コンクリートで固める治水事業への疑問
北海道開発局帯広開発建設部が開いた治水事業説明会では、資料も配布せずにスライドをつかって通り一遍の説明をしただけでした( 「開発建設部の治水説明会をめぐる怪」参照)。
国の管理する河川の治水計画は北海道開発局が立てますが、北海道が管理する河川では道の出先機関である土木現業所が治水計画を立てます。帯広土木現業所が6月に開催した治水事業説明会では、「平成21年度治水事業概要書」という72ページの資料を配布しました。このような資料を配布する姿勢は、開発局よりはるかに評価できます。
ところで、土木現業所が配布した資料をみると、十勝地方だけでもかなりの数の改修工事や砂防工事が計画されていることがわかります。地図に示された事業の数だけでも37箇所あります。近年、氾濫被害を受けた河川の改修工事のほか、地域の街づくりと連携した整備、子どもたちの自然体験の場となる水辺づくり、魚道など。果たして、そのすべてが本当に必要な工事なのでしょうか?
この写真は、芽室川です。護岸や河床のコンクリートブロックの形や色から、幾度にもわたって河川改修が行われた様子が伺えます。こうやって増水などのたびに川は直線化され、河畔林は伐られてどんどんコンクリートで固められてきたのです。この原因はどこにあったのでしょうか?
この一帯の河川はかつて深い河畔林に覆われていたそうですが、上流にダムが造られるようになってから河床低下が進み、川の様子がすっかり変わってしまったといいます。治山ダムなどが造られると砂礫などが下流に運ばれなくなり河床低下を起こします。柔らかい火山灰地では、河床低下が著しくなります。河床低下によって古い護岸が河床に落下すると新たな護岸工事が必要になったり、河床低下を防ぐために床固工を施したり・・・と悪循環に陥り、次々と工事が必要になってしまうのです。こういう工事を繰り返すことで、河川はどんどんコンクリート化されてしまいますが、これが河川改修の実態でしょう。
子どもたちや市民が水とふれあう場を整備するとの名目で、護岸の部分に階段を造る工事などもありますが、このような施設はほとんど利用されていないといってもいいでしょう。工事が必要になった原因を考え、その反省のもとに、河畔林の茂る自然の河川をいかに残すかという視点にたった河川管理が求められます。
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世の中にはこんなあきれた町があります。
投稿: v | 2009年9月24日 (木) 20時05分