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2009年7月29日 (水)

北海道開発局の矛盾

 「河畔林は障害物か?」で然別川の河畔林伐採について書きましたが、伐採を行なった国土交通省北海道開発局帯広開発建設部は、治水を目的として河畔林伐採をしたとのことです。つまり、河畔林を伐採することで洪水時の流速を速め、少しでも早く下流に水を流すことが治水上必要だという考えです。

 2000年7月14日の中日新聞に「植物ある川洪水防ぐ 流れに抵抗 貯水能力」というタイトルの記事が掲載されました。岐阜県にある建設省自然共生センターが、川岸や川底に植物が生えている夏・秋と、それらが枯れている冬・春で、植生と水位の関係を比較する実験をしたのです。長さ800メートルの実験用河川に毎秒2トンの水を20分間流して洪水を起こし、最下流から60メートル地点で水位を計測しました。

 その結果、洪水が計測地点に達するまでの時間は、植生のない冬と春が18分だったのに対し、草の茂った夏は32分、秋は25分かかったそうです。また水位は、平常時より冬が44センチ、春が49センチ上昇したのに対し、夏は29センチ、秋は25センチしか上昇しなかったそうです。植物があるとその抵抗で水はゆっくりと流れ、下流での水位上昇も抑えられることが、10年ほど前に建設省(現国土交通省)の研究機関の行なった実験で検証されていたのです。この実験で流速や水位に影響を与えた植生は、川岸に生えているタデや川底に生えているヤナギモなどですから、河畔林による効果はさらに大きくなるのではないでしょうか。

 であれば、河畔林を伐採して水を速く流すことが下流部の治水対策として有効ということにはなりません。むしろ逆効果です。然別川の河畔林を伐ったなら、下流の帯広市などには洪水が早く到達して水位を上昇させることにつながるでしょう。北海道開発局は国の研究機関が10年も前に行なった実験結果をないがしろにし、実験結果と矛盾する対策をとっているといえるでしょう。この実験結果を現場の帯広開発建設部が知らないのであれば、何のために研究機関を持っているのかということになります。

 「『川の樹林化』って何?」に書いたように、中村太士氏は河畔林があると洪水が流れづらくなり氾濫する危険性が増すと指摘していますが、中村氏の認識にも問題がありそうです。

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