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2010年1月25日 (月)

増田美智子さんへのインタビュー(その2)

― マスコミ報道では双方の主張などもごく一部しか伝えられません。福田君側の主張で納得のいかない点はいろいろあると思うのですが、いくつか教えてもらえますか。

 弁護側の主張はこちらが反論を出すたびに変わるので、挙げるときりがないのですが、もっとも許せないと思ったのは、取材目的であることを告げずにひとりの女性として福田君に近づいた、私が福田君を脅迫して取材に応じることを強いた、という主張です。弁護団は、これらを記者レクで何度も語り、何度も報道されています。しかし、そのどちらについても広島地裁決定は事実ではないとしています。

 私は福田君に送った最初の手紙のなかで、在京のフリーライターであることを告げています。福田君と初めての面会がかなう前には、福田君の弁護団メンバーである、本田兆司弁護士、足立修一弁護士と取材目的で福田君と面会したいと何度も交渉しています。弁護団は、明らかにウソとわかりながら、私に対する悪評を喧伝しているのです。

 人権問題に熱心に取り組んできた方々も多い弁護団が、女性記者に対して「女を武器に近づいた」といった女性蔑視の低俗な批判を展開させたのは意外なことでした。私も女ですから、痴漢に遭って「おまえにスキがあるからだ」などと批判されたこともあります。弁護団による私への批判も、これと同じく低レベルな男女差別に基づくものです。

― 本では弁護団が取材を拒否した経緯などが詳しく書かれています。また、寺澤さんは弁護士から「事前にゲラを見せないと仮処分をする」と脅しのようなことを言われたそうですね。こうしたことから、私は福田君からの仮処分や提訴は、福田君本人の意志というより弁護団の意志が大きいのではないかと感じているのですが、その点はどう感じていますか。

 仮処分や本訴が福田君の意思で行われたものか、もしくは、弁護団が福田君のためを思ってやっているものかどうかすら、非常に疑わしいと思っています。一連の騒動の発端は、「福田君は事前にゲラを見せてもらう約束をしていたと言っている。出版前にゲラを見せろ」という足立修一弁護士からの電話でした。

 私は、取材を通じて福田君とはきわめて良好な信頼関係を築いてきていましたが、その一方で、弁護団は私のことをずっと邪険に扱ってきていました。弁護団の許可を得ずに福田君と面会していた時点で、弁護団は私のことをけしからん存在だと思っていたようです。取材の過程で、何度か弁護団メンバーにも取材を依頼しましたが、徹底的に拒否されていました。だから、本書のなかで、私が弁護団についてどのように評しているのか、弁護団は非常に気になっていたと思います。要は、弁護団がどのように書かれているのか検閲したかったということでしょう。事前にゲラを見せてほしいというのは福田君ではなく弁護団の要望だと思っています。

 仮処分や本訴をしたことは、福田君にとっては不利益でしかありませんでした。前述のように、無反省をことさら印象づけることになってしまううえに、私が本書で書いた福田君の反省の言葉すら、虚偽であるかのような印象を与えてしまいます。福田君の代理人であるはずの弁護士が、なぜこのような暴挙に出るのか理解に苦しみます。

 仮処分では、第1回目の審尋の段階になっても福田君本人の陳述書が提出されませんでした。私や寺澤さんの代理人となってくれている堀敏明弁護士がその点を書面で質したところ、第2回目の審尋で、ワープロ打ちによる福田君の陳述書が裁判所に提出されました。しかし、拘置所にはワープロなどありません。そこで堀弁護士が作成経緯を尋ねると、次回からは福田君の手書きによる陳述書が提出されるようになりました。また、堀弁護士が準備書面で、「弁護団は人権侵害だと主張するが、法務局に人権救済の申し立てもしていない」と指摘すると、その翌日に広島法務局に人権救済の申し立てをするなど、弁護団はこちらから指摘されて初めて実行に移すことばかりでした。

 曲がりなりにも弁護団は法律の専門家なのですから、本書の出版が本当に人権侵害行為であると思っているのなら、上記のことは他人に指摘される前に自ら行っていてしかるべきです。人に言われるまでその発想がないというのは、つまり、弁護団も本書が人権を侵害するような書籍ではないとわかっているのだと思います。

― タイトルに名前を入れたことで「実名を売り物にしている」という批判がありますが、タイトルを決めた経緯やこうした批判についての見解を聞かせてください。

 正直なところ、私は「実名を売り物にしている」という批判の意味がよくわからないんです。本文で実名を書くのはOKだけど、タイトルにするのはけしからん、というのは筋が通らないし、タイトルに実名を入れたからと言って、どうしてそれが「売り物」になっちゃうんでしょうか。

 本書のタイトルは寺澤さんがつけてくれたものです。寺澤さんは「原稿を読んで、本書でいちばん言いたいのはこういうことではないかと思った」と言っていました。

 いいタイトルをつけてもらえて満足していますが、もともと私はそれほどタイトルにはこだわりはありません。本は内容で勝負するもので、タイトルはしょせんタイトルに過ぎません。「実名を売り物にしている」かどうかは、内容を読んだうえでそれぞれの読者が判断してくださればいいと思います。また、内容を読んでもらえれば、タイトルの意味も十分にわかってもらえるものと思っています。

― 増田さんの福田君に対する印象については本に書かれていますが、本を読んでいない方のために簡単に説明してもらえますか。

 私から見た福田君は、28歳の青年にしては非常に幼い性格をしていますが、彼なりに犯した罪と向き合い、反省を深めようと日々努力する純粋な青年でした。面会室での会話は、私が何か質問する以外で彼が自発的に語ることと言えば、どうすれば謝罪・反省を深められるか、ということばかりでした。

 福田君は、死刑という量刑には不服はないそうです。けれど、誤った報道などにより生じた誤解が、遺族をさらに苦しめている面があると思っているようで、その誤解を解くことで遺族の苦しみを少しでも和らげたいと語っていました。でも、彼が遺族に謝罪の意を伝えようとすると、どうしても「死刑回避のためのパフォーマンスだ」と見なされてしまう。福田君はそのこともよく理解しており、もし遺族との面会がかなうのなら、そのときは弁護団や裁判のことは抜きにして、真正面から遺族と向き合いたいとのことです。

 ただ、福田君には、他人との距離感をうまくはかれない面があるのも事実です。他人から嫌われるのを極端に恐れており、必要以上に迎合してしまう面もあるようです。

 今回の仮処分や本訴についても、福田君の迎合型の性格が悪い方向に作用してしまったように思います。冷静に考えれば、仮処分も本訴も、福田君にとっては死刑確定へとコマを進めてしまうような自殺行為であることは明らかなのですが、自らの死刑が確定するか否かよりも、目の前の弁護団のご機嫌を損ねてしまうことのほうが彼にとっては辛かったのかもしれません。

 弁護団の行為は、こうした福田君の性格を利用したものであり、許せません。

増田美智子さんへのインタビュー(その1

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