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2010年2月 1日 (月)

増田美智子さんへのインタビューの感想

 先日、「福田君を殺して何になる」の著者の増田美智子さんへのインタビューを3回に分けて掲載しました。

増田美智子さんへのインタビュー(その1)

増田美智子さんへのインタビュー(その2)

増田美智子さんへのインタビュー(その3)  

そこで、増田さんからお話を伺って感じたことについて書いてみたいと思います。

 まず、増田さんはご自身の考えを率直に表現される、正直で好感が持てる方だという印象を持ちました。「福田君を殺して何になる」でも、取材した事実について包み隠すことなく語っていることからもそれは感じていましたが、実際にコンタクトをとってみてそのことをさらに実感しました。

 増田さんの回答を読んで私がもっとも気になったのは、弁護士が増田さんに抱いた警戒心に関することです。増田さんが弁護士に取材を申し入れた際、弁護士は増田さんに不信感を抱いて警戒したのですが、その警戒に妥当性があるのかという点です。弁護団の警戒心については、当該書籍に引用されている、弁護団長の本田弁護士が増田さんに宛てた以下の手紙で知ることができます。

 「福田君の依頼を受けて、貴方の福田君への面会の申出について、以下のとおり、ご通知します。福田君は、貴方の福田君への面会の申出をお断りします。また、福田君及び弁護団は、今後、貴方からの福田君への手紙を差し出すことも行わないように申入れます。福田君は当職に、福田君へ差し出した貴方の手紙を宅下げしてくれました。それによると、福田君も弁護団も、貴方が報道関係に身を置くことを隠して(「あがり症で、たどたどしく、すぐに顔が赤くなってしまう」そうですが)、福田君へ手紙を差出したことを、極めて不適正で、卑劣なことと考えます。以上のとおり、福田君は、貴方の面会の申出を断っていますし、福田君も弁護団も、今後は貴方が福田君に手紙を差し出すことも行わないように申入れることとし、貴方へのご通知とします」

 増田さんは、福田君が深く反省をしている青年であることを広く知ってもらいたかったのであり、また弁護士に取材することで弁護団の主張も伝えたかったのです。ところが、増田さんが「あがり症」の若い女性で、ライターとしての経験もそれほど多くなかったこともあり、本田弁護士に彼女の意図が伝わらず、逆に警戒をされてしまったのではないかと推測されます。また、本田弁護士は「報道関係に身を置くことを隠して」「福田君は、貴方の面会の申出を断っています」と書いていますが、増田さんはとフリーライターであることを福田君への手紙に書いていましたし、実際には福田君は増田さんの取材を拒否していませんでした。弁護士の手紙には事実と異なることが書かれており、それが本書の出版によって公になってしまいました。そうしたすれ違いやトラブルが、出版差し止めにまで発展してしまったのではないかと思えてなりません。

 弁護団はマスコミによって不当なバッシングにさらされ、多大な迷惑をこうむったのですから、ライターに対して警戒することもわからなくはありません。しかし、たとえば門田隆将氏は「なぜ君は絶望と闘えたのか」(新潮社)の中で福田君との面会内容について書いていますし、森達也氏も「死刑」(朝日出版社)の中で福田君との面会について触れており、お二人とも本に書くことを前提として福田君に面会しています。しかも、門田氏の著書は被害者遺族である本村さんの側に立った内容です。そして、このお二人の著書からは、弁護団から面会を拒否されたという形跡は伺えません。

 ですから、増田さんが拒否されたのはやはり不可解なのです。拒否の理由として考えられるのは、増田さんが門田氏や森氏ほどライターとしての実績がないこと、そして「あがり症」でもある若い女性だということです。もし、このような理由によって不信感を募らせ取材を拒否したのであれば、差別ともいえる不当な扱いだったとしか思えません。増田さんへの対応に関しては、やはり弁護団側に不適切な側面があったとしか思えないのです。

 弁護士とて人間ですし、思い込みなどから不適切な対応をしてしまうこともあるでしょう。そのようなことをとりたてて非難するつもりはありません。謝れば済むことですから。しかし、そうしたことがきっかけとなって、著者や出版社に対して出版差し止めの仮処分の申し立てという重大な手続きが行われたのであれば、やはり行き過ぎた行為だと思えてならないのです。少なくとも、この点について当該弁護士はきちんと説明をし、非があれば認めて謝罪してほしいと思います。

 もうひとつ印象に残ったのは、「実名を売り物にしている」という批判についてです。私自信、実名の入ったタイトルにちょっと意外性は感じましたが、それが「売らんかな」という目的でつけられたとは全く感じませんでした。ですから、弁護団による仮処分で話題になった途端にこのような批判が出てくることに驚きました。

 そもそも出版社にとって書籍というのは不特定多数に向けた表現の場、すなわちメディアであると同時に商品でもあります。出版社は、多くの人に読んでもらいたいということだけではなく、少なくとも元をとれる程度は売れることを目指して企画を立て、著者の言いたいことが一言で伝わるタイトルを考えるのは当然です。タイトルに実名が入っていようがいまいが、関心のある人は買うでしょうし、関心のない人は買わないでしょう。「実名を売り物にしている」という批判は、「少年法違反を理由とした仮処分」がマスコミによって報じられたからこそ、出てきたことなのではないでしょうか。弁護団がこのような形で問題にしなければ、これほどにまで書名が話題になることもなく、「実名を売り物にしている」などという批判自体もあまり出てこなかったのではないかと思えます。

 増田さんも最後に言っているように、この問題については本を読まないまま的外れな批判をしている方がたくさんいます。ぜひ、本を読んで、自分の頭で考えてほしいと思います。

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コメント

出版社が元を取れる程度には本を売りたいが為に法を犯すのはやむを得ないし、関心のある人は買うだろうが関心の無い人はどうせ買わないのだから法を犯してもしょうがないよね。
って仰ってるのかしら?

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