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2010年3月 4日 (木)

寺澤有さんへのインタビュー(その2)

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寺澤有さんへのインタビュー(その1)

― 「創」(2009年12月号)では、ジャーナリストの浅野健一さんと綿井健陽さんが、弁護団を支持する論調の記事を書いています。彼らの主張について、どのような感想や意見を持たれましたか。

 浅野さんと綿井さんは、進んで福田君にゲラをチェックしてもらい、彼の文章変更を受け入れています。福田君は自分のコメントだけでなく、地の文も変更しています。そこに誤字があっても、そのまま誌面に反映されています。こういう内実を読者が知れば、浅野さんや綿井さんの記事が客観的なものだと思うでしょうか。「自分たちは福田君にゲラをチェックしてもらっている。だから、おまえたちも見習え」と言われても、それは無理です。

― 増田さんとインシデンツは、福田君や福田君の弁護士、毎日新聞社を訴えましたが、裁判を起こした理由を教えてください。

 福田君と安田弁護士たちは、増田さんが福田君に単行本のゲラをチェックさせる約束をしていたと主張していますが、これはウソです。そのウソに基づき、我々が約束を破る、倫理観がない者だと批判しています。さらに、増田さんはフリーライターという身分を隠し、福田君に心を寄せるひとりの女性として近づいたとか、福田君を脅迫して、取材に応じさせたとか、ウソがエスカレートしていきました。人格攻撃がはなはだしいですし、放置していると、また新しい、悪質なウソをつくと予想されたので、名誉毀損で訴えました。

 毎日新聞社は、2009年11月11日付の「光事件実名本 妥当な決定ではあるが」という社説で、広島地裁が福田君側の出版差し止めの仮処分申し立てを却下する決定をしたことについて報道しました。その中で、「当事者(寺澤注・福田君)に知らせることなく出版しようとした行為は、いかにも不意打ち的だ」と増田さんやインシデンツを批判しています。しかし、決定が「債権者(寺澤注・福田君)は、債務者増田が近い将来出版する予定の本件事件に関する単行本に債権者の実名を使用することについては明示の同意をしていたことが認められる」と事実認定しているとおり、「当事者に知らせることなく出版しようとした」などということはありえません。

 そこで、毎日新聞社に対し、堀敏明弁護士を通じて、訂正し、謝罪するよう求めましたが、「『知らせることなく』は、事前確認行為(寺澤注・ゲラをチェックさせること)をしなかったことを受けたもの」として、応じてもらえませんでした。毎日新聞が日々発行される前、いちいち取材相手にゲラをチェックさせているとは思えませんし、そうしないことが「不意打ち的だ」と批判されることでもないと思いますので、へ理屈にもほどがあります。つまり、我々のようなフリーランスは、訂正・謝罪の要求が拒否されたら、泣き寝入りするとなめられているんです。だから、名誉毀損で訴えました。

― 光市事件では被害者遺族である本村さんを支持して死刑を求める方がたくさんいます。その一方で弁護団の活動を高く評価している方もいます。両者が対立しているような構図になっていますが、寺澤さん自身は、光市事件や弁護団の活動についてどのように捉えていますか?

 安田弁護士たちが目的のためにはウソの主張をすることも辞さない人間だというのは、出版差し止め騒動で身をもって体験しています。加えて、非常に傲慢な人間であることも。いわゆる安田支持派は、そういう安田弁護士の裏面を知らないで、「人権派だから」「死刑廃止派だから」と盲目的に支持しているとしか思えません。一方、今回の騒動で安田支持派をやめたという人たちからも、メールなどが来ています。

 安田弁護士本人や安田支持派の人々のありようが、本村洋さんたち被害者遺族の憎悪を増幅し、世間の反発をかい、福田君を死刑へ追いやっていったという事実は否定できません。安田弁護士本人はともかく、安田支持派の人々は、『福田君を殺して何になる』を読んで反省し、死刑回避のため、今からできるベストを尽くしてもらいたいと思います。

― 増田さんにもお聞きしたことですが、タイトルに実名を入れたことで「実名を売り物にしている」との批判があります。これについてはどうお考えでしょうか。

 先の質問でもお答えしましたが、福田君の実名を掲載することが問題になるとは考えていませんでした。10年以上も前から雑誌やインターネットで報じられてきましたし、それを安田弁護士たちも容認してきたんですから。

 『福田君を殺して何になる』というタイトルは、私が原稿を読んで決めました。著者が言いたいことは、こういうことだろうと。『光市母子殺害事件の陥穽(かんせい)』というサブタイトルも私がつけたんですが、世間は福田君を死刑にすれば一件落着と考えているかもしれないが、それは陥穽=落とし穴だという意味です。

 「実名を売り物にしている」という批判は、出版差し止め騒動が起こったからこそ出てきたものです。福田君自身は増田さんと面会したとき、あっさり実名掲載を了承しています。「今さらボクの許可が必要なの?」と逆に質問されたそうです。我々同様、福田君も自分の実名が売り物になるとは全然考えていなかったと思います。

― 今回の仮処分や裁判を巡ってのマスコミ報道について、感想やご意見などがありましたら、お願いいたします。

 新聞やテレビも、死刑判決が言い渡された被告を匿名で報道することは、抵抗があると思います。事件の重大性や社会感情も一因ですが、究極の国家権力の行使ともいえる死刑が、対象者が匿名のまま、執行されかねないという問題です。

 おそらく福田君の死刑判決が確定すれば、新聞やテレビも実名を報道すると思いますが、それでも文言上は少年法違反となります。本来、新聞やテレビも、もっと早期に福田君の実名を報道するべきでしたが、ことなかれ主義でズルズルここまで来てしまいました。その裏返しで、我々のようなフリーランスが福田君の実名を報道すると、いっせいに批判するというのは、かなりみっともない光景だと思います。

― ほかに、多くの皆さんに知ってもらいたいことなどありましたら、お願いいたします。

 『福田君を殺して何になる』は、福田君を死刑にするべきだと考えている人にも、そうではないと考えている人にも、必ず新しい発見があり、再考を促す単行本です。これまでのノンフィクションにありがちな、著者の主義・主張や結論を押しつける傲慢さはなく、平易な文章で表現されています。事実自体はもちろん、それを取材することの重みも感じさせてくれるはずです。20代前半の女性から「ジャーナリストという職業がとてもすばらしいものだと知りました」というメールが来たときは、涙が出そうでした。

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