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2009年6月25日 (木)

肱川に見る日本のダム問題

 先日「肱川 清流の復活を求めて」(有友正本編著、アットワークス)を読みました。

 欧米ではとっくにダムの撤去が行なわれているというのに、日本は今におよんでダムをつくり続けています。日本のダムをはじめとした河川の土木工事の裏側には利権構造が横たわっているわけですが、愛媛県の肱川をめぐる動きには日本のダム問題が凝縮されているといっても過言ではないでしょう。

 かつては清流を誇っていた肱川は、洪水にたびたび見舞われる「暴れ川」です。昭和21年から平成17年までの60年間に32回もの洪水を記録しているというのですから、大雨ですぐに氾濫する川といえるでしょう。ですからもともと洪水で浸水するような場所には建物などはなく、浸水する地区では高いところに建物をたてていたのです。

 昭和36年に肱川本流の鹿野川ダムが稼動しても洪水は減らず、昭和57年に鹿野川ダムの上流に野村ダムが稼動しても、治水の役には立たなかったそうです。ところが、しばしば洪水に見舞われる東大洲地区が平成5年に「八幡浜・大洲地方拠点都市地域」に指定されました。こうして、かつては「遊水地」の役割を果たしていたところに建物を建てるようになりました。しかも、堤防を未整備のまま開発を進めたのですから、平成7年には激甚水害と認定される水害に見舞われました。水害になるのは当然です。

 一方、肘川の支流の河辺川では、南予水源開発計画という利水(分水)計画がありました。その後、当初の利水はなくなったにも関わらず、治水へと目的を変えて造られようとしているのが山鳥坂ダムです。この国ではたとえ当初の目的が消失しても、目的を変更して何としてでも事業を押し通そうとするというのが常です。つまり、すべてにおいて「はじめにダムありき」で進められるのです。しかし、山鳥坂ダムの治水効果はとても小さいものであり、建設には大きな疑問が投げかけられています。肱川は、すでに二つのダムによって水質が悪化してしまったのに、さらにあまり効果の期待できないダム建設を推し進めようというわけです。

 流域委員会から住民を締め出して御用学者と自治体の長で構成し、絶滅危惧種や希少種が生息していても問題ないと無視し、治水計画を立てる際の基本高水流量の数値も過大に算出するというやり方は、この国のお決まりです(基本高水流量については「開発局の過大な基本高水流量」参照)。アイヌ民族の反対を押し切ってつくられ水害や漁業被害を招いた沙流川の二風谷ダムや、沙流川の支流に造られようとしている平取ダム、天塩川水系のサンルダム、その他諸々のダム計画・・・。日本のダムをめぐる問題はどこも同じといえましょう。本書からは、ダムによる弊害を真摯に受け止めずに建設に固執する国の姿と、それに抵抗する地域の人達の熱い闘いが伝わってきます。

 詳しく知りたい方は、是非、本をお読みいただけたらと思います。制作を手がけたロシナンテ社は、環境問題をはじめとした住民・市民運動を発信している会社です。以前「西宮冷蔵の闘い」という記事で紹介した「正義は我にあり 西宮冷蔵・水谷洋一の闘い」もロシナンテ社の制作した本です。

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