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2009年10月21日 (水)

哀しみと豊かさ

 今まで読んだ本の中で、折にふれて何度も読み返したくなるような本はそれほど多くはありませんが、何度も手に取るような本にはきまって心の奥深くで喜びや哀しみ、あるいは感動といったものを共有できる何かが宿っています。そして読み返すたびに、心のどこかに置き忘れていた大切なものを見つけ出した気持ちになるものです。先日読了した藤原新也氏の新刊「コスモスの影にはいつも誰かが隠れている」(東京書籍)も、そんな本のひとつであり、他者の苦悩に目を向ける藤原さんの眼差しと優しさが漂っています。

 この本には、人と人の出会いと別れにまつわる物語が、あたかもその場面に居合わせているような精緻な描写で綴られているのですが、人の出会いや別れ、それによって揺れ動く心ほど、人の心に共感を呼び覚ますものはないのかも知れません。思えば、人と人との出会いや別れほど偶然に支配され、時としてかけがえのない温もりを与え、また時として深い哀しみや苦悩に裏打ちされているものもないでしょう。人は常に哀しみやつらさと共に生き、それによって生かされてもいるのだということが、ここに納められている14編の物語からしみじみと伝わってきます。

 本書に出てくる物語をここで紹介するほど野暮なこともないでしょう。是非、自分の目と心で読んでいただきたいと思います。

 ここでは「あとがき」の最後の一節を紹介しておきましょう。

 そしてあらためて読み返してみるとそこには、人間の一生はたくさんの哀しみや苦しみに彩られながらも、その哀しみや苦しみの彩りによってさえ人間は救われ癒されるのだという、私の生きることへの想いや信念がおのずと滲み出ているように思う。

 哀しみもまた豊かさなのである。

 なぜならそこにはみずからの心を犠牲にした他者への限りない想いが存在するからだ。

 そしてまたそれは人の中に必ずなくてはならぬ負の聖火だからだ。

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