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2009年11月10日 (火)

光市事件弁護団への疑問

 昨日、「福田君を殺して何になる」(増田美智子著、インシデンツ発行)の出版を巡って弁護団が広島地裁に申し立てていた出版差止めの仮処分が却下されたと報じられました。そのニュースを読んで目を疑ったのは、弁護団の「却下の理由は答えられない」というコメント。たとえ弁護団の意に反した判断であっても、理由を公表して見解を明らかにするべきではないでしょうか? 自分たちに都合の悪いことを隠そうとする姿勢はどこからくるのでしょうか?

 これまで私は光市事件の弁護団を支持してきました。しかし、仮処分請求と本訴、そして今回の却下でのコメントを読み、さらに以下の臨床心理士である長谷川博一氏のサイトを読み、弁護団の姿勢に大きな疑問を感じざるを得ません。

長谷川博一公式サイト 光市事件

 なお、長谷川博一氏のサイトは、私の「再度、光市事件を考える」という記事(チャンネル北国tvのブログ)への「やれやれ」氏のコメントで知ったことを断っておきます。ただし、「やれやれ」氏は複数のハンドルネームを使い分け、誹謗中傷発言をし、執拗な書き込みを繰り返していることから、マナー違反、嫌がらせと判断してコメントを削除しています。

 長谷川氏が上記のサイトで明らかにしている、弁護団による面会妨害、弁護人の介入による被告人の面会拒否、面会したことに対する弁護団から被告人への叱責が事実であれば、非常に由々しきことではないでしょうか。弁護団のこのような対応は、「福田君を殺して何になる」に書かれている増田美智子さんへの対応や、今枝弁護士の解任と重なります。刑事被告人は弁護人に反論しにくい立場にありますし、まして周りの人に合わせる傾向がある福田君は、弁護団から叱られたなら弁護団の言いなりになってしまうことは容易に想像できます。弁護人が福田君の意思を尊重せずに面会を拒絶したり、福田君を叱責することで弁護人の指示に従わせているのであれば、強い立場の者による人権侵害といえるのではないでしょうか?

 長谷川氏が指摘しているのはそれだけではありません。弁護団の主張の一部が作文であるという疑惑も指摘しています。もしこれが事実であるなら、弁護団は本当に真実を追究しようとしているのかという疑念すら生じます。

 私が「福田君を殺して何になる」を読んで非常に疑問を感じたのは、まさにこのような弁護団の体質です。

 先日発売された「創」12月号で、「光市実名本差止め論争」という特集が組まれ、著者の増田美智子さんやインシデンツの寺澤有さんへのインタビュー記事のほか、浅野健一さんと綿井健陽さんの記事が掲載されています。

 寺澤さんの発言によると、足立弁護士から寺澤さんにゲラを見せてほしいと電話がかかってきたのは9月28日とのこと。そして、10月4日に広島の足立弁護士の事務所に行ったときに初めて実名問題に触れ、少年法で実名報道は禁止されているから仮処分をかけたら明らかにあなたたちは負ける、ゲラを見せたほうがいいと言ったそうです(29ページ)。しかし、仮処分で負けたのは弁護団側。これは明らかに脅し行為ではないでしょうか。しかも、その過程で福田君の意思が見えてきません。

 浅野さんや綿井さんはこれまで弁護団と関わりもち弁護団を支持する立場ですし、今回の記事も全面的に弁護団の見解を支持する内容です。しかし、不思議なことにお二人とも本に書かれている弁護団の増田さんへの対応や、今枝弁護士の解任に関することについてはまったく触れていません。

 浅野さんは、本の内容に関する福田君の発言を紹介していますが(38ページ)、それは弁護団を通じて表明されたものです。ですから、福田君自身が本心を発した言葉なのかはどうかはわかりません。また、「訴状によると、増田氏がAさんに対し、事前に原稿内容を確認するとの約束や、私信の非公開の約束を反故にして出版を強行したのは、Aさんの『自己決定権』を侵害していると批判」(37ページ)としています。しかし、外部の者との面会を巡る被告人の自己決定権も、今枝弁護士の解任に関わる自己決定権も、弁護団自身によって侵害されているのではないのでしょうか? 浅野さんはそのことをどう考えているのでしょうか?

 綿井さんは、「取材者と取材対象者との関係性は?」というタイトルで、取材倫理面からの意見を書いています。取材対象者の立場や意向を大切にするべきだという綿井さんの主張はもっともだと思います。私も本を読み始めたときに、私信や写真の掲載許可をとっているのだろうか、という疑問はもちました。しかし一読者として、福田君を理解するためには手紙も写真も意味があるとも感じました。本書の内容は「インシデンツを訴えて何になる?」に書いたように、トータルに評価するなら福田君に有利な内容としか思えません。不利益と利益を天秤にかければ、提訴することが不思議に感じられます。

 取材対象者の立場や意見を尊重することはもちろん大事ですが、それを重視して福田君に事前にゲラ刷りを見せたなら、弁護団が介入して弁護団に都合の悪い部分の修正や削除を求めてくることは容易に推測がつきます。寺澤さんがゲラチェックを拒否したのは当然でしょう。綿井さんは、「知る権利」と「報道の自由」は国家や公権力に対して向けられるべきだと主張されます。しかし、相手が国家や権力と闘う刑事事件の弁護団なら、事前のゲラチェックを受け入れて従うべきなのでしょうか? それは読者の「知る権利」の侵害にはならないのでしょうか?

 私は、差し戻し控訴審での裁判所の死刑判決は不当であり、弁護団の主張はおおむね(今では全面的とは考えていません)正当だと考えています。しかし、だからといって弁護団に対して生じた疑問に口をつぐむべきだとも思いません。それは真実の解明に逆行する行為だと思えるからです。上告審が審理されている今だからこそ、大きな関心を引いたこの事件の真相の解明を多くの人が望んでいるのではないでしょうか。私には、弁護団を全面的に支持されている方は、弁護団を批判することは被告人の不利益につながり、批判すること自体がタブーであると思っているように感じられてなりません。しかし弁護団のマイナーな部分を黙認すべきなのでしょうか?

 光市事件は弁護団と検察官との闘いというより、弁護団と国家との闘いと言えるかもしれません。そうした政治的背景は理解できます。しかし、そこにこだわるあまりに、弁護の方向を見誤ってはいないでしょうか? 弁護団のやっていることは本当に福田君のためになっているのでしょうか? 残念ながら、今の私は弁護団の姿勢に疑問を抱かざるを得ないのです。

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