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2009年11月20日 (金)

種名を知るということ

 自然観察会などに参加すると、まず参加者が興味を持つのは動植物の種名です。「あの鳥は何ですか?」「この花の名前は?」と、まずは観察対象の動植物の名前を知ろうとします。これはとても自然なことでしょう。

 ところが、名前を知ることよりも観察をすることの方が大切だという主張をされる方もいるようです。以前参加した観察会でも、そのように言っていた方がいました。おそらく観察会に参加して種名だけメモして満足してしまう人が多いことに対し、「それでは自然のしくみや大切さは理解できませんよ」と言いたいのでしょう。動植物を観察してどんな生活をしているのかを知ったり、行動や形態を観察してそれがどんな意味を持っているのかなどということに興味を抱くことが自然の理解や保護につながるのであり、名前を知るだけではあまり意味がないと考えているのかもしれません。

 しかし、「種名を知ることは重要ではない」という主張には賛同しかねます。種名というのは自然や生物を知る上での基本中の基本です。種名は、生物を認識するためにはなくてはならないものなのです。たとえばある植物をAとかBなどと呼んでみても、そうした呼称はその場でのみ通じるのであって、その植物を見ていない人にとっては何のことをいっているのかわかりません。あとでその種について調べようとしても、種名がわからなければ図鑑などで種名調べからやらなければなりませんし、素人はそこで誤同定をすることにもなりかねません。やはり、観察会などできちんと種名を教えることは大切なのです。

 また、昆虫とかクモのような小さな動物を調べる場合は、採集して標本にすることも欠かせません。残酷だという方もいると思いますが、標本にして顕微鏡で観察しなければ同定できない場合も少なくないのです。また、標本にしておけば、あとで同定に疑問が生じたときも再検討することができます。過去の同定記録が正しいかどうか確認する必要が生じることがありますが、標本がなければどうにもなりません。

 私自身も、これまでに多くの誤同定の経験がありますが、ある程度の誤同定はやむを得ないものなのです。おそらく誤同定をしたことのないクモ研究者などはいないでしょう。生物の研究者、とりわけ分類に関わっている者にとって、「標本」はなくてはならない非常に大切なものです。

 もっとも「名前などわからなくても構わないし、見るだけで楽しい」とか、「殺したくない」という方たちに、名前を覚えなさいとか、標本にしなさいなどというつもりは毛頭ありません。自然の楽しみ方は人それぞれですから。でも、そのような方にも「種名を知ることの意味」や「標本の重要性」は知っていただきたいと思います。

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