆砂処理に10年間を予定しているとのことでした。しかし、毎年とってもまた土砂は堆積していきますから、その後も続けなければならないでしょう。半永久的に続けなければならないのが堆砂処理なのです。あちこちのダムで堆砂問題が深刻になってくれば、このような維持コストが永遠に必要になり、やがて電気代に上乗せされるのでしょう。

 自然環境の保全についても、「影響を最小限に抑えるように対策を実施する」と繰り返すばかり。北電は動植物の調査を行っていて絶滅危惧種や希少種なども確認しているのですが、なぜか猛禽類のうちの4種だけを黒塗りにしているのです。わざわざ特定の猛禽類だけを黒塗りにするところをみると、これらの猛禽類への影響を追求されることを恐れているとしか思えません。

 そして、この工事の費用対効果は算出していないとのことでした。とにかく「出力が大きく重要な発電所だから維持していかなければならない」との主張に終始しました。私が考えているように、安定した出力の維持を目的に堆砂処理をするのであれば、費用対効果を算出して検討すべきでしょう。これからは人口も減っていくのです。堆砂によって多少発電量が低下したとして、それほど大きな問題があるとは思えません。「重要な発電所」というだけでは、なんら説得力がありません。

 自然環境の保全を優先すべき国立公園の山奥に、堆砂処理のことも考えずにダムをつくった北電には大きな責任があります。

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