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2010年4月 6日 (火)

銭函海岸の風力発電計画を考える(その6)

 地球温暖化対策として化石燃料から脱却し、クリーンエネルギーを推進する動きが盛んですが、自然エネルギーなら何でもいいということにはなりません。自然を破壊したり健康に悪影響を与える計画であるなら、建設の是非が問われることになります。とりわけ環境や健康に悪影響を与えずに巨大な風車を建設できる場所が少ない日本では、大規模な風力発電は不適切と思えてなりません。近年はイソコモリグモの調査で海岸に出かけることも多く、海岸近くに風車が林立している光景をよく見かけるようになりましたが、必ずといっていいほど停止している風車があります。風車は故障が多いと聞きますが、こんな状態で果たして十分な電力が得られるのかという疑問も抱いてしまいます。

 銭函海岸には、自然度の高い海岸砂丘が残されているのですが、その自然を破壊してまで風車を建設しなければならないのでしょうか? 猛禽類などの衝突被害(バードストライク)、低周波音による健康被害などの問題もクリアできていないのです。自然保護団体と衝突してしまうような計画が、環境問題の切り札になるとは到底思えません。

 「銭函海岸の自然を守る会」が、環境省と経済産業省へ要望書を提出しましたので、以下に掲載します。問題点がよくわかります。

                     **********

                                     2010年3月22日

環境大臣 小沢 鋭仁 様

                                銭函海岸の自然を守る会

                                代表 後藤 言行

                               (事務所:小樽市緑3-2-12)

         北海道小樽市銭函地区の自然海岸を保全するための要望書

 「銭函海岸の自然を守る会」は、手つかずに自然が豊富に残されている銭函砂丘地域をフィールドとして、長年にわたって生物相の調査をおこない、また市民に対して自然観察会を実施しているボランティア団体です。

 この銭函海岸を含む石狩海岸の砂丘地帯は、汀線―砂浜―砂丘地帯―後背湿地―後背自然林がきれいな成帯構造をなしている、きわめて貴重な自然海岸です。とりわけ日本一と評価されている後背の天然カシワ林は『冷温帯地域における海岸林の典型として貴重な存在(北海道)』であり、世界で石狩海岸と下北半島の2ヶ所しか生息が確認されていないキタホウネンエビや、世界最大のスーパーコロニーとして記載(国際自然保護連合=IUCNのレッドデータブック)されているエゾアカヤマアリの生息地です。

 その貴重性は環境省も“植生自然度”を最高の10ランクとしていますし、北海道も「北海道自然環境保全指針(1989年)」で『保全を図るべき自然地域』『すぐれた自然地域:石狩海岸』として選定しています。また「石狩湾沿岸海岸保全基本計画(2003年)」でも、石狩海岸の砂丘植生を『保護対策を考慮すべき植生』として、特に『海岸草原も含めた海岸植生全体としての保全が必要である』と強調しております。さらに、長年にわたって市民ボランティアとともにこの地域の生物相を調査してきた小樽市総合博物館も『本地域には低層湿原、海岸草原、カシワ海岸林という特徴的な生態系が良好に残存していることを示すのに十分なものである(小樽市博物館紀要No21.2008年3月 山本亜生)』と結論付けています。

 銭函海岸は、日本国内に残された数少ないすぐれた自然の砂浜海岸の一つとして、私たちが最良の形で次世代に残さなければならない責務を負っている貴重な自然遺産なのです。

 その貴重な石狩砂丘地帯の、最も自然が手つかずで残されている銭函4丁目・5丁目(石狩湾新港西端から新川河口まで)の5kmに及ぶ砂丘に、風力発電事業として高さ118.6m・ローター直径83.3m・定格出力2000kwの巨大風車を20基建設する計画が明らかになりました。

 190万都市・札幌市の至近距離に、奇跡のように残された自然砂丘の生態系は、飛砂と海浜植物のせめぎ合いによる脆弱で微妙な動的バランスの上に成り立っています。ここに巨大風車を建設する工事は、生態系に回復不能な取り返しのつかない破壊を与えるものであることは必定です。

 植物や昆虫ばかりではありません。それらを餌とする食物連鎖系のさらに上位に位置する野鳥などの野生動物にとっても、この地域は生息・繁殖の場として重要な場所です。 財団法人日本野鳥の会および日本野鳥の会小樽支部などの調査等によれば、次のことが懸念されています。

①シマアオジやアカモズなどの稀少草原性鳥類の生息を阻害するおそれ

②オジロワシやハヤブサなどの猛禽類が衝突死するおそれ

③コロニーをつくるショウドウツバメの繁殖に悪影響を及ぼすおそれ

④シギ・チドリ類や大型ツグミ類の渡りに悪影響を及ぼすおそれ

 また、日本鳥学会において、風車建設後、周辺の鳥類の種数や生息密度が減少したという研究結果も発表されています。

 今年10月には、名古屋市で“生物多様性条約締約国会議”が開催され、日本はその議長国を務めることになります。

 かつて砂丘や湿地、干潟などは『生産性の低い不毛の地』として、開発の名の下に変改され続けてきました。しかし、今や多くの人々にその誤りが認識されて、破壊したときの何倍ものエネルギーをかけて回復の手立てがとられはじめています。銭函海岸で同じ轍を踏むことは許されませんし、破壊された砂丘は回復できる保証すらありません。

 大都市に隣接する自然豊かな海岸は、海水浴シーズンを中心に利用する人も多く、今では希少価値となってしまった『本来のあるべき自然砂浜海岸の姿』を体験できる、貴重な環境教育の場ともなっています。

 人類の持続的発展の基本条件である生物多様性の保持のためにも、この貴重な砂丘生態系を破壊することは許されないことです。

 さらに、巨大風車の出現とともに、風車が生み出す騒音、超低周波空気振動に代表される深刻な健康被害の問題が生じています。

 この健康被害は日本においても外国においてもたくさんの被害の実態が報告され、広がりと深さをもった社会問題として認識され始めています。「公害等調整委員会」への「健康被害原因裁定」も申請されております。しかし周期的な超低周波空気振動に長時間さらされるという経験自体が、人類の歴史にとって初めてのものであるため、既知の事実からの類推などが先行して被害に苦しんでいる人たちへの対応が遅れているのが実情です。

 環境省はこの4月から被害の調査に乗り出すことを決定しましたが、人体に対する影響ばかりでなく「物言わぬ野生生物」に対する被害の調査・解明をも望むものです。 以上のことから次の項目について要請し、回答を求めます。

 なお、回答につきましては、「銭函海岸の自然を守る会」の事務所あてに4月9日までに文書でお答えくださるようお願いします。

                          記

1 脆弱で微妙なバランスの上に立つ砂浜海岸の生態系は、存在しているだけでも貴重なものです。ましてや手つかずの自然が残っていることは、現在では稀有な存在です。この貴重な砂丘を風車の建設や機材運搬の道路建設によって破壊しないでください。

2 生物多様性条約締約国会議の議長国としての責任から、ただちに銭函海岸での風力発電事業計画中止の勧告を行ってください。また、生物多様性国家戦略に基づいてこの地域を自然環境保全地域に指定するなど、有効な保護の対策をとってください。

                    **********

                                     2010年3月31日

経済産業大臣 直嶋 正行 様

                                銭函海岸の自然を守る会

                                代表 後藤 言行

                                (事務所:小樽市緑3‐2‐12)

      北海道小樽市・銭函地区の自然海岸を保全するための要望書

1.「銭函海岸の自然を守る会」は、手つかずの自然が豊富に残されているこの銭函砂丘地域で、長年にわたって生物相の調査をおこない、また市民に対して自然観察会を実施しているボランティア団体です。

 この銭函海岸を含む石狩浜の砂丘地帯は、汀線―砂浜―砂丘地帯―後背湿地―後背自然林がきれいな成帯構造をなしており、本来のあるべき自然砂浜海岸の姿をとどめた数少ない地域です。とりわけ日本一と評価されている後背の天然カシワ林は『冷温帯地域における海岸林の典型として貴重な存在(北海道)』であり、世界で石狩海岸と下北半島の2ヶ所しか生息が確認されていないキタホウネンエビや、世界最大のスーパーコロニーとして記載(国際自然保護連合=IUCNのレッドデータブック)されているエゾアカヤマアリの生息地です。

 その貴重性は環境省も“植生自然度”を高く評価していますし、北海道も「北海道自然環境保全指針(1989年)」で『保全を図るべき自然地域』『すぐれた自然地域:石狩海岸』として選定しています。また「石狩湾沿岸海岸保全基本計画(2003年)」でも、石狩海岸の砂丘植生を『保護対策を考慮すべき植生』として、特に『海岸草原も含めた海岸植生全体としての保全が必要である』と強調しております。

 その貴重な石狩砂丘地帯の、最も自然が手つかずで残されている銭函4丁目・5丁目(石狩湾新港西端から新川河口まで)の5kmに及ぶ砂丘に、風力発電事業として高さ118.6m・ローター直径83.3m・定格出力2000kwの巨大風車を20基建設する計画が明らかになりました。 190万都市・札幌市の至近距離に、奇跡のように残された自然砂丘の生態系は、飛砂と海浜植物のせめぎ合いによる脆弱で微妙な動的バランスの上に成り立っています。ここに巨大風車を建設する工事は、植物ばかりでなく昆虫や食物連鎖系の上位に位置する野鳥や野生動物のすべてを含む生態系に、回復不能な取り返しのつかない破壊を与えます。

 かつて砂丘や湿地、干潟などは『生産性の低い不毛の地』として開発の名のもとに変改され続けてきました。しかし、今や多くの人々にその誤りが認識されて、破壊した時の何倍ものエネルギーをかけて回復の手立てがとられはじめています。銭函海岸で同じ轍を踏むことは許されませんし、破壊された砂丘は回復できる保証すらありません。

 今年の10月には名古屋市で“生物多様性条約締約国会議”が開催され、日本はその議長国を務めることになります。人類の持続的発展の基本条件である生物多様性の保持のためにも、この貴重な砂丘生態系を破壊することは許されないことです。

2.風力発電のための巨大風車の出現とともに、風車が作り出す騒音や低周波音、超低周波空気振動に代表される深刻な健康被害の問題が生じています。特に超低周波空気振動は透過性(回折性)が高いため、数キロメートルも離れた所での被害を訴える人もいます。日本においても外国においてもたくさんの被害の実態が報告され、今や広がりと深さをもった社会問題として認識され始めています。「公害等調整委員会」への「健康被害原因裁定」も申請されておりますが、周期的な超低周波空気振動に長時間さらされるという経験自体が、人類の歴史にとって初めてのものであるため、被害に苦しんでいる人たちへの対応が遅れているのが実情です。

3.銭函風力発電の事業者である日本風力開発株式会社(東京都・子会社は銭函風力開発)は昨年5月に一般社団法人・新エネルギー導入促進協議会(NEPC)に補助金の申請書を提出しました。申請書には「地元調整」として住民説明会の議事録をつけなければならないことが、NEPCの公募要領にうたってありますが、日本風力開発株式会社は風車建設による影響が最も大きいと思われる地域、すなわち札幌市手稲区山口・曙・新川地区と小樽市銭函2・3丁目地区、石狩市樽川・花畔地区での住民に対する説明会を開いておりません。

 このような事業者のやり方に対して、札幌市の上田文雄市長は3月17日の定例記者会見で「地元とは風車が設置される自治体とは限らない。健康への影響を受ける札幌市も地元自治体に入る」旨の発言をしております。

 日本風力開発株式会社は住民説明会を開いていないことのほかにも、環境影響評価調査の中間報告書の再三の提出要求に応じない、とか、平気で食言を繰り返す等不誠実な態度をとり続けています。

 不可解なことは、一般社団法人・新エネルギー導入促進協議会は情報の開示要求に対して「事業者の日本風力開発が『株主の不利益になるから』との理由で拒否しているので開示できない」としていることです。このような日本風力開発株式会社の言い分が通って補助金が採択されるのは納得できません。

 以上のことから下記の各項目について要請し、回答を求めます。

 回答につきましては銭函海岸の自然を守る会の事務所あてに4月15日までに文書でお願いします。

                        記

1.補助金の申請・審査・採択の過程が極めて不透明で、関係する住民に開かれたものなっていません。特に地域住民にかかわる書類については情報の開示を徹底し、審査を厳密にしてごまかしを許さず、地域住民の不安や要望に対応できるシステムを作ってください。

2.補助金を受けているにもかかわらず株主の利益を地域住民の健康より上に置き、情報を隠して開示しないような企業を放置せず、補助金の取り消しを含む強い指導を行ってください。

3.一般社団法人・新エネルギー導入促進協議会は、社団法人とは言え国民の財産である補助金の申請受付・交付決定を行う団体です。事業者の情報隠しを助長するような同協議会に対しては、適切な指導力を発揮して監督官庁としての責任を果たしてください。また、外部委託補助金の制度は廃止してください。

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