« シー・シェパードの衝突事故をめぐる真相 | トップページ | 「メディアへの出版情報のリリース」の実態 »

2010年1月11日 (月)

自費出版の販売とリスク

 昨今では、作家でも専門家でもジャーナリストでもないごく普通の人が自費出版した本を書店などで販売することが普通になってきました。つまり、自費出版であっても販売サービスを付加している自費出版社が多くなったのです。本を書店で販売するということ自体を否定するつもりはないのですが、自費出版の販売にはリスクが伴うことを十分に認識しなければなりません。なお、ここで言っているのは制作請負・販売委託契約を交わす自費出版(文芸社の場合は流通出版の「売上還元タイプ」に該当)のことであり、著者に印税(著作権使用料)を支払ういわゆる共同出版(文芸社の場合は流通出版の「印税タイプ」に該当。単に自費出版といっている出版社もある)のことではありません。

 本を書店に置いてもらうためには書店や取次のマージン、倉庫での保管費用などのお金がかかります。もし著者が自分で直接本を売ったなら、売上金は100パーセント著者のものになります。ところが出版社に販売を委託した場合は、売上金から販売や保管の費用を差し引かれることになるのです。ですから、著者に入る売上金はそれほど多くはありません。

 気をつけなければならないのは、取次を通じて書店に委託配本されてもほとんど売れずに返品されてしまう場合です。この場合は売上金が入らないだけではなく手数料や保管費用ばかりがかさむことになります。ですから、販売をしても著者は売上金が得られないどころか、持ち出しになってしまうこともありえるのです。販売してもマイナスになってしまうのなら、はじめから流通させない私家本とし、著者が自ら売ったり配ったりしたほうがいいのではないでしょうか。もしマイナスになることはないと説明されたのであれば、注文にしか対応していない(書店には置かれない)か、あるいはそうしたリスク分がはじめから販売費用に含まれていると考えるべきです。

 さらに、書店流通をする場合は少なくとも500部とか1000部程度はつくらなければなりません。ほとんど売れなければ大量の無駄な本をつくることになるのです。大金をつぎこんでつくった本を断裁処分してしまうのはつらいことですし、著者が残部を引き取っても保管場所や処理に困ってしまうでしょう。ですから、売れない可能性が高いのであれば、流通はさせずに著者が自分で捌ける部数だけをつくってもらうほうがいいのです。

 また、自費出版社に販売を委託した場合、実際にどこの書店でいつ何冊販売されたのか確認できればいいのですが、必ずしもそうではありません。文芸社などでは提携書店で売れ残った本を文芸社が自ら買い取っているとされていますが、そうして買い戻された本が販売数としてカウントされているのか、あるいは除外されているのか分かりません。たとえば出版社から「300部売れた」と報告されても、そのすべてが読者に買われたのかどうかはわかりませんし、著者は確認のしようがないのです。買い戻されたものは「実売数」ではありませんから、もしそれまで販売数としてカウントされているとしたなら、まるで騙しであり詐欺的です。販売数に疑問を持たれた方は、出版社に問い合わせてみるといいでしょう。倒産した新風舎を擁護するわけではありませんが、新風舎ではどこの書店でいつ何冊売れたのかというデータを著者に提示していました。

 良心的な自費出版社は契約時にこのような販売のデメリットも説明しますが、著者からお金を儲けることしか考えていない悪質な出版社の場合は、著者のデメリットを説明せず書店販売を勧めるところもあります。アマチュアの本の販売を安易に勧める自費出版社は要注意ということです。

 自費出版を考える際には、アマチュアの本の流通は非常にリスクが大きいことを知っておかなければなりません。内容やジャンルにもよりますが、個人的には自費出版の本の流通はお勧めできません。

« シー・シェパードの衝突事故をめぐる真相 | トップページ | 「メディアへの出版情報のリリース」の実態 »

共同出版・自費出版」カテゴリの記事

コメント

貴方様の記事をもっと前に読んでいれば良かったと後悔をしております。

高額のお金を支払い、文芸社から本を出しましたが、本の仕上がりが雑で、
印税のあまりの少なさに失望しました。

新聞広告に掲載されて、大手だからと思っていたのですが、私の考えが甘かったと反省しきりです。

現在消費者センターに問い合わせ、弁護士に相談することを勧められています。

自分の本を出したいという夢をもっている筆者を踏みにじるような行為は、
許せません。

大勢の人たちが、泣き寝入りをしているはずです。支払ったお金が高額であり、
こういう商法が野放しになっている現状が納得ができません。

桜ひとみ様

コメントありがとうございました。
著者のリスク、不利益をきちんと説明せず、販売のメリットばかりを強調する出版社がありますが、このような勧誘は非常に問題です。
悪質な勧誘をされた、悪質な出版社と契約をしてしまった、トラブルになったなどという方は、是非、消費者庁の「消費者情報ダイヤル」に情報提供していただきたいと思います。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1185959/32945295

この記事へのトラックバック一覧です: 自費出版の販売とリスク:

« シー・シェパードの衝突事故をめぐる真相 | トップページ | 「メディアへの出版情報のリリース」の実態 »

フォト

twitter

2017年3月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

最近のトラックバック

無料ブログはココログ