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2009年10月19日 (月)

十勝川水系河川整備計画への意見はどうなるか

 十勝川水系河川整備計画(原案)について、昨日、北海道開発局帯広開発建設部に以下のような意見書を送信しました。意見書の締め切りは今日までで、29日の公聴会の後に住民意見の反映と知事意見の聴取を経て策定されます。いちばん気になるのは、このような住民意見がどれだけ反映されるのかということです。単に「聞き置く」だけなら、形だけの意見募集・公聴会でしかありません。100ページもの資料を読んで意見を書いているのですから、しっかりと受け止めてもらいたいものです。提出した意見がどのように検討されて計画が策定されるのか、注目したいと思います。

十勝川水系河川整備計画(原案)に関する意見書

1.政権交代により治水対策の抜本的見直しが必要

 自民党から民主党への政権交代により、全国でダムの中止や見なおしが進められています。このことは、これまで自民党政権のもとで立てられていた治水計画が全面的に見直されることを意味します。今回提案された十勝川水系河川整備計画原案も、自民党政権下で計画・検討されてきたものです。政権交代によって治水のあり方自体が見なおしを求められている中で、従来の整備計画をそのまま踏襲することは現状にそぐわず不適切です。今回の整備計画原案はすぐに確定させるべきではなく、前原国土交通大臣の治水整備の方針に基づいて再度検討し、提案しなおすべきです。

2.根拠が不明のピーク流量

 今回の整備計画原案においては「戦後最大級の洪水」「150年に一度の降雨確率」に供える治水対策をするとのことです。十勝川水系では昭和56年に数百年に一度といわれる大雨が降りましたが、このときの帯広地点での流量は4952立方メートルでした。これだけの水が流下しても堤防から水が溢れることはありませんでした。今回の原案では、帯広地点での河道への分配流量は4300立方メートルとしています。過去に4952立方メートルの水が流れているのですから、4300立方メートルの流量はすでに確保できています。ところが、今回の原案では帯広地点でさらに掘削工事が必要だとしているのです。説明が破綻しています。

 今回の原案においては、堤防整備や河道掘削の前提となる流量の設定の根拠が書かれていません。たとえば基本高水流量の算出の基になっている150年に一度の確率とされる大雨の降雨量や時間当たりの降雨量などの数値が示されていません。帯広地点においては、基本高水のピーク流量を6800立方メートル、計画高水流量を6100立方メートルとしていますが、過去に4952立方メートルの水が流れた際も破堤や溢水は生じておらず、この数値はきわめて過大に算出されたものとしか考えられません。また、流下能力不足の解消を目的に平成19年に千代田新水路が完成し、現在は同様の目的のもとに相生中島地区の水路掘削工事が行われていますが、これらの水路掘削による治水効果についても何ら具体的な説明がなされていません。直線化によって早く水を流すという考え方は、下流部での洪水を誘発することにつながります。したがって、このような水路掘削が本当に有効であり必要なのかという疑念が持たれます。 治水対策の根拠となる具体的数値を提示して納得のできる説明をしない限り、この整備計画原案は認められません。

 また、帯広開発建設部のホームページでは、十勝川水系において「浸水想定区域はんらんシュミレーション」を公開しています。このシュミレーションでは堤防にそって破堤点を想定し、時間を追って浸水状況が示されるようになっています。このシュミレーションは、氾濫計算条件として150年に一回程度起こる大雨が降ったことにより十勝川が氾濫した場合に想定される浸水の状況を示したもので、指定の前提となる計画降雨は、十勝川流域の3日間総雨量214.8ミリとされています。今回の整備計画原案資料によると、3日間の流域平均雨量で最大の記録は、昭和56年8月の283.8ミリ(帯広地点)です。前述したように、これだけの降雨があっても堤防が決壊したり堤防を越えて水が溢れることはありませんでした。しかし、このシュミレーションでは昭和56年8月の大雨より少ない雨量での破堤を想定していることになります。このような想定は実態とは合致せず、非現実的です。しかもこの雨量で破堤を想定するということは、現在の堤防構造に欠陥があることを意味することになり、看過できません。このシュミレーションは、根拠のない破堤を想定して周辺住民に洪水による危険性を煽り、本整備計画原案に盛り込まれた根拠不明の整備を正当化するものといえます。

3.過去の被害とその原因からの対策

 洪水対策を考える上では、過去の被害と原因を究明し、どのようにして被害を防ぐかを検討する必要があります。たとえば、農地が冠水した場合と市街地が浸水した場合では危険性や被害額が異なり、治水対策も変える必要があります。22ページおよび23ページに洪水被害の概要が示されていますが、昭和56年8月の時点では堤防の整備が進んでいたために、被害は上流部の支流および内水氾濫が主であったとされています。近年の被害も内水被害が主です。そうであれば堤防の整備や河道掘削よりも内水氾濫の対策を重視すべきですが、内水被害を軽減させるための対策については80ページに4行の記述があるにすぎません。過去の被害ごとに原因を究明し、それを基にどの程度の治水対策が必要であるかを検討したうえで整備計画をたてることを求めます。

4.遊水地などによる治水の検討

 近年では、ダムや堤防によって水を封じ込める治水のあり方は適切ではないとして、遊水地などによる治水が行われるようになってきました。しかし、今回の整備計画ではそのような検討が具体的になされたかどうかが書かれていません。説明会でこの点について質問したところ、遊水地などによる治水についての検討もなされたが採用されなかったとの説明がありました。なぜ採用されなかったのか、検討内容について明らかにすることを求めます。

5.河畔林と流木の問題

 洪水時の水位の上昇や流木発生を防ぐために河畔林(河道内樹木)の管理が必要だとのことですが、河畔林は野生動植物の生息・生育地になっているほか、流速を低下させて下流域の洪水を軽減させる役割があります。また、上流からの流木を捕捉する役割もあります。したがって、安易に河畔林を伐採するべきではありません。流木による漁業被害を防ぐ必要があるとのことですが、どこから流木が発生しているかについて調査を行い、その結果を公表することを求めます。

6.絶滅危惧種の欠落

 動植物の生息・生育状況の記述で、十勝川下流部(45ページ)の確認種に、国が絶滅危惧種(絶滅危惧Ⅱ類)に指定しているイソコモリグモが欠落しています。このデータは「河川水辺の国勢調査」によるものとのことですが、生息している動植物を取り上げている以上、少なくとも絶滅危惧種については把握すべきです。

7.事業費の明示

 整備計画案の事業費については新聞報道がありましたが、計画案では費用のことは説明されていません。説明会で質問したところホームページに掲載されているとのことでしたが、どこのページに書かれているのかわかりませんでした。治水対策に莫大な税金が投入される以上、整備計画案に事業費の説明も盛り込むべきです。

8.説明会と意見募集

 今回の原案の縦覧は9月10日からでしたが、説明会は9月29日から10月8日にかけてであり、最後の説明会から意見募集の締め切りまでは10日間しかありませんでした。これでは十分な検討ができません。縦覧と同時にすみやかに説明会を開催することを望みます。

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