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2010年2月10日 (水)

銭函海岸の風力発電計画を考える(その4)

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銭函海岸の風力発電計画を考える(その3) 

 2月6日に小樽市で開催されたシンポジウム「銭函自然海岸の貴重さと保全の重要性」の報告が、銭函海岸の自然を守る会の後藤言行さんより送られてきました。私は参加できなかったのですが、報告でおおよその内容を知ることができました。多くの方に知っていただきたいと思いますので、転載して紹介します。

           ***************

シンポジウム 「銭函自然海岸の貴重さと保全の重要性」実施報告

                               銭函海岸の自然を守る会

1. 日 時 : 2010年2月6日(土) 14:00~17:00

2.会 場 : 小樽市 生涯学習プラザ (小樽市富岡1-5-1)

3.参加人数: 最多時50名(出入り、延べ人数は不明)

4.発言内容:

(1) 小林英男氏(北海道昆虫同好会、日本鞘翅学会)「石狩湾の海浜地帯における昆虫たち」

 (標本の提示とスライドで) 昆虫などは食草に依拠しており、当然、生活環境の制約を受けるので、海浜性の昆虫は想像以上の多様性に富む。汀線に最も近いハマニンニクが食草であるフルショウヤガからハマナスの花につくカタモンコガネ、カシワ林に生えるニシキギ科につくキバラヘリカメムシまで、多様な環境に対応して狭い範囲にたくさんの種が棲んでいる。また、流木の多い浜にはクワガタの類もいるし、後背湿地にはトンボ類、ミズカマキリ、オオコオイムシやゲンゴロウ類などが棲んでいるが、この中には絶滅危惧種も多い。後背湿地は、全国的に湿地や池沼が減少している中で貴重な位置を占めている。

 これらの多彩な昆虫相は、例えば草原湿地で採集されるゴマシジミの幼虫が湿地に生えるナガボノシロワレモコウを食草としているように、植物相と互いに生育・生活圏を重ね合わせており、ある種だけ、ある環境だけを保全したとしても生存を保障できるものではない。つながり合った自然をまるごと残すことが大切なのである。

(2) 梅木賢俊氏(日本野鳥の会小樽支部)「銭函海岸の野鳥」

 銭函海岸は砂浜が主であるが、北海道の野鳥434種の37.6%にあたる40科163種の野鳥が観察されている。銭函の野鳥を環境別に分けてみてみると  ①海域、河川域(新川、星置川)、新港西端の人工干潟、沼地…11科55種:オジロワシ、オオワシなど絶滅の恐れのある種(絶滅危惧ⅠA類、絶滅危惧ⅠB類、絶滅危惧Ⅱ類、準絶滅危惧及び「種の保存法」に基づく国内希少種)7種。  ②汀線~砂浜…9科39種:シギ・チドリをはじめ野鳥の重要な採餌場。ハヤブサなど絶滅の危惧5種。  ③砂丘草地、後背湿地…17科35種:チュウヒ、アカモズなど絶滅の危惧6種。  ④カシワ林…17科34種:準絶滅危惧、国内希少種のオオタカがいる。  各環境は、種によっては営巣・採餌・休息の場として相互に利用されているが、干潟の生成が貧弱な日本海側において、銭函海岸は旅鳥のシギ・チドリの貴重な採餌・休息地である。

 オーストラリアと行き来しているトウネン、ミユビシギや、銭函で標識放鳥したショウドウツバメがベトナムで確認(日本初記録)されたように、銭函海岸の喪失は日本だけの問題ではなくなる。

(3) 松島肇氏(北大大学院農学研究院) 「銭函海岸は役に立たない荒地か?保全が求められる理由」

 日本各地の砂浜海岸の変遷を古い航空写真(例えば米軍の撮った)と重ねてみると「開発」の名のもとにいかに壊されてきたのかが分かる。日本の代表的な海岸風景である「白砂青松」のクロマツですら植林したものである。そのなかで大都会・札幌の至近距離にありながら、自然砂浜海岸の特徴である成帯構造(汀線~砂浜植物~砂丘植物~後背湿地~後背林)をきれいに残している海岸は、きわめて貴重なものである。

 環境省は植生自然度を1~10のランクに分けるが、最高の10にランク位置づけられる自然草原は、高山帯のお花畑か、ここ銭函海岸で見られるような海岸草原くらいである。

 生物たちと環境が織りなす生態系は複雑に関連しあっており、部分的な環境を残すだけで保全されるものではない。砂丘上にはイソコモリグモのような希少種もいるが、稀少種でない普通の海岸植物へのダメージは砂丘の崩壊・消失を引き起こし、生物多様性や生態系そのものの崩壊へとつながる。食草のハマボウフウの激減が送粉者のキアゲハを減らし、エゾスカシユリのクローンの増大=遺伝子多様性の危機に直結している。

5.ディスカッションとまとめ

 フロアからの発言で「札幌の昆虫」(北海道大学出版会)の著者である木野田君公氏が、銭函4~5丁目地区で採集された希少昆虫種などについて報告した。終了時間が切迫している中でもっと話を聞きたかったし、討論ももっと深めたかったが残念であった。

 質問に応じて昆虫関係のパネリストが変更になった経緯をコーディネーター・後藤言行が説明した。本人や上司の博物館長の意思とは別に「もっと上のほうから」禁止の職務命令が出たとのことである。

 今回は砂浜海岸の生態系に焦点を当てたシンポジウムとなったが、1回だけで終わらせることなく、次回、3回目は「風力発電そのものの光と影」「健康被害」「地質・植物・動物のつながり…リレートーク的に」などをやりたいとアイディアが出されているので、ぜひ実現したいものだと思う。

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