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2009年10月23日 (金)

厳罰化で犯罪は減るのか?

 10月2日号(769号)の週刊金曜日に、森達也さんが「森達也が見た『裁判員裁判』」と題して非常に興味深い記事を書いています。この記事の中で最も私の関心をひいたのは、厳罰化とは正反対の政策をとるノルウェーのことです。

 ヨーロッパの多くの国で死刑が廃止されているのに対し、日本は「光市事件」に象徴されるように厳罰化の方向に向かっています。この国の死刑支持率の高さには驚かされるのですが、なぜ人はそれほどにまで死刑を望むのでしょうか? 厳罰化は犯罪の抑止や治安の向上につながっているのでしょうか?

 北欧は厳罰化とは反対の方向に向かっているのですが、ノルウェーの寛容政策において大きな役割を果たしたのが犯罪学者のニルス・クリスティです。ニルス・クリスティの主張を採用して寛容政策をとったノルウェーでは、殺人事件の件数は傷害致死を除いて年間で1件前後。治安は劇的に良くなっているそうです。森さんは、NHKの「未来への提言」の取材のために、この8月にノルウェーに行きました。そして法務省で刑務所の制度設計を担当する官僚に、ノルウェーで厳罰化が進まない理由を聞くと、以下のように答えたそうです。

「犯罪者のほとんどは、教育や愛情の不足、貧しい環境などが原因で犯罪を起こしている。ならば彼らに与えるべきは罰ではない。良好な環境と愛情、そして正しい教育だ。もちろんとても少数ではあるが、いわゆるサイコパス的な人はいる。でもそうであるならばなおのこと、彼らに苦痛を与えても意味はない。この場合はできるかぎりの治療をしなければならない」

 このことはなにもノルウェーに限ったことではありません。日本の犯罪を見ても同じです。また、ノルウェーでは再犯率が低いのですが、その理由は懲役を終えた囚人が住まいと仕事を保障されているからだといいます。そして、ニルス・クリスティは以下のように語ったそうです。

「私は今まで多くの犯罪者に会ってきた。でもモンスターになど、一人も会ったことがない。どこかにいるのかな。君がもし知っているのなら是非教えてほしい」

 お二人の言葉は、厳罰化を求める多くの日本人がいまいちど見つめなおしてみるべきことではないでしょうか。光市事件の関係者を取材して書かれた「福田君を殺して何になる」という本で、著者の増田美智子さんは被告人の素顔に迫ることでマスコミがつくりだしたモンスターのイメージを払拭しようとし、「死刑になることで何か1つでも社会にとって得るものがあるのか」と問いかけましたが、ニルス・クリスティの言葉にこの回答を見出すことができそうです。

 「未来への提言~犯罪学者ニルス・クリスティ~囚人にやさしい国からの報告~」はBSハイビジョンではすでに放送済みですが、BS1で25日(日)の午後8時10分から9時にかけて短縮版が放送されます。是非、多くの人に見ていただきたいと思います。

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コメント

日本人は「見せしめ」が好結果につながると考える人が割合と多いように感じます。night

はなゆー様

日本では、犯罪を起こした原因をきちんと解明したうえで犯罪を減らそうという努力がなされていませんね。「目には目を」の論理は敵討ちでしかなく、負の連鎖でしかないように思います。

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