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2010年1月26日 (火)

増田美智子さんへのインタビュー(その3)

― 私は増田さんが、福田君が死刑にならないことを願い、また、裁判でも役立てることができると考えて本を書かれたと感じたのですが、どんな気持ちで本を執筆されたのでしょうか。

 ご指摘のとおり、私にとって本書の出版は、福田君の死刑回避を願った乾坤一擲の勝負でした。

 新聞報道などではどうしても、「罪を犯した少年を実名で暴いた」ということのみが本書の特徴とされてしまうのですが、私が本書を執筆した意図は少年犯罪の実名化を議論するためではありません。本書の特徴は、殺人犯という特徴しか報じられていなかった福田君を、日々悩み、迷い、笑う、ひとりの人間として描き、彼が紡ぎ出す言葉を正確に報じることで、福田君の人間性に迫ったことであると自負しています。ですから、本書について実名の是非ばかりが議論され、新聞の紙面上で本書のことを「実名本」などと表現される現状が、私は残念でなりません。

 しかし、私が福田君の死刑回避を願っているからと言って、福田君にとって不利益と思われることを隠すことはしないよう心がけていました。それをしてしまえば、本書に書いたことのすべての真偽が疑わしくなってしまいます。また、福田君にとって有利か不利かという観点から、報道する事実を仕分けすることは、ライターとしては決してしてはならないタブーだとも思っています。

 弁護団から受けた仕打ちを書いたのも、事実だからです。しかし、弁護団については、とくに読者の興味をひくことだとも思わなかったし、それほど重要なことでもないと感じたので、かなりはしょって書きました。弁護団からは、本書に書いたこと以外にも、数々の理不尽な仕打ちを受けています。

 本書は、福田君にとってはきわめて有利な情状を示すものだと思います。弁護団の方々には、死刑判決を受けて現在上告中の最高裁に情状証拠として提出するくらいの気概を持っていただきたかったです。

― 読者からはどんな反響がありましたか。実名で厳しい批判を寄せた読者はいたのですか。

 郵送やメールなどで、私のもとに直接届くご意見・ご感想は、「初めて福田君がどういう人間かわかった」とか、「報道をうのみにしていた自分が恥ずかしい」といった、好意的な感想がほとんどでした。

 新聞などでは厳しく批判され、落ち込むことの多い日々でしたが、こうした感想に何度励まされたかわかりません。

 批判的なご意見をいただいたことも、2度ありました。一方は、「少年法違反の本を出すのはやめなさい。恥を知りなさい」という匿名のメールで、もう一方は、ご自身の名前や住所がきちんと記された、被害者のご遺族の心情を考えるべきだという手紙でした。

― インターネット上では増田さん個人のことについて事実と異なることや誹謗中傷が飛び交っていると思いますが、看過できない虚偽事実があれば教えてください。

 見ると落ち込んでしまうので、2ちゃんねるなどに書かれていることは、あまり見ないようにしています。なので、どのような虚偽事実が書かれているのかは把握していません。すいません。

 ただ、インターネットでも新聞や雑誌の読者欄でも気になるのが、本書を読まないままに批判されている方が多いという点です。そのため、批判がまったくの的外れになっていることも多々あります。できれば、読んだうえでのご意見をうかがいたいと思います。

― 本では、弁護団がこれまで裁判で行なってきた立証や主張については触れていません。これについて、増田さん自身はどんな意見を持っていますか。

 弁護団が出している出版物や『年報・死刑廃止』シリーズなど、光市母子殺害事件について活字になっているものはほとんど目を通していますので、弁護団がどのような主張をしているのかも、それなりには把握しているつもりです。個人的には、福田君が犯した罪が本当に「強姦致死、殺人」であるのかはわからないと思っています。弁護団が主張するように傷害致死の可能性もあると思います。ただし、裁判資料を見ることもできない状況で、事件の真相を私が勝手に推測することはできません。ですから、できれば弁護団から話を聞き、「弁護側は事件の真相をこのように主張する」というふうに本書で触れたいと思っていました。しかし、弁護団は取材に応じてくれなかったため、やむを得ずあきらめました。

 弁護団の立証・主張に触れていないと感じられるかも知れませんが、それでも刊行物などからわかる範囲で弁護団の言いぶんを紹介したつもりなんです。従前の報道が公然と行っていたような「死刑回避のためのでっちあげ」といったやみくもな批判もしていません。 弁護団の主張の真偽はわかりませんし、軽々しく言えることでもありませんが、本書の出版に関する弁護団の一連の振る舞いを見ていると、『ドラえもん』や『魔界転生』が登場する「新供述」がどこまで福田君自身の言葉なのか、疑ってしまいます。すべてではなく、一部では弁護団による創作があったのかもしれないと思うようになりました。

― 今は、福田君には面会できないのですか。

 法曹界には、双方に代理人弁護士が就いた争いの当事者同士は、直接やり取りをしてはいけないという暗黙のルールがあるそうで、福田君とは面会できません。

 そのルールを知らずに、本書の出版当日に福田君に本の送付と合わせて手紙を送ってしまいました。数日後、足立弁護士から堀弁護士のもとにFAXが届き、厳に抗議されました。

 できることなら福田君に直接会い、いま私の心を占めているたくさんの疑問をぶつけてみたいと思っています。弁護団を名誉毀損で提訴した際、福田君も被告に入れたのは、そうすることで福田君に対する出張尋問が認められる可能性があるからです。裁判で直接福田君に質問ができるよう、強く要望していくつもりです。

― 最後に、皆さんに是非知ってもらいたいことなどありましたら、お願いします。

 本書を読まれていない方には、どういう手段でもかまわないので読んでいただきたいです。私に対する嫌悪感があってあえて本書を読まないという方もいらっしゃると思うのですが、購入するのがイヤだとおっしゃるのなら、お友達や図書館から借りても、書店での立ち読みでもいいです。ただ、仮処分や本訴を抱えているため、いまだに本書の販売を控えている書店もあるようです。本書が入手しにくい状態であるのは、著者としては非常に心苦しいです。本書を購入していただいた方には、どんどん人に貸していただきたいです。

 福田君のことを「荒唐無稽な新供述で遺族を愚弄した、狡猾な知能犯」と思われている方は多いと思います。報道だけで福田君の人間性を決めつけることなく、現実にいま生きていて、いろんなことを考えて日々を送っている福田君の姿を想像してみてください。できれば、想像するだけでなく、現実の福田君とコンタクトをとってみてほしいとも思います。いまは弁護団による監視が厳しいようですが、拘置所は本来、面会も文通も、自由にできるのですから。

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