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2009年10月26日 (月)

ニルス・クリスティの言葉

 先日の記事「厳罰化で犯罪は減るのか?」でお知らせした、NHKの「未来への提言~犯罪学者ニルス・クリスティ~囚人にやさしい国からの報告~」を見ましたが、大変興味深い内容でしたので簡単に紹介します。

 世界の多くの国で厳罰化が進んでおり、日本では地下鉄サリン事件の頃より厳罰化が進んできました。とりわけアメリカでは1980年代から犯罪が急増し、凶悪事件をメディアがしきりに報道して厳罰化を煽ったといいます。そのきっかけになったのが被害者による訴えで、それによってスリーストライク法が成立しました。刑務所では受刑者が増加し、過剰収容で暴動になることもあります。刑務所内の環境は悪化し、受刑者を更生させることができなくなっているうえ、財政難に陥っているといいます。

 ノルウェーでは1960年代に厳罰化したところ犯罪が増加しました。そこで1970年代後半に見直しが行われ、受刑者の社会復帰を目的にした政策がとられるようになりました。ノルウェーでは、ひとつの島が刑務所になっているところがあり、そこでは受刑者が普通の家で自立した生活を営んでいます。外にも出られますし、休暇をとって実家に帰ることもできます。受刑者は助け合って暮らすことで社会のルールを身につけることができるといいます。

 犯罪学者のニルス・クリスティはこういいます。「受刑者は普通の人間であり、私たちは受刑者について知らなければならない。多くの国で刑務所自体が拷問の場となっており、これでは更生にはならない。受刑者の衣食住を良くしなければならない。犯罪者が苦しめば良い社会になるというのは違う。報復は苦しんできた人をさらに苦しめる」

 ノルウェーの刑事裁判では参審員制がとられています。裁判官1人と参審員2人の3人の合議で量刑まで決めるのですが、このようなやり方で市民は厳罰に慎重になるといいます。

 ニルス・クリスティが犯罪に興味を持つようになったのは、ナチスドイツがノルウェーに侵攻した際に、捕虜の殺害があったという事実を知ったことでした。人は特異な状況に置かれると、どんな残酷なこともするということを理解したのです。捕虜を殺さなかった人は捕虜と個人的な話をするなどして繋がりがあった人でした。そのようなことから、犯罪者について考えるようになったのです。彼は、犯罪者にモンスターはいないといいます。

 また、ノルウェーでは被害者と加害者と市民が顔を合わせて解決を図る「対立調停委員会」によって、解決する方法がとられるようになりました。ここで解決すれば裁判にはなりません。この対立調停委員会によって、9000件の事件のうち8000件は解決するそうです。罰を与えるのではなく解決を探る方策がとられているのです。犯罪を減らすには、自分たちの問題を自分たちで解決できるようにすることが大切だといいます。

 ニルス・クリスティが最後に語ったメッセージは「すべての人間は人間である」ということでした。

 以上が番組のおおよその内容です。アメリカの刑務所の映像がありましたが、目を覆いたくなるような悲惨な状況でした。日本でも受刑者の人権などないに等しい状況でしょう。厳罰を課して苦しめるやり方が、犯罪者を更生させるとはとても思えません。そのことがまさにノルウェーの寛容政策で実証されたといえます。ニルス・クリスティの言葉のひとつひとつが重みをもっています。「すべての人間は人間である」という彼の言葉には、他者を想うことの大切さが込められています。私たちはこの言葉をしっかり考え噛みしめる必要があります。ノルウェーの寛容政策は、多くの国が取り入れていくべきことだと実感しました。

 ひとつ気になったのは、日本の裁判員制度がノルウェーの参審員制をモデルにしているという説明でした。裁判員制度については「裁判員制度の真の狙い」にも書きましたが、問題だらけの制度です。そうした問題点にまったく触れないままノルウェーの参審員制をモデルにしていると説明したなら、視聴者はあたかもすぐれた制度であると勘違いしてしまう可能性があります。このあたりは、NHKの体制寄りの姿勢が透けてみえます。

 それにしても、このような番組をどうして総合テレビや教育放送などで放送しないのでしょうか?

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