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2010年8月 8日 (日)

平川一臣さんによる講座「川とは何だろうか?」

 一週間ほど前の7月31日に、北海道大学大学院環境科学研究院教授の平川一臣さんによる「川とは何だろうか?」というタイトルの講座があり参加しました。平川さんについては、こちらをご覧ください。ご専門は第四紀学、周氷河地形環境、第四紀地殻変動とのことです。

 タイトルから、川の話しだけと思っていたのですが、北海道の山がどうやって出来のかというプレートテクトニクスに基づく話しから始まりました。後半の日高山系から流れ出ている川について語る前に、その日高山脈やふもとの十勝平野がどうやってできたのかという説明です。とても興味深い話しだったのですが、ここでは割愛させていただきます。

 で、川の問題で具体例をあげて説明されたのが、札内川の支流である戸蔦別川の事例です。この川には1970年代から80年代頃にかけて次々と砂防ダムが造られたとのこと。この頃に山の奥まで林道が造られて伐採が行われたようで、それに合わせるかのように砂防ダムが造られてきたとのことです。一番奥の第8砂防ダムは1991年に完成したものです。また、拓成湖の下流には床固工が15基も造られています。支流のオピリネップ川には、すごい数の砂防ダムが連続しています。

 これらの砂防ダムによって、上流から流れ下ってくる砂礫が止められてしまいました。その結果、下流域では河底にあった礫が流されて河床が低下し、粘土層が露出する状態にまでなってしまいました。戸蔦大橋では河床低下によって橋脚が抉られてきています。また、札内川と戸蔦別川の合流点の中州ではかつて砂利の採取を行っており、これも札内川の河床低下の原因になっていると考えられるそうです。

 河床の低下によって河道の幅が狭まり、かつて砂利川原だったところがヤナギ林になってきているとのこと。私は札内川の様子はよく知らないのですが、すっかり景観が変わってしまったそうです。従来の堤防の位置などから推測すると、数メートルも河床が低下しているそうです。

 もう一カ所、写真を使って紹介したのが渋山川です。ここも上流にダムを造ったことで上流から砂礫が運ばれなくなりました。川底にあった堆積物がすっかり流されてしまい、柔らかい火砕流堆積物が急激に浸食を受けて、見るも無惨に抉れてしまいました。河川管理者はかなり慌てたのでしょう。対策のために32カ所もの床固工を施したのですが、一度このようになってしまうと、もうどうにもならないだろうとのことでした。砂防ダムといい床固工といい、自然を壊し無駄な対策にお金をかけているのです。

 札内川では河床がすっかり低下してしまったのですから、堤防から水が溢れることなどまずないと言います。洪水対策として堤防の整備をする必要などまったくないと、現在の河川行政についてかなり辛辣に批判されていました。この講座には十勝川の河川整備計画に関わっている北海道開発局帯広開発建設部治水課の職員が複数来ていました。十勝川の河川整備計画で堤防の強化や河道の掘削などを打ち出したこの方たちは、この話しをどう捉えたのでしょうか。専門家の話しなのですから、本来なら河川行政に生かすべきなのですが・・・。

 人が自然に手を加えてしまうと、自然はそれに対して黙ってはいません。「河川は“自己制御”することによって、可能な限り効率のよい形(横断面、縦断面)を維持しようとする」と平川さんは言います。戸蔦別川も渋山川も人が川の均衡を崩してしまったことで、河川が自己制御をして河床低下を起こし、それが取り返しのつかない状態にまでなっているということです。

 河川管理者はこうした川のしくみが分かっているといいます。ダムを造れば川がどうなるのか分かっているのです。これまでの事実を踏まえれば、当然そうでしょうね。ところが今でも砂防ダムを造り、床固工を施し、護岸化し・・・という無駄な工事(というかさらに状態を悪化させる工事)をやっているのです。その影には、無駄と知りながら土木工事そのものをしたい人がいるということでしょう。

 この日は実習ということで、地形図に色鉛筆で色をつけたり、砂防ダムや床固工をチェックするなどの作業も少しやったのですが、こういう作業によっていろいろなことが見えてきます。ある川の集水域はどのような範囲なのか、ダムや床固工、堤防、護岸などの人工物がどれ位あるのか、時代とともに川はどのように変わってきたのか・・・。地形学という、一見地味な印象を持つ学問の奥深さを感じ取ることができました。

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